39『幹太、99歳。』
「どうしました?
仁一郎さん」
私は昊。 秋原 昊。
秋原家を取敢ず、仕切っている者です。
何故でしょうか。
普通、私の御と・・母である源太さんが取り仕切るべきだと思うのですが。
まあ、ソレはともかく。
私の旦那である仁一郎さん ( 娘たちには母さん・父さん、孫からは婆ちゃん・爺ちゃんと呼ばれ、御互い自分達は何と呼ぼうか悩んだ末、名前で呼びあう事にしました。) が電話連絡の後、固まっています。
深刻な顔・・また、女でしょうか?
「仁一ろ───」
「そ、昊さん・・美千代が・・美千代が・・!」
「美千代さん?
美千代さんがどうしました!?」
美千代さん。
仁一郎さんの幼馴染みで私の友達。
美千代さんは仁一郎さんの事が好きだったようですが・・美千代さんが暴漢に襲われた事件を切っ掛けに、二人の仲は───疎遠、とは言いませんが・・変化はしました。
私と仁一郎さんの仲も。
「コレ───孫たちから来た、『旧世代』と関係有ると思われる機械の、内部データの通信記録なんだが・・」
「・・・・・・『 美千代 』 、と聞こえました」
「だろう!?」
「ですが・・美千代なんて、そう珍しい名前でも無いでしょう?」
数人の男女が会話する音声。
度々 『 美千代 』 という声が入ってはいますが・・。
「そもそも、美千代さんは・・天寿をまっとうする事を選びました」
御互い、子供が生まれてからは・・美千代さんとは数年に一度ぐらいしか連絡できていませんでした。
そして、私の事故死・・。
83年前の世界中の大国を襲った、魔女と【ファフニール】騒動で被害を受けなかった美千代さんと再会した時は───物凄く怒られました。
怒られて・・再び頻繁に会うようになり、暫くは御家族どもども幹太の青い世界で暮らしていたのですが・・最終的には、旦那さんの母国で過ごす事を選んだのです。
「実は、裏の取れていない情報なんだが・・その事で、美千代の旦那さんが善からぬ人間に目をつけられた可能性がある」
「海外実業家ですよね。
魔法使いの目で見ても、誠実な方でしたが・・まさか」
「細心の注意は払っていたんだが・・旦那さんは我々と出会う前から、取引先にマフィアの幽霊会社が居たらしい」
「───っ!?」
「幽霊会社も親マフィアも【ファフニール】被害で国ごと消滅し、自衛隊にも【人土】にも調べようが無い」
「まさか・・」
「『旧世代』の落ちぶれた権力者の中には、裏社会の人間も多いらしい」
「そんな・・私達のせいで、美千代さんの家族にマフィアが・・!?」
「我々のせいでは無いよ、昊さん。
寧ろ食い物にされる寸前に助けられたんだ。
ソレからは・・屑は徹底して屑というだけだ」
屑は徹底して屑───
それなら分かります。
私の、魔女として転成録において・・その事はとても・・・・。
「今、地球の【人土】たちに状況を調べて貰っている最中だ」
「そう・・ですか」
幹太が眠っている間は・・彩佳ちゃんと共に、二人の子供を育てていました。
幹太が目覚めてからは、様々な出来事があり───目まぐるしい日々で、美千代さんの残した家族とは10年以上連絡を取れていません。
上の娘さんは10数年前に。
幹太の1歳上である下の息子さんも今や100歳で、あまり長くないそうです。
美千代さんの孫や曾孫たちに何か有ったら私は・・・・。
「───昊さん!」
「はっ、はい!?」
「【人土】から連絡が来た!
美千代の家族全員、所在確認できた!」
「そうですか!」
「ただ・・」
ただ?
ただ、何ですか!?
仁一郎が、苦渋の表情を作って・・!?
「日本にホームステイしている曾孫の少女の、現保護者が・・怪しいらしい」




