37『悪夢きたりて。』
【銀星王国】の探査システム局の協力要請で、ボク達は海を越えて他大陸へとやってきたよ。
「やっぱり自分自身に超長距離遠隔操作魔法を掛けると楽だね、信太兄ちゃん」
「仁一郎爺ちゃんと源太ちゃんが空はダメだから、この手段で家族旅行は無理だけど」
「あやママもクワガタの来れる距離じゃ無いだろ、信太兄ちゃん、恵太兄ちゃん」
文明のブレイクスルーを安易に起こすべきじゃ無い───と判断したママ達や【人土】達により、未だこの世界に空を飛ぶ乗物はないんだよね。
・・ん?
なんか、向こうから魔力が飛んできた。
風魔法かな?
毒やウィルスを乗せた魔法・・じゃなくて、コレは───
≪・・何をしに来た?
英雄ヨランギの直系を名乗る、【銀星王国】の豚どもめ≫
「ナニこれ? 声? 誰だろ?」
「・・ああ、【黒剣教国】の声魔法だね」
ココは上空4000m。
周囲に誰も居ないのに、声がしたよ。
「≪ 君、だぁれ? ≫」
≪ぬぉ!?≫
声を掛けてきたから御返事してあげたのに・・何でか、慌てた声が聞こえてきたね。
「 何故ヤツ等がこの大儀式魔法を使える!? 」 とか何とか騒いでいるよ。
・・こんなの、ただ声を風に乗っけるだけの魔法だからねえ。
「≪この魔法は、かんママが83年前に作った魔法だよ≫」
≪て、適当を言うな!?
・・そうか、我等から秘奥を盗んだのだな!?
神に選ばれし英雄の言葉から耳を塞ぐ、不届きなる【銀星王国】の犬めが!≫
「英雄?」
「恵太兄ちゃん、ココも【旧・銀星王国】と同じでヨランギの子孫が作った国だぜ。
確か、どっちが直系かで戦争してたんだ」
「本当かい、甚太?
やっぱり他国って馬鹿ばっかりだなあ」
「噂だと、未だにヨランギの事を信じてて・・男尊女卑をやってんだ」
「「 うわ・・ 」」
家族仲間以外に興味ないボク達だけど・・ソレでも80年前の、ボク達が生まれる前の話を聞くと───男尊女卑をするヤツ等が馬鹿馬鹿しく思えるよ。
「≪えーっと・・ボク達は男尊女卑を許さないから。
女性たちを開放してよ≫」
≪女ぁ? 女だと!?
英雄の言葉も知らぬ不徳の豚が!≫
「英雄・・ねえ」
≪英雄は申された!
女は汚らわしいモノだと!≫
「≪ヨランギの言葉は全部、終わった事だよ。 ウィンさんは今───≫」
≪【銀星王国】の豚が、言うに事欠き・・もうよい、尋問も必要ない!
国防陣・・展開!!!≫
「国防陣?」
「あ、信太兄ちゃん、アレじゃね?」
「ん? あー・・無意味なのになあ」
【黒剣教国】から、かんママの非爆発型貫通魔法みたいな魔法が沢山きたよ。
・・たった4000mぽっちが届いてないけどね。
───仕方ないなあ。
「≪非人道的な、【黒剣教国】に告げるよ。
国際法により、不当な男尊女卑は禁止されているんだ。 貴国は法を犯している。
直ちに国内の女性を開放し……≫」
≪汚らわしき神の怨敵が、国内に居る訳ないだろう!?
ヤツ等は収容所で生涯、子を産むだけの───≫
「非爆発型貫通魔法は・・こう打つんだよ!」
「あっ、こら恵太!?」
あー・・恵太がやっちゃたよ・・。
【黒剣教国】のお城の上の方を消しさっちゃった。
「恵太、一応バツね。
寄生虫探査魔法で、収容所ってのを探して」
「ご、ごめんなさい。
アイツ等が、あんまりにもクズだったから・・・・・・南に12km、それらしき反応があったよ」
「甚太、探査システム局からの依頼目標は?」
「えーっと・・信太兄ちゃん、アッチに有ったぜ。
『 歪み 』 だ」
全力・防壁魔法。
コレ以上、吐き気のする雑音は耳に入れたくない。
『 声 』 は、「 城破級 」 がどうこうって騒いでたけど無視。
どーせ、もうすぐ静かになるしね。
「じゃあ行こうか」
◆◆◆
「うわっ・・!?」
「じ、地震か!?」
「「「 お邪魔しまーす 」」」
「あ?」
収容所って所に到着。
・・・・・・・・うわあ。
よく羅佳ちゃんがボク達の事を、「 なんちゃって幼児 」 って呼ぶけど・・こうゆうのを見ちゃうと、大人に成りたくないって思っちゃうよね。
「指向性面制圧魔法、弾丸特種指定バージョン」
大人の男の人達が、僕達の入ってきた入口から出ていくよ。
出て行く時だけ皆揃ってて、御行儀が良いね。
「ごめんなさい」
「・・・・」
ボク達に感謝の目を向ける人も。
ボク達を憎悪の目で見る人も。
虚ろな目の人も。
取敢ず収容所を持ち上げつつ、『 清潔な建物 』 に変え 『 菌糸で作った綺麗な布 』 と 『 御風呂 』 を用意する。
ボク達は、かんママ程トラウマを癒す魔法は得意じゃ無いしね。
◆◆◆
「───ん?」
「信太兄ちゃん、アレって・・」
「歪み、だね。
しかもトンでもない大きさだなあ」
元・収容所を浮かべ、【黒剣教国】の外れに来たボク達は・・魔力とヴォイドがぶつかり起こる 『 歪み 』 を確認したよ。
今まで、歪みってのを映像でしか見たこと無かったけど間違い無い。
「恵太兄ちゃん、あの歪みの真ん中・・何か、機械が見えないか?」
「んー・・? あ、ホントだ。
・・【黒剣教国】って、異世界と何か取引あったっけ?」
「リャター商会もパラヤン商会も、会長が女の人だからね・・。
まず有り得ないかな」
つまり、あの機械は不正組織の物だよ。
『旧世代』と関係あるか・・は、現時点じゃあ分かんないな。
「よぉし・・恵太、『 彼女達 』 をお願い。
甚太、『 合体技 』 をやろう」
「『 合体技 』 かぁ・・みんなに怒られないか?」
「・・今更だよ。
かんママが寝ている間、みんな経済とかの方にばっか気にするようになったんだ。
だから【黒剣教国】なんて───」
ボク達は、魔力を火球に込める。
うんと、うぅぅんと───
「かんママのと比べたら、多少ちっちゃいとは言え・・この程度の誤差は」
「じゃあ、いくよ」
ボク達は、超長距離遠隔操作魔法を解く。
地上へと落下しつつ、大きな火球を産む。
「「「 ───W・全力・極大爆発魔法っ! 」」」
かんママの極大爆発魔法は、颯太さんに投げてもらわなきゃいけない。
けどボクたちは上空で極大爆発魔法を生成。
そのまま落とす。
「【黒剣教国】・・もう、要らないかな」
着弾する前に、自分達に超長距離遠隔操作魔法を掛け直して離脱。 遥か後方、全てを飲み込む轟音だけが響く。




