24『暗い暗い、穴の底・・誰かが 「 おいで 」 と、僕を呼ぶ。』
「この魔物は全5000匹との事だが・・1500匹は兄妹で倒した。
1500匹が【ジート砦】に向かっている。
───が、残り2000匹の行方がどうしても分からないのだよ」
「に、2000匹も・・!?」
空から飛んできた少女から、トンデモない数字が出てくる。
ソレ等が何処かの村や集落を襲いでもしたら───
「【銀星王国】中の、各村や施設などからは 「 無事 」 の報告が届き、監視も続けて行ってもらっている」
「ソレ以外の場所は?
少数が山野に住み着いて・・数年後、増えた奴等がまた襲ってきたら」
「なので、私以外の兄妹全員が【銀星王国】中を寄生虫探査魔法で調べている」
「何で寄生虫・・」
たぶん、生命反応を探査する魔法なんだろうけど。
「ま、間に合うんですか?」
「マッハ6とか8とかで飛行しているからな。
距離にして、この星一周分は飛んでいる」
「・・・・」
リリちゃんが絶句している。
僕にとっちゃあ、 「 飛行 」 って部分だけで充分絶句だけど・・日本人には 「 マッハ 」 の部分も引っ掛かるらしい。
・・空飛ぶ乗り物・・の、事じゃ無いんだろうな。
「あ、あの───
空を飛んだり、この数の魔物を一瞬で全滅させるこのチカラ・・もしかして莫大な魔力を持つ女王様の・・」
「王子様( 笑 )ね」
『ラカ、いや・・羅佳( 笑 )サマ』
「お、オマエ等!?」
ヒューさんと『三者を越えし者』さんが、王子様にニヤニヤしながら近付く。
王子様と魔女・・知り合いなのかな。
クジャラさんも、近所の子供に対するような親しさで話しかけてくる。
「【ジート砦】に来ている1500匹・・もう200匹近く倒したから、後1300匹───大丈夫か?」
「1300匹程度ならな」
「1300匹程度・・」
130匹・・いや、13匹───いやいや。
この短時間で一人で対・村破級とか魔女とか・・超人を見続けて強さの感覚が狂ってきてる。
1.3匹くらいの気軽さで言ってくる羅佳サマ。
【ジート砦】の防壁の上に上がれば、遠くに見える新種の村破級1300匹の群。
土煙を上げつつ迫ってくる。
先輩が家族を裏切ってまで僕たちを守ってくれなかったら・・。
ポロヤンさんがジャミング装置で、一旦魔物をバラけさせなかったら。
僕たちは、アレの三倍以上の群と僕たちだけで対峙しなきゃ成らなかったのか・・。
「全力・大小自動追尾・・」
羅佳サマが、【ジート砦】に存在する全ての魔物の死体を空中へと持ち上げて一つの塊にする。
・・うわぁ・・。
『 地獄玉 』 としか形容できない魔法が完成したぁ・・。
「・・・・魔法っ!」
・・地獄玉が、飛んでゆく。
血や臓腑を撒き散らしながら。
玉から剥き出しの骨は、まるで『手』のようで・・「逃がさないよ」と言っているみたいだ。
今晩、トイレに一人で行けなくなりそう・・。
「ラカ・・。
お前、やっぱあのバカ娘の娘ね・・」
「な、何を!?」
『緊急事態。砦の一部を使えば良かった。
今のラカの魔力なら十分』
「し、修理を考えるなら砦よりも御手軽な弾を使うべきだろう!?」
「アレを、御手軽の一言で済ます辺りがなー・・幹太ちゃんっぽいよなー・・」
三人が何について語っているかは・・敢えて問わないけど。
「あ・・あのう───
その、王子様がたが空から2000匹の魔物を探して見つからないのであれば、もう退治されたのでは?
・・・・女王様に」
三人と、羅佳様が・・僕の台詞に 『 ビクンッ 』 となる。
いくら散り散りになったとしても・・この短時間で、2000匹が場所も分からないぐらい1匹単位になるとは思えない。
なら・・この短時間で2000匹も、王子様がた以外で退治出来る人なんて───
「・・・・。
・・今日の騒動を隠蔽する為、二人のいる範囲には兄妹の誰も入ってない」
「でも、ソレなら・・」
『ロクなコトに成らない』
「・・・・」
四人が黙る。
( んで、何故か僕が睨まれた。)




