50『「「やったか」って言っちゃ駄目」という言葉こそ、お約束です。』
───ガキンっ!!!
「音が変わった!」
「バリア的なモノを貫通したのね!」
「やったか!?」
僕が思わず興奮して、そうクチにすると・・『三者を越えし者』さんとリリちゃんとクジャラさんの渋い顔。
『ソレは禁句』
「お約束よ、ゼレバ君」
「女王も、何故かやたら気にしてたなあ・・しかも」
な、なんでココまで言われるんだ?
そんな変なこと言ってない筈だけど・・。
・・と、思っていたら───急な地響き。
「フシギにブキミに当たるんだよな。
オレは密かに日本人の呪いじゃないかと疑っているんだ・・」
「違いますよー! 言っちゃイケない言葉って有るんですー!」
『言霊』
日本人と、日本の漫画好きの、謎の主張。
・・僕のせい?
地響きの正体はスグ分かった。
「・・歪みが!?
みんな、下がって!」
「くっ!?」
リリちゃんの叫び。
歪みが広がったらしい。
魔法使いでは無い僕は・・魔力が、ヴォイドと反応して消滅する瞬間が見えない。
タイミングも範囲も。
「源太どの、【巫女】様っ!?」
「儂等は大丈夫じゃ!」
「掠りましたけどね・・」
『三者を越えし者』さんやヒューさん、他の魔力が見える【人狼】は避けたみたいだけど・・一番機械に近かったお二人は完全には避けきれなかったらしい。
大したことは無いそうだけど・・魔力を目で見えるチート持ちですら、歪みの完全回避は無理ってことだ。
「機械から放出される歪みが大きくなったのかい、リリちゃん?」
「いいえ、そうは見えなかったわ。
もっと回り・・機械外から歪みが広がった気が───」
「機械外・・」
僕達は、その答えに気付きかけている。
・・けど、危険だからって触れていない。
「やっぱり、あの巨大タンポポなんじゃ・・?」
「むぅ・・だがな。
リリちゃん、あのタンポポからヴォイドが吹き出した訳じゃないんだろ?」
「ええ」
「切るなり引っこ抜くなり・・異常なタンポポなら、異常は起こりうる。
猛毒や強酸を撒き散らす、とかな」
「『三者を越えし者』さん達なら・・」
「万一ヴォイドが吹き出したら、魔女には致命的だ」
結局・・コレに着き、巨大タンポポを未だにほったらかしている
「───獣の匂い・・魔物だ!」
「ちぃ」
【人狼】の一人が叫ぶ・・と同時に【人狼】達が円陣を組む。
表情から察するに、後続を警戒・・ではなく、一斉にこの場を取り囲む大群らしいな。
機械の・・バリア? だっけ? を、貫通した事と───ヴォイド含めて無関係とは考えられないよね。
「・・・・ヒューさん!」
「ゼレバ君!?」
僕は・・機械ともみんなとも離れた位置に咲く、一株のタンポポへと駆け寄る。
「ナニね?」
「僕とタンポポを障壁で包んで下さい」
「・・いいね? あたしゃホントにやるのね?」
「ゼレバ! ・・ヒューさん!?」
「ゼレバがやるっつったんなら、覚悟を決めるね!」
ヒューさんが、僕とタンポポの回りに防壁を張る。
先輩が駆け寄る。
でも先輩はパワータイプで、スピードタイプの僕には追い付けない。
リリちゃんが悲鳴をあげる。
・・御免ね。
さっきチホさんとのやり取りで、僕は自分の気持ちに気付いたから。
───何としても、守るから。
「見た目、タンポポからヴォイドは出てない・・。
でももし、タンポポからヴォイドが出ているとしたら───地下の根っこ!」
巨大タンポポの根っこなら、相当深く長いはず。
地面からヴォイドが出てたら、勘違いするかもしれない。
「───根っこを切る!
・・リリちゃん・・僕は・・・・」




