38『当然、若い頃はモテモテだったと知っています。』
「純香姉・・。
まだ見つかってない『旧世代』の魔物って、放っておいて良いのかしら・・?」
「だよねぇ。
レンヂナ通りに現れた魔物1200も、結局囮ってゆうかぁ【ジート砦】に現れた魔物と違って『道破級』と『破級外』の混成だったしぃ・・」
私達は、謎の 『 歪み 』 を調査する為に、【銀星王国】を放って外国へと来ている。
・・邦花と美結夏の不安も、分かりはするのだけど。
「だからこその羅佳ちゃんだよ、邦花、美結夏。
魔女である羅佳ちゃんの経験値は、兄妹随一だもの」
「てゆぅか経験値だけなら、ママ達より上・・あれっ? 昊婆ちゃんより上だっけぇ?」
「でも・・羅佳ちゃんてば、天然なトコ有るのよねえ」
まあ、天然は否定出来ないけどね。
でも【人土】ネットワークで【銀星王国】内の、どの村・集落・施設にも襲来が無いらしいし・・大丈夫でしょ。
( たぶん。)
「探査システム局もね・・。
彼等の言ってた事、100%信じている訳じゃあ・・無いんでしょう?」
「『旧世代』と『歪み』の繋がりは・・暈していたように感じたね。
でも放っておけない歪みなのは本当。
私達への忠誠も本当。
なら、彼等の調査依頼を断る選択肢は無いかな」
「純香姉が言うなら・・」
「邦花姉ちゃん、羅佳ちゃんが大好きだもんねぇ」
「あら、失礼しちゃう。
私は秋原家の人間全員大好きよ」
「ハイハイ、おしゃべりはソコまで。
・・目的地が見えてきたよー」
◆◆◆
【麗嵐国】。
ココも、【旧・銀星王国】と同じく英雄ヨランギを国父に置き、男尊女卑を国是とした国───だった。
私達が生まれる前、世界征服中の【銀星王国】が制圧した国の一つ。
【銀星王国】に、女性を誘拐した国。
そして───
「ビタさん。
お久しぶりです」
「はい、皆さん御久しぶりなのですよ」
今は【人花】が管理している。
この【麗嵐国】が有る大陸に、【人花】達の本拠地が有るからだね。
「どうですか?
【人花の里】は?」
「ピヒタ姉様が上手く導いているのです。
大部【人花】も増えましたし・・安泰なのですよ」
「良かったです」
ビタさんは、かんママ達が大好きだから ( ほんのちょっとだけ、同性愛の気が有るみたい。) 普段からかんママの中の 『 青い世界 』 で過ごしているんだけど・・ピヒタさん夫婦は偶に、挨拶程度に来るだけ。
なので、ビタさんが二十歳の姿なのに
対し・・ピヒタさんは五十歳の姿なんだよね。
今日は【人花の巫女】として、【人花の里】を慰問していたそうだよ。
「【銀星王国】から連絡は受けたのです。
既に、怪しい機械は発見したのですよ」
「機械・・ですか?」
「そうなのです。
地球との通信機能も有るみたいなのですが・・『 歪み 』 が酷くて、私には近付けないのです」
「ソレって・・」
「『旧世代』と関係有るかは・・分からないのです」
シュンとするビタさん。
昊婆ちゃんが、秋原家以外で一番お気に入りなだけあって・・もう、良い歳した女性のハズ ( 私達もだろ・・とは何の事かな? ) なのに、庇護欲が掻き立てられるねえ。
「取敢ず私達三人で、歪みの範囲外からその機械を狙い撃ちしてみます。
案内をお願い出来ますか?」
「当然なのですよ!
秋原家の敵はみな、ブチ殺してやるのです!」
「頼もしいです」
元・森の民である昊婆ちゃんの御先祖様である聖者の子孫である【人花】。
つまりビタさんとは遠い親戚のようなモノ。
ビタさんも私達の家族です。
「あの・・オレ、目に入ってる?」
「入ってますよ?
プーニ・・さん、でしたっけ?」
「ウーニ!
・・勘弁してよ」
「元・対村破級傭兵団だった誇りを捨てて、お腹がプーニさんを軽蔑しているだけです」
「いや・・【麗嵐国】に行ったら毎回ムチャクチャ飯を食わされるしさ・・」
「鼻の下を伸ばして?」
「うぐ・・」
【麗嵐国】の男尊女卑を救ったのは、まだ当時存命だったディッポ団長さん率いるディッポファミリー傭兵団を中心とした面々。
ディッポファミリー傭兵団は女の誘拐が得意・・なんてブラックジョークを言われる程、女性を数知れず屑男の下から救出してきたから抜擢された・・らしいけどね。
まあ、数知れずの【麗嵐国】の女性からヒーロー扱いされ・・未だ、こんなんですわ。
ビタさんはビタさんで、妙に子供っぽいから 「 私の旦那様はモテモテなのです♡ 」 とか喜んじゃうし・・。
◆◆◆
「「「 せーのっ! 指向性面制圧魔法!!! 」」」
三人係りで、歪みの中心にある機械を撃破。
確かに、私達の異世界物質迎撃魔法でも近付けない程の歪みだったよ。
「でも・・地球との通信記録っぽい音声を、仁一郎爺ちゃんに見せたら───なんであんなに反応したんだろ」
「まさか・・浮気?
プーニさんみたいに」
「だーかーらー・・」
仁一郎爺ちゃんは・・音声の、とある 『 女性名 』 に反応していた。
「誰だろね・・ 『 美千代 』 って」




