55『肉質はジューシー、羽根はパリパリ。 栄養満点。』
「うわあ・・ココが魔法の世界か!」
空気中に、魔力が充満してるぞ。
そりゃ颯太婆ちゃんの回りに居りゃあ、地球でも濃密な魔力が漂っているけどさ。
やっぱ感動するぜ!
「妖精とか居るのかしら・・」
「居るよ。 アイツ等、人間の肉が大好物だから、直ぐ寄ってくるんじゃないかなあ?」
「・・・・」
なんか、チホっていう姉ちゃんが変な顔してる。
魔法使いじゃ無いし、弱いんだろうし・・怖いのかな。
「大丈夫だぜ、姉ちゃん。 妖精なんてオレが全部やっつけてやるよ!」
「あ、ありがと・・」
「ふっふっふーっ、甘々だね少年!
チホちゃんを守るのはヨーなのだー!」
魔法使いの方の姉ちゃん。
さっきの、奈々さんの話だと颯太婆ちゃんと同レベルらしいけど・・。
「オレだって、もうすぐ一人で街破級を倒せるんだ!」
「ヨーは、もう一人で街破級を群で倒せますー!
チホちゃん、妖精なんかバンバン倒しちゃうよー!
さーち & ですとろぉぉぉいっ!」
「あ、ありがと・・」
心配症なのかな、チホ姉ちゃんの顔色は戻んなかったぜ。
ココ、異世界側の大扉が有る【 ジート砦 】も、日本側みたいに戦闘が有ったみたいだな。
魔物の死体は片付けられているけど・・血の匂いは残ってる。
つっても、チホ姉ちゃんは気付いて無いみたいだけどな。
「ヨーさんやチホさんは、ご飯食べた?」
「い、いいえ。 まだ───です」
颯太婆ちゃんに対して、ちょい挙動不審っぽいチホ姉ちゃん。
パッと見、子供だけどメチャ強い ( らしい ) 颯太婆ちゃんを警戒してんのかなあ。
こんな優しいのに。
「颯太婆ちゃんは凄い良い人だから」
「・・婆ちゃん?」
「あ、そ・・その、颯太ちゃん!」
「───んぅっ!?」
・・??
オレが取敢ず誤魔化しで、『 颯太ちゃん 』 って言ったら・・颯太婆ちゃんが、顔を真っ赤にした。
・・孫からだからって、なれなれ過ぎたかな?
怒っちゃったかなあ?
≪あははぁ・・♡ 理太くん、グッジョブ♡≫
「?」
≪大丈夫、颯太は理太を怒ってなどいないよ≫
「そ、そうか?」
よく分かんないけど颯太婆ちゃんも、不機嫌じゃあ無いみたいだ。
良かったぜ。
その後は、【ジート砦】で晩ゴハン。
さっき言ってた妖精が襲ってきたから返り討ち。
丸焼きにして食った。
けっこう美味かったのに、チホ姉ちゃんは日本から持ってきたインスタント食品しか食べなかったよ。
◆◆◆
「颯太・・ちゃん」
【ジート砦】の宿泊施設にて寝泊まり。
チホ姉ちゃんとヨー姉ちゃんは寝てる。
颯太婆ちゃんは見張り。
「怒ってないか?」
「あはは・・怒ってないよ。
ちょっとビックリしただけ。
源太ちゃんも同じ理由で、ちゃん呼びしてたし・・ソレに───」
「ソレに?」
「───ううん、ナイショ。
コレは僕と、理太郎爺ちゃんとだけの秘密のお話だから」
「ちぇー」
「だから、あの二人の前では 『 ちゃん 』 で良いよ」
「わかったぜ!」
颯太婆ちゃん・・なんか───懐かしそうな、悲しそうな顔だった。
・・守りたいな。
「そういえば、幹太姉ちゃんは【ジート砦】に居ねーな・・。
ココで待ち合わせなんだろ?」
「そうなんだけどねぇ・・。
魔力パスは───ちょっと離れた位置に居るよ。
幹太姉ちゃん、直ぐムチャするからねぇ・・また魔物と戦ってたのかなあ?」
「颯太ちゃんの方がもっと凄い魔物と戦ってたんだ!
注意しよーぜ!?」
「あはは、なら幹太姉ちゃんはもっと凄い魔物と戦ってたかもね。
・・さ、明日は朝ゴハンを食べたらすぐ出発だよ」
「おうっ!」
絶対に、颯太婆ちゃん・・颯太ちゃんの方が強いのになー。




