12『草も樹も、街破級も魔王も残らず。』
「はーい、第2628回兄妹会議ぃ。
今回の議題は、『過激思想集団『旧世代』をどうするか?』でーす」
「前回の───
『バナナはオヤツに含まれますか? という質問を誰がやるか?』と、落差が酷すぎる・・」
「ラカちゃんが産まれる前はねー、『誰のオナラが一番クサイか?』とか、もっと下らない議題だったんだよー」
「このインチキ幼児どもが、ホントの幼児だった頃か・・」
6歳児くらいの、二人上の姉が語りかける。
10歳児である私の、10歳歳上ではあるが。
兄妹が、不定期に開催する兄妹会議。
議題内容はバラバラ。
その時々で、気になった内容を 『 会議 』 と格好つけてダベるだけだ。
( ちなみに前回のは、クジ引きの結果・・私が選ばれてしまい、家族ピクニックの前日に大恥をかかされた。)
・・今までは。
今回は、やや重い雰囲気が ( イーストの所に居る末妹以外の ) 兄妹全員に漂う。
「大別すると、やはり『かんママ組』と『あやママ組』で別れるのか?」
「そうだねー、ラカちゃんは『かんママ組』かな?」
「・・・・」
私たち兄妹は、末妹以外【人土】で【人茸】だ。
が・・どちらが母親かで、多少割合が変わる。
『かんママ組』は・・私たち家族の、家族の仲間の『敵』は皆殺しにすべきという考え。
『あやママ組』は、【人茸】にすべきという考えらしい。
「って言うかさあ、全人類【人茸】にしちゃわない?」
「三種族には手をださない約束だろ?」
「あと、魔王討伐隊とその子孫にはね」
魔女として言わせて貰えば、『敵』が『敵』なので詮無き事ではあるが。
( というか、地球人類を皆殺しにしようとしたぐらいだし。)
『ウチの一族』のチカラは異常すぎる。
ソレでいて、正義感というモノが欠落しているしな。
・・節度というモノは持たなければならない。
「兄妹全員に聞くが、母たちに秘密でいく・・コレは共通意識か?」
「もちろん!」
全員が頷く。
「今回の・・三年ぶりに颯太叔母さんと会う旅行の邪魔に成らないようにね」
「ホントはずっと会いたがっていたのに・・先ずは僕たちを優先してくれたんだもん。
ソレは絶対だよ」
まあな。
ソレには私も異論はない。
「【銀製王国】も外の国も・・【空の口】さんの洗脳魔法と【人茸化】してたのは、80年前の人間だけだしね。
ソレが『旧世代』を産む原因だよ」
「確かに、当時の女性は男尊女卑から開放されて感謝してたらしいけど・・次世代からは図に乗る女も居たらしいし───全人類【人茸化】すべきさ」
「そもそも【銀製王国】の外の人間は・・仲間以外、要らないよ。
【人茸】にする間でもないから」
「えー?
居たら便利よう!」
やれやれ。
「みな、議題がズレている。
『人類』が、ではなく『敵』が、だ」
「・・はーい」
あんまり変わんないよね、といった顔だな。
「みな、忘れるな。
我等の母を助けた人類もまた、そんな人類だった事を。
魔女はそんな人類に負けた事を。
母は、人類をどうこうしようと怒りはしないだろうが・・悲しむ」
「「「・・・・」」」
兄妹がみな、シュンとする。
どのクチが言っているのかと言われそうだが・・コレで良い。
「『旧世代』は『捕まえる』、コレを念頭に私たちは動こう。
殺すにしろ【人茸化】するにしろ・・この人数のチートが本気を出せば、騒ぎが大きくなる」
「ママたちにバレちゃうね」
「ああ」
街破級も泣いて逃げだすチート集団だけで片をつける。
ヤバそうな敵に、他の誰も近付けさせない。




