14『わんぱく。』
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「───目標、『甲・乙』は?」
〔『乙』は偽装した衛星を使い、追っています。
○○県○○市○─○─○、あと三日ほどで日本側の『扉』に着くかと 〕
〔『甲』は活動拠点は異世界なので、【人土】共が邪魔する上・・陽炎と消音の魔法を使うため、正確な現在地は分かりません。
───が、やはり『扉』から三日圏内に居るかと 〕
〔『乙』は所詮、格闘能力しか有りません。
『甲』と合流前に仕止めるべきでは? 〕
「うむ・・。
だが、彼方の『扉』の前に集まった、傭兵とかいう羽虫どもに邪魔はされたくないな。
・・" 鐘 " を鳴らせ」
〔 了解。
制御装置を作動させます 〕
◆◆◆
〔 " ドリーα" 、異世界側の戦闘集団を『扉』の前から追い払いました 〕
「ふふん・・!
さすが『反』製造・解析過程で得たノウハウを詰め込んだ、遺伝子操作生物だ!
傭兵とやらなど、モノともしない!」
「───・・大した物だ」
「貴族の、貴方方はどう思われる?」
「傭兵や騎士どもの質は低下しておろう」
「というと?」
「千年程前までは街破級が溢れかえっており、人類そのものが強かったそうだが・・街破級の減少と共に、人類の弱化が進んだ。
───更に80年前の戦争から、人類を襲う魔物そのものが減った今・・奴等に雑魚しか居らんよ」
「" ドリーα" の活躍は、当然の結果という訳か」
「ソチラの文化を否定するつもりは無いがな・・。
産まれながらに魂が濁っておる賤しい身分は、何をしようと小賢しくなるだけで学校など・・」
「・・・・新政府も、考慮すべき事案だろうな」
「・・・・」
「しかし・・" ドリーα" の集まりが悪いな。
100体も居らんぞ?
無人地区に5000体以上居るのではなかったか?」
「所詮、"α" は、自然繁殖に成功したぐらいで───戦闘力・寿命ともに大した事のないバッドコピーだ。
制御力もな。
全部が制御装置に反応したワケでは無かったのだろう」
〔 " ドリーβ" を使いますか? 〕
「いや・・100体足らずの " ドリーα" 如きに苦戦している連中には勿体ないな」
「うむ。
" ドリーβ" は未だ300体ばかり」
〔 では " 鐘 " は引き続き、鳴らし続けます 〕
「うむ。
いずれ残りもやってくるだろう。
羽虫には、コチラの主力が " ドリーα" だと思わせておけ」
「そして孤立した『甲』には『反』を。
『乙』には " ドリーβ" 300体を」
「敵は『秋原 幹太』と『秋原 颯太』と『魔女』のみ。
主戦力は全員、80年間に死に絶えた。
せいぜい、その子孫だけだな」
◆◆◆
「この辺は全然、復興が進んでねーんだな、颯太婆ちゃん」
「元、【人土】の総本部が有った場所だね」
日本地図のアプリを広げながら、颯太婆ちゃんと朝食。
このアプリは【人土】が出してて、一般人向けの地図と違って白い部分がない。
みんなには秘密の場所も、ちゃんと載ってる完ペキ版なんだぜ。
「ココは80年前の激戦区で、ボロボロになって・・その上、幹太姉ちゃんの超魔力で『扉』が開きっぱなしだからねぇ。
みんなで、ココは関係者以外立入禁止、中身も秘密にしたんだよ」
「へー、だから復興はあえてしないってコト?」
「そうだよー。
理太くんはエライねぇ」
「こんぐらい、颯太婆ちゃんの孫なんだから分かるって!」
「んふー♡」
こうやってると、オレ達は『秋原家』なんだなあ・・って実感する。
家族仲が良い友達んトコでも、なんかよそよそしいモンな。
偶にくる、変なオヤジなんか・・やたら家族の悪口を言って、オレ達家族の仲も裂こうとするしさあ───
「・・ん?
颯太婆ちゃん・・アプリの地図が───」
「───んぅ?
・・やれやれ。
懲りないねぇ・・クスクス♡」
アプリの地図に・・なんか変な警報が出た。
颯太婆ちゃんは、地図も見ないで・・遥か彼方の空を見て・・タメ息をついた後───笑った。
あーあ・・この笑顔。
誰か知らないけど、馬鹿だな。
滅多に怒らない颯太婆ちゃんが、けっこうホンキで怒った時の笑顔だ。
颯太婆ちゃんに、この笑顔をさせた奴は生き残れないのに・・。
よーし、オレも頑張るぞ!




