51『様々な視点・特別編⑤ 止めは『スーパー・ペリオラ・シューティング・アタック』。』
「よくココが分かったな・・ココこそが盗賊団の大本命。
ゆえにココは念入りに隠してあったのに・・」
「直前になって見つかったらしいぞ。
ペリオラ傭兵団の副団長っちゅうヤツに頼まれたんじゃ」
「そうか・・流石『対、街破級』。
情報収集力も半端じゃないな」
言って、剣を抜くザラクス殿。
儂めがけ、剣を投げつけ───
その剣を掴み捕る。
・・初めて会った時のように。
「今のゲンタなら巨大蛇でも素手でなんとか出来るんだろうが・・一応保険として持っとけ」
◆◆◆
洞窟の奥へ並び、走る。
さっきの盗賊共が最後の戦闘員だったんか、全くヒト気も無いわい。
「本命っちゅう割にゃあ何も居らんの」
「最奥に集中しているからな」
この盗賊団がヤりよる事、ソレは魔物を子供 ( 卵 ) から育てて親に成ろうとしよるらしいのう。
じゃが所詮、人間と魔物。
なつく訳もなく飼い犬に手を噛まれよるんじゃな。
「・・だが、奴等はトンでもない卵を手に入れやがった・・!
『街破級【ニーズホッグ】』!」
『街破級』・・ただの一歩が家を潰す、なんて言われとるの。
・・ゴ○ラみたいなんじゃろか?
「この奥に【にいずほっぐ】とやらが居るんか?」
「ココに居るのは本体ではなく・・いや、逆にコッチが本体なのか?
・・まあ兎に角、【ニーズホッグ】の身体から核が超長距離伸びて、地下を通じてココの地底湖に沈んでいるらしい」
「飲み水か知らんが、核を壊すか湖から出せば・・」
「伝承では、ソレで何時かは枯死するらしい。
いくらペリオラ傭兵団が『対、街破級』とはいえ、1800人で勝てる相手じゃない。
盗賊共が追い詰められて【ニーズホッグ】の身体の方を解放する前に、なんとかしないと!」
◆◆◆
最奥に・・ついた・・が───
・・なんじゃコレは・・!!?
「ぐはっ・・な、何故ココが・・!?」
「人より特別な鼻なんでな」
「ガキ共が今すぐ死んでも良・・ギャ!」
巨大地底湖の周り・・至る所に、無数の子供が倒れておる!?
しかも大した怪我では無いものの・・血を流しよる。
「な、なんじゃ・・この子供達は!?」
「・・こ、これは・・!
伝承でこうゆう儀式を聞いた事がある。
子供達をよく見ろ!」
よう見・・うん!?
まさか、この人数全員が魔法使いか・・!?
「昔、とある宗教団体が300人の魔法使いを生贄に、願望を叶える儀式をおこなったらしい。
ココでは・・地底湖の水を【ニーズホッグ】好みに変えてるようだな・・!」
「こ、ここの盗賊共は・・【にいずほっぐ】の為に・・子供を拐って犠牲にしよるんか・・!?」
「もう盗賊共は居ないハズだ!
急いで子供達を助け───」
・・その時、湖の中央から大量の泡が出てきよった。
「ザラクス殿っ!」
「・・ゲンタっ、下がれェ!!」
水噴射!?
なんちゅう威力じゃ!
テレビで暴徒鎮圧に消防車から放水して人間が吹っ飛ぶっちゅうんを見たが・・桁違いじゃのう。
『村破級』程度なら一撃じゃな。
「核だ!
子供達を奪われるのが気に入らないのか・・飲んでた大量の水を一気に吹きやがった!
・・来るぞ!」
大轟音とともに湖から出てきよったのは・・直径2mは有ろう管、そしてその先にあるは直径10m以上の核。
あえて言えば・・球体に無数のフジツボがへばりついとる感じかの?
・・その真中、一際デカいフジツボが儂等に向く。
「顔が無いのに怒っとるっちゅうんがよう分かるわな」
「全くだ」
子供達をどうするかの。
「───ゲンタ、子供達を連れて逃げろ。
核は・・俺が引き付ける」
「ザラクス殿一人でどうするんじゃ!?」
「大丈夫だ!
奥の・・手・て・・・TE、TETEてTEッ!!」
ザラクス殿が突然踞ったかと思えば・・その体が膨れ上がり、破れた服からは毛むくじゃらの姿が見えよった・・!?
明らかに人間のモノではないの・・!
「その姿は・・!?」
変身を完了したらしいザラクス殿。
その姿は、狼に人間の骨格を無理矢理当て嵌めたかのようじゃ・・。
「事情は後だ・・行けっ!
イザという時、子供達を守れる手段のある御前の方が適任だっ!!」
「くっ・・分かった、済まん!」
子供達は怪我で朦朧としとる・・が、立って歩けん程じゃないわな。
途中・・魔物の死骸の中を歩く子供達に、急に怪我が治った子供が居った。
どうも草の魔物の頭が薬草っぽかったんで、怪我した子供達に使う。
全員が完治したんで、急ぎ洞窟を出た。
「ザラクス殿・・。
───さ、みな行くぞい」
「「「・・は、はい」」」
◆◆◆
夜。
じゃが、もうすぐ街が見える。
「やっとじゃ。
安心せよ、アソコまで行けば───」
『ズガガガガガガッ!!!』
「なっ・・!?」
「きゃあっ!?」
「わぁーん!」
地震・・いや、衝撃波か?
洞窟の方から来たの・・!
『おぉーいっ、誰か居るのかぁー!?』
街からの声。
衝撃波で、松明の灯りに気づいたんかの?
「───此処からは御主等だけで行けるな?
ゆけ。
行って助けを乞うが良い」
「・・貴女は?」
「・・・・。
全てを終わらせてやるわい」
洞窟へ引きかえす。
洞窟に近づく程に衝撃波の被害が酷いわい。
この爆心地は───
いや、考えても詮ないの。
ザラクス殿を信じて進む。
◆◆◆
「ザラクス殿っ!」
「よ、よう・・子供達は無事か・・?」
ソコには・・大怪我を負い、人間の姿に戻っとった、ザラクス殿が居った。
───誰がどう見てもわかる・・ザラクス殿は・・もう───
子供達に使こうた薬草は・・駄目じゃ、もはや魔力が残っておらん・・。
「ああ、ザラクス殿のお陰じゃよ!
・・しかし何故こうまでする・・!?」
「───がはっ・・。
お、俺は・・【レッサーハウンド】という、先祖が女を犯すことにしか興味を持たん魔物を産み出したせいで、忌み嫌われている【人狼】という一族でな・・」
「その一族の償いとか、なんかか?」
「一族は、な。
俺は違う。
俺は一族の裏切り者だ」
笑い顔か、苦慮の顔か・・。
よう分からん表情じゃ。
「俺が馬鹿だったのさ。
一族の掟に叛いて人間の女に惚れちまって、子供まで作っちまって・・」
「良え女に惚れるんの何処が馬鹿なんじゃ!」
「結局、俺の正体がバレて・・男尊女卑のこの世、妻が心労で病む程追い詰められちまった」
「ソレは・・この世が悪いんじゃよ・・」
「子供は、誰も・・俺達を知らん【銀星王国】の孤児院の前に・・捨ててきた。
【人狼】のチカラは封印した・・から、たぶん中途半端な魔法使いとして生きている・・だろう」
「・・そうか」
だんだん・・呼吸が浅く───
「【ニーズ・・ホッ・・グ】・・・身体・・国境の村近く・・【銀星王国】へ・・行かせる訳には・・・」
『ギュイイィィィイ・・!』
耳障りな音の方を見れば───
ソコにはザラクス殿以上にボロボロな核。
最後の足掻きか、余程ザラクス殿が気にくわんか・・核が水を噴射しようと、迫ってきおった。
「───邪魔じゃ」
ザラクス殿から預かった剣を構える。
『ギュア・・ァ・・!!』
◆◆◆
「ペリオラ・シューティング・アタァァァァックッ!!!」
『ギュイイィ・・。
───イィ!?』
「おおっ!
急に【ニーズホッグ】の動きが悪く・・ペリオラ団長の必殺技が効いたんだ!」
「さすが団長だ!」
「今だ・・!」
「「「おおおおおおっっ!!!」」」
◆◆◆
「パラヤン殿、儂は【銀星王国】に行こうと思うとる。
何とかならんかの?」
傭兵ギルドから聞いた、現時点での盗賊団の調査結果───
『【銀星王国】への侵略の意志あり』
すでに【コカトリス】だのを試験的に放置しよるそうじゃ。
ただの盗賊団の所業ではない。
敵討ちなどとは言わん。
個人的なケジメっちゅうんを付けたいだけじゃて。
あの時から薄く熱を帯びとるこの
【狼の水晶ペンダント】に誓って・・の。
「・・うむむ、商工ギルドのツテを使えば、私の供として国境は越えられるでしょう」
「うん?
ソレだと二人に迷惑がかかるのう」
「いえいえ・・。
ポロヤン、御前にもそろそろ新しい母が必要だ」
「・・・うん??」
「父さん・・それより新しい娘が欲しくありませんか?」
「・・・・・・うん???」
「男尊女卑のこの世、下らん男に引っ掛かるより余程マシだろう。
・・だが、ココは引けん!
ねえゲンタさん!?」
「ねえゲンタ様!?」
───こののち、無事に国境を越え、昼飯にデカい猪を仕止めたら【銀星王国】の貴族に何ヤラ気にいられ───
・・まあ、ソレは別の話かの。
流石に全六話はマズかろうと、まとめましたが・・詰め込み過ぎました。
コレでも削ったエピソードは幾つか有り、その内の一つがザラクスが最初パラヤン父娘の元にいたのは、父娘の行商跡地と盗賊団の活動が一致したため父娘も盗賊団なのでは・・と、疑っていたからです。
( 源太が旅入りし、色々探りを入れやすくなって父娘は白と判断し離脱。)
姉妹 12時頃 転移
源太 16時頃 転移
( 以下、幹太・颯太姉妹基準。
なおあくまで 『頃』『程』。)
姉妹 初日 転移
姉妹 数日後 幹太、魔力制御成功
姉妹 数日後+ 幹太、ジキアのアレ
源太 半月後 【連合】に転移
姉妹 一ヶ月半後 国境の村
源太 一ヶ月半後 国境の村
姉妹 二ヶ月後 【街】
源太 二ヶ月少々 傭兵ギルドから要請
姉妹 二ヶ月半後 女学園
源太 二ヶ月半後 【銀星王国】
( 矛盾は・・無い筈。)




