27『ギリ、横領じゃ無かった主人公。』
「【スライム】から現れた、【源・人土】。
俺と縁がある、男。
・・そうか。
───オマエ等か」
「誰か、分かったの?」
まず、アイツ等の誰か・・だろう。
「名前は知らんけどな。
『スライム・ABC』で十分だ」
「・・んがあああああああああっ!!」
『傲慢で自分勝手』なコイツ等は見下されるのが大嫌いだったが・・・・ある程度の知能は持っているようだな。
『反』はアレだけ 「 かんた かんた 」 と、俺を意識してんのに・・俺は、アイツ等をとるに足らない 「 モブ 」 だと言っている程度の事は分かるらしい。
激昂し、憎悪が吹き出している。
「・・で? 誰なのかしら?」
「・・・・。
俺と颯太が傭兵になるため、傭兵ギルドへ行った時にイチャモンをつけてきた連中だよ」
そして───
「───俺が、この世界に来て初めて・・殺した人間だ」
「・・・・そっか」
元々、秋原家の人間は・・家族や仲間以外の人間に対して興味が薄い。
再構成されたのも手伝って・・『敵』を殺すのに、躊躇いは無い。
無論日本に産まれ育った人間としての倫理観は持っているし、殺人鬼になったつもりは無いが。
「やっと思いだしましたか・・」
「あぁぁぁきはぁぁらぁぁかんたああああぁぁ・・!!
殺してやぁぁぁるうぅぅぅぅ!」
「傭兵仲間である彼等を、【スライムプール】に落とすとは・・。
しかも、より長く苦しむように【アルラウネ】の花を使って───なんと外道な」
・・そうか。
80年前・・日本に再転移する直前に【スライムプール】を掻き出した時、まだコイツ等が反応したような気はしたが・・。
コイツ等が【源・人土】になったのは・・【アルラウネ】の花の超回復能力が、何らかの作用をしたのかもな。
「魔女と【ファフニール】が日本を襲ってきた時・・我等は科学的アプローチで『扉』開けようとして───異世界の物資や魔物が流入してきました」
「今の地球の魔物の先祖だな」
「その時、彼等の元となった【スライム】も転移してきたのですよ。
色々とアプローチした結果・・彼等は人の知性などを取り戻しました」
色々と・・か。
ヴォイド能力は、その結果かね?
どう考えても『仲間』としてではなく『実検動物』だよな。
「『秋原 幹太』という共通の敵を持つ我等は友達となり・・『正義』を共に成すのです」
正義・・ねえ?
「男尊女卑( 俺達への性差別 )、
弱い者苛め( 弱い立場に強制 )、
仕事放棄( 災害指定を無視 )、
独断専行による仲間への被害拡散( エリ草を摘もうとして【アルラウネ】に襲われた )、
窃盗(【アルラウネ】の花の強奪 )・・どれも、傭兵として最悪だ」
まあ俺もエリ草は横領したが・・イーストや ( 今は呼び捨て。 ちなみに結婚はしてない。) ヒトゥデさんにはバレバレだった。
でも・・怪我人優先の、必要にかられて───という事情は考慮されたので御咎めはナシ。
ギリギリ、正当報酬に認められた。
「ソイツ等は後に、ギルドから直々に粛清依頼が出たほどだ。
・・ソレだけの下種傭兵団だったんだよ」
「だぁぁまああアれぇぇぇええ!」
「そして今や・・世界にこびりつく、唯の『シミ』だ」
俺の『反』。
【人土】の『反』。
魔法世界の『反』。
「何度でも・・殺してやる」
「うぉぉおおぉおおおおお!」
生きていた頃から録でもない。
死んでからも録でもない。
『反』に居場所は無い。
必要ない。




