23『ねくろまんさー。』
「『三者を越えし者』さん!」
『コッチの入口を塞ぐので精一杯』
「ヒューさん!」
「同じく・・ね!」
【ジート砦】に新種の魔物が、どんどん攻めこんでくる。
一番攻めこまれている北と東の門を、『三者を越えし者』さんとヒューさんが守ってくれている。
・・けど。
「この魔物・・砦の防壁を登って・・!」
徐々に、壁を登って砦内部に侵攻してくるタイプの魔物が現れ始めた。
この動き・・何の取っ掛かりも無い場所にも張り付ける魔物、【テンジョウヤモリ】みたいな───
コッチは、『三者を越えし者』さんとヒューさんが相手する魔物と比べたら極少数だ。
まだ死者は出ていない。
致命的な怪我をした人も居ない。
・・けど。
何人かの傭兵かの傭兵は・・恐慌しつつある。
「オマエ等、一旦下がれ!
大盾を持ってこい!
・・アロス、大盾部隊を率いて防衛陣を組め!
ゼレバ達は長槍を使って、リリちゃん達魔法使いを死守しろ」
「「「 はいっ! 」」」
クジャラさんが指示を出してくれる。
「先輩!」
「おうっ!
リリちゃん、みんなを連れて陣の中へ!」
「はい!」
クジャラさんの指示により恐慌状態の傭兵団も辛うじて、動けるようなった。
けど・・如何な僕たちが、クジャラさんや魔女たちと比べる迄もない雑魚とは言えこの人数が『攻』から『守』に転じたんだ。
魔物の殲滅スピードが落ちる。
クジャラさんの負担が増える。
「くっ・・」
「クジャラさんっ!」
クジャラさんが疲れからか・・魔物の血溜まりで踏ん張りが利かず、姿勢を崩し───
『指向性面制圧魔法!
魔物の死骸バージョン!』
【ジート砦】の壁の外から10匹以上の魔物の死体がバラバラになりながら物凄いスピードでスッ飛んでくる。
魔物の骨や肉の破片が、多くの魔物を巻き込み、更に弾丸を増やして更に多くの魔物を巻き込んでゆく。
「うわぁ・・」
辺りから、生きてる魔物は居なくなった・・けど。
地獄絵図───と言わんばかりの、悪夢の如き風景が広がる。
・・あ、さっき恐慌状態に陥った傭兵数人が吐いてる。
ちょっ・・狭い、陣の中で吐いたら・・!?
「ゲ○○○○ェェ・・!」
「ヴォ○○○○ェェ・・!」
うわあ!?
リリちゃんが貰ってしまい、僕のズボンに思いっきし掛かってしまった・・。
「ぜ、ゼレバ君・・業界の人じゃ無いですよねー・・。
・・ゴメンなアああい」
リリちゃんから謎の謝罪。
まあ、魔法使いとは言え実戦は初らしいし仕方無いよね。
「か・・幹───」
「ん? クジャラか?」
「ら、ラカ!?」
空から・・へっ!?
10歳ぐらいの少女が降ってきた!?
「そ、空を飛ぶ魔法・・!?
ど、どうやって???」
「石や炎を飛ばす魔法を自分に・・いや、そんな事したって・・」
リリちゃん他、魔法使いがザワめく。
あ、やっぱトンデモ無い事なんだな。
クジャラさんとは知り合いっぽい。
「ラカ、お前・・幹太ちゃんにバレたく無いから隠密で動くとか言ってなかったか?」
「母さんは、何故か元の場所から動いてないからな。
今のウチに辺りの敵を蹴散らすと兄妹で決まった」
「辺り?」
「クジャラはコイツ等をクローン・・全く同一の魔物だと本部に報告したらしいが」
「ああ」
「コイツ等は一度解き放たれたら、物凄いスピードで自己進化し始めている。
ちょっとした変化で別の能力を獲得し始めたのだよ」
「なんだソリャ?
ズルかよ」
「遺伝子の改造という意味ではな」
よく分からないけど・・あまりコイツ等に、いろんな戦闘経験をつませない為───同じ場所で一纏めに倒す気なのかな。




