48『様々な視点・特別編② 中身は84歳♡』
「儂は『秋原 源太』という者じゃ。
御主等は大丈夫かの?」
儂は馬車のまわりに居った連中に声をかける。
外人が3人、人種は分からんが金髪で色白の40代程の男と、その娘っぽい20代前半程と、先程の戦士で黒髪に浅黒い肌の30後半の男じゃな。
「あ、貴女様の御陰で助かりました!
私はパラヤンで娘のポロヤン、此方は傭兵のザラクスさんです」
・・今、気づいたが日本語じゃの。
じゃが、昔の映画の吹替えみたいな違和感はある。
あの世は言葉に不自由せんのじゃろうか?
「鬼の仲間か知らんが、ああゆう化物はよう出るんかのう?」
「オニ・・が、何か分かりませんが目撃の噂は聞きます。
・・胡散臭い連中が出所でしたので、てっきりデマだと思っていたのですが」
「すまん・・【ナーガ】 ( と、盗賊 ) は退治したとはいえ、長話するような場所でもない。
さっさと移動したいんだが・・」
「おお、そうですな。
では持てる限りの貴重品を持って行きますので・・」
「・・うん?
ソレ以外は棄てるんかの?」
「ええ、この人数ではこのサイズの馬車を起こすことは不可能ですから」
「・・・。
ちょっと待っとれ」
あのデカい鉄製剣を片手で持ちあげた今の儂の若者ぱわあーなら──
「・・どおおっこいせええええっっ!!!」
『──ギッ・・ギッ・・ギギギギッ──』
「「「───・・はぁ!!???」」」
・・ふう。
「ちょっと失敗したのう、持ち上げることだけ意識し過ぎて馬車や中身を傷めてしもうた」
「・・い、いえ・・次の行商予定の村までは充分持ちますっ!
商品は・・ほぼほぼ破棄する予定だったのでこれだけ残ればっ!」
「なら良かったわい」
「あ、あの・・」
「うん?」
娘の方が話かけてくるが・・なんじゃ?
頬を赤く染めて・・はっ・・ま、まさか!?
「い、いかんぞ・・儂はまだ妻を──」
「服を差し上げますから着替えて下さい!」
「──愛し・・うん? 服??
・・おお、確かにこれはハシタナイの」
娘さんの態度に一瞬、自分が若い女だと忘れとったが・・。
己の服を見ると確かに目のやり場に困るな。
木島んトコであの後、針もやる予定じゃったんで下着姿なんじゃが、森を抜ける時に枝だので切ったらしいの。
穴だらけじゃ・・。
男共を見ると・・助平な顔をして、慌てて目を反らしよる。
「すまんが服を頂こう」
「はい、どうぞ此方へ」
◆◆◆
馬車の中で着替える為に、割れたナンヤラを片付ける事に。
うん・・?
「ああ、ソレは鏡ですね」
「ほう・・コレが儂の顔か・・。
母に似とるな・・」
「・・・・?
鏡を始めて見られたのですか?
・・あ、あの・・貴族様なのでは・・」
「・・・?」
貴族様?
一瞬・・何を言われとるんか分からず、キョロキョロ探しとると──
「か、家名を持っている魔法使いなのですから貴族様なのでは?」
「家名? 名字の事か?
日本だと当たり前なんじゃがな。
魔法使いとはなんじゃ?」
「あの腕力と脚力は魔法では?」
魔法使い・・魔法なんかの?
まあ流石に車より早よう走ったり、馬車を持ち上げたり、若者ぱわあーで済ますのは無理があったか。
「済まんの、気を使わせておったか。
儂は唯の爺──
・・一般人じゃから楽にしとくれ」
「あっ、いえ・・命の恩人ですからそんな無礼は出来ません・・!」
「そうかの」
渡された服は異国情緒溢れるが一目で女物と分かる服じゃった。
着替え終え、馬車の外へ出ると男共が
「 ほう・・っ 」 と、なっとる。
「お・・御美しい・・!」
「ああ、儂は貴族ではないんでな。
世辞はエエぞ」
「ええっ!?
そ、そうだったのですか!?
・・あっ、いえ、しかし世辞ではなく本当に御美しい・・!」
「そ、そうか?」
──なんじゃろうな・・?
男なのに、男共にそうゆう目で見られて・・嬉しいの。
◆◆◆
パラヤンとポロヤンの親子は隣国へ行商に行く途中じゃというので、宛ても無いんで着いてゆく。
どうも此処はあの世ではないらしい。
・・じゃあ何処なんじゃ、と・・問われれば何処かは分からんがの。
親子の行商を手伝いながら此処の常識・・貴族だの魔法だの魔物だのを習う。
特に気を使わねばならんのは『男尊女卑』だという。
面倒臭いのう。
しかし傭兵というザラクスに傭兵の仕組みや具体的な魔物の事を習う。
戦争で人殺しをするのは勘弁じゃが、魔物退治は──
若い身体と魔法なるチカラ、秋原甲冑柔術で習うてきた全てが役に立つ此処は面白い・・!
◆◆◆
そして此処に来て一ヶ月ちょい。
この国の村々をまわり特産物を集め隣国との国境にある村にきた。




