表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その姉妹品、危険につき──  作者: フユキ
番外編・2
481/547

16『種モミだか水だか。』

 

「アロス ダ アスェベタ……!?

アスェベタって、先輩が昔働いていたっていう……?」




な、何ナニ!?

いきなりクジャラさんが、ゼレバ君の先輩さんに剣を突きつけたかとおもったら……先輩さんが貴族?


『旧世代』っていうテロリストで、この魔物をアタシ達に嗾けたってコト!?




「さ・・『三者を越えし者』・・アタシ達はどうしたら・・?」


『取敢ず、自分の後ろに』


「『三者を越えし者』は、事情が分かるの?」




クジャラさんと親しげにしていた『三者を越えし者』。

パニくるアタシやゼレバ君、我関せずといったヒューさんと違って・・『三者を越えし者』は冷静に成り行きを見ているわ。




『彼の祖父とやらは、恐らくザーロス ダ アスェベタ。

兄のガロス、弟のデロスに子は居なかったと聞く』


「『三者を越えし者』もクジャラさんみたいに、その貴族様と会った事が有るの?」


『兄、ガロスとは会った。

ナンパされた』


「へ、へ~・・」




ドコまでホントか分かんないけど・・う、嘘は吐いてないわね。




「先輩、僕たちを騙してたんですか!?」


「違う!

・・いや、使命ではそうだ。

傭兵高校の生徒が邪魔なら足止めせよ、と」


「この・・クローン? 魔物を、オレ達が【ジート砦】に来たタイミングで呼びよせたのか?」


「オレじゃない!

寧ろ・・ゼレバ達を守ろうとしたんだ!」




クジャラさんが、アタシ達を見てきたから・・アタシは首を縦に降る。

先輩さん・・アロスさんは、嘘を吐いてないから。


ゼレバ君は・・複雑そうな表情ね。




「・・続けろ」


「ザーロス様は、領民の幸福を約束できるなら・・と【銀製王国】女王と今の貴族形態を約束したんだ。

・・だが、父上は魔法使いとして産まれなかった事もあり、歪み───」


「『旧世代』に入ったって訳か。

デロスが【ファフニール】に取り込まれたのと一緒だな」


「勉強家だな・・。

ソレはアスェベタ家の秘密なのに」


「一応、名だけとはいえ・・オレも【デロスファフニール】討伐隊の一人だからな」


「は・・?」


「イーストの奴もそうだぜ。

名前だきゃあ、討伐隊の一人だ」




アロスさんが顔を青くしているわ。

そのデロスって人・・。




「【デロスファフニール】は幹───現女王様が、80年前退治なされた。

当時彼女の側近だったオレ達は、魔王討伐後もその魔力を受けて若さを保っている」


「「「 ───っ!? 」」」




た、たしかイースト様が100歳以上で・・クジャラさんも100歳以上!?




「ま、まさか『三者を越えし者』も・・」


『ん? 自分は自分の魔力で生きてる。

2000年ちょい』


「へ、へ~・・」



よく分かんないけど、化物クラスの人間が魔王討伐隊ってワケね。




「あの・・」


「どうしたゼレバ」


「せ、先輩はどうなるんですか?」


「ゼレバ・・」




ゼレバ君は悲しそうにし。

先輩さんは申し訳なさそうにし。

クジャラさんは困ったそうにし。




「ゼレバ、お前はどうしたい?」


「正直、貴族の因縁とか分かんないですし・・先輩が『旧世代』の使命に背いて僕を守ろうとしたって言うなら・・」


「じゃあ助けよう」


「は?」




クジャラさんがアロスさんに突きつけていた剣を下ろす。

何でもないように。




「あ、あの・・良いのか!?

自分で言うのも何だが、オレは女王への裏切り者だぞ!?」


「正直、オレにも分からん。

オレは人を使う側じゃなく、人に使われる側だからな」


「なら・・せめて閉じ込めるとか」


「ウチの女王様がなあ・・気になった人間は元敵だろうと、どんどん味方に受け入れちゃう人だからなあ」


『自分は数千℃の業火で焼かれた後、漫画を見せて貰った』


「たぶんだけど、オマエ端折りすぎね。

ちなみにアタシゃ奴の世界に60年ぐらい閉じ込められてたね」


「へ、へ~・・」




噂だと女王は天然らしいけど・・。




「ただ、情報は吐いてもらうぞ」


「分かった。

といっても下ッパのオレは・・本来、傭兵高校の生徒を北東への道へ誘導する───ぐらいの役目しか与えられていないがな」


「確実にあの魔物に襲わせる為か」


「ああ。 本部の人間が【ジート砦】に仕掛けた " 鐘 " と呼ばれる制御装置の進路上にな」




【ジート砦】があの魔物の目的地だったから、アタシ達や傭兵高校の生徒達は逃げられたけど・・進路上だったらヤバかったのかもね。




「本部・・オマエ達が『旧世代』と呼ぶ者達の最終目的は【ジート砦】の奪還、女王の殺害───だ?」




あら?

アロスさんが・・観念したような顔で『旧世代』の情報を喋っていたら、急に困惑顔になったわね?




「く、クジャラさん・・80年前から生きてるっつったよな!?」


「あ、ああ」


「もしかして、女王の他の幹部も?」


「オレの爺さんとか、不老を望まない人間は天寿を全うしたが・・生きている奴は多いぞ」


「は、はは・・。

なんだ、オレが学校を守ろうと色々やったのは無駄か?

いや・・ソレで良い。

ソレが良いんだ・・」




アロスさんが泣き笑いしているわ。

肩の荷がおりたかのように・・。




「『旧世代』は、魔王討伐隊の生き残りが『女王と、その妹』後は精々『魔女』だけだと思っている。

『旧世代』の戦力は、さっきの魔物が5000匹。

ソレでオレの情報は全てだ」


「村破級が5000・・!?」


「傭兵団どころか、国すら───」




アタシとゼレバ君が絶望してて・・けど、クジャラさんと『三者を越えし者』やヒューさんは普段通りの顔。




「あんぐらいなら・・キツイけど何とかなるね?」


『ひゃっはー』


「源太さんとかチビッ子どもも居るしな。

姉妹にどうこう行く心配も有るまい」




寧ろ、懸念材料が無くなったって顔だわ。




「下ッパであるアロスに、『旧世代』の全戦力を通達していなかったとしても・・『旧世代』がオレ達の全戦力を見誤った時点でオレ達の勝ちだ」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ