54『犠牲者ゲッツ!』
「颯太ぁ・・あんた、流石にムチャさせ過ぎよ?
理太・・如何にもアンタ等一族って子だけど、まだ9歳なんだから」
「大丈夫、だいじょーぶ♡
ミリ単位でギリギリを見極めてたんだから」
「だ・・・・だい・・じ・・ょーぶ、だァァァ・・・・」
「コレ───彩佳なら『燃えつきたぜ・・真っ白にな』ってボケる所よ・・」
颯太婆ちゃんの訓練がやっと終わった・・。
街破級の八割くらいの強さ魔物を退治しまくったんだ。
そりゃ最初は片腕片脚を使えなくされた奴だったけど・・最後はフルの奴を退治できたぜ?
しかもヘトヘトの状態で。
コレで幹太姉ちゃんの子供たちってのよか強くなったかな。
今は【人茸の巫女】彩佳姉ちゃんの妹で、日本の【人茸】を取り纏めている奈々さんから・・なんか食わされてる。
キノコ・・のハズだよな?
───チョコレート味だけど。
美味しいけど。
キノコ苦手なオレでも食えるけど。
食った瞬間から体力が回復し始めて、ちょい怖いんだけど。
「『旧世代』はアタシにとっても邪魔でしかなかったし・・【人土】や自衛隊には全面協力した訳だけど」
「【人茸】って戦闘員が居ないんでしょ?」
「殆んどが、罪人に【人茸化キノコ】を寄生させて産まれるしね。
・・今回、逮捕した連中みたいに。
情報提供させた連中みたいに、ね」
「うわぁ・・」
ネグ・・レクト? とかいう育てられ方した彩佳姉ちゃんは、自分は嫌われても回りを善くするって付き合いかたらしい。
( ソレは秋原家の人間に、だから出来るらしいけど。)
奈々さんは、自分を善く見せてる裏で悪いことを───うににににににににににっ!?
なんか、考えてる事が読まれた。
ゴメンナサイ。
「はあ、旦那さんや幹太たちが異世界に居るから仕方無いけど・・何時もアッチに居るビタちゃんに、合いに行く準備中だったのに~」
「奈々姉ちゃんもアッチに行かないの?」
「・・・・ええ。
誰が幹太と同じ所に住むもんですか」
颯太婆ちゃんのヤレヤレって顔。
・・なんだろ?
奈々さんと幹太姉ちゃん、仲悪いのか?
ソレにしちゃあ、悪意は見えないけど。
≪二人は幼馴染みだからねぇ・・色々あったみたいよぉ?≫
「ふーん・・」
≪理太も大人になったら分かるさ≫
「うーん・・」
≪手っ取り早く、大人になる方法も有るんだけど≫
「何なにっ!?」
≪それはね・・≫
聖者と覇者が、続きを言う前に・・なんか颯太婆ちゃんから怒気が来て、二人とも黙った。
なんだか分かんないけど・・はぁ~あ。
早く大人に成りてーなあ。
そしたら今度こそ颯太婆ちゃんの足手まといにはならねーんだ!
「颯太、アンタが出ないから崖下さんからの伝言よ。
「 こっちはオールOK、気にせずに。
自分と自分の嫁からも、御姉さんによろしく 」 ってさ」
「・・うん」
「3年ぶりだっけ?」
「幹太姉ちゃんが目覚めた時に・・一回。
後は、御互いの世界の、喫緊の魔物とか問題を解決してから・・って話だったから。
・・幹太姉ちゃん、すぐムチャするし」
「アンタもでしょ・・って、も一つ崖下さんから伝言あったわ」
「なあに───」
『颯太ちゃん待って待ってー!』
颯太婆ちゃんと奈々さんが、しんみり話してると・・なんか、ノー天気な声。
高校生ぐらいの姉ちゃんたち。
「うぇいと、うぇいと、うぇいとー!
君たちは完全に、ほーいされている!
大人しくしたまえー!」
「げ」
「崖下さんが、アレも異世界に行きたがっているみたいだからって」
真ん中で 「 ばきゅん、ばきゅーん 」 ってやってる姉ちゃんは魔法使いだな。
その隣で止めてる姉ちゃんは、普通の人みたいだ。
「ヨーさん・・」
「ま、頑張ってね」
「ヨーさん・・今は魔力が戻ってるんでしょ?
ソレに異世界・・良いの?」
「ヴォイドは完全に封印してるし。
それに・・ヨーは 『 ヨー 』 よ。
他の誰でも無いわ」
「・・・・」
「・・颯太婆ちゃん?」
「───・・んぅ。 ま、いっか・・幹太姉ちゃんとの再会の邪魔はしないでしょ」
「あのこの場合、ソレが空回りした挙げ句、裏目に出そうだけどね」
「仕方が無いよ。
僕も魔王討伐隊の一人なんだから」
颯太婆ちゃんの遠い目。
こんなん初めて見た。
「颯太ちゃん、お久しブリーフ!」
「ヨー! ご、御免なさい。
貴女が、異世界への案内人ですか?」
「いいえ、ヨーが挨拶した小っこい方よ」
「えっ?」
「ちなみに彼女、ヨーと同レベル以上の使い手だから」
「ええっ!?」
魔法使いの方の姉ちゃんは、颯太婆ちゃんや奈々さんの知り合いっぽいけど・・普通の方の姉ちゃんは初めて会う人っぽい。
颯太婆ちゃんを唯の子供扱いしてる。
92歳の颯太婆ちゃんだけど、今はオレと同じ9歳の姿だもんな。
「チホ・・先ずは幼馴染み同士、親友同士でゆっくりしてって。
私達は、貴女たちの中で完全決着を着けたあと───土下座でも何でもするから」
「そんなの・・いいえ、分かったわ」
普通の姉ちゃんの後ろに居た、同じ制服の姉ちゃんたちと何か会話。
ケンカじゃ無いっぽいけど、ただならぬフンイキって奴だな。
姉ちゃんたちの会話を待って、颯太婆ちゃんが号令をかける。
「───じゃ、行きますか」
颯太婆ちゃんを戦闘に、地球と異世界を繋ぐ巨大扉魔法をくぐる。
・・楽しみだな。




