5『恩人が指ポチの横で、ブラインドタッチ。』
「わーい、ラカちゃーん遊ぼぉ♡」
「何が 「 わーい 」 か・・この実年齢30歳越えのインチキ幼児め」
「えー? 魔女のラカちゃんが、ソレを言う??」
「・・少なくとも、わたしの肉体は本物の10歳だし、10歳児を演じるつもりは無いよ『兄さん』」
全く・・。
『彼女』がまだ寝ている間に産まれた、最初の子。
実年齢は32歳なのに、母親と幼少期をやり直す為・・良い歳をして、この見た目と口調だ。
気持ち悪い・・筈、なのに───
「くっ・・こんな兄でも、いとおしく感じてしまう・・!
コレが『この一族』の呪いか・・!!」
「酷ない?」
酷くない。
もう一人の『母親』も、『この姓』を名乗り始めた途端・・一族をいとおしく感じ始めたという。
・・軽くホラーだ。
一度、本気でお祓いに行くかと相談した事がある。
( 謎に御互いをいとおしく感じて、抱っこし合いながら。)
「───まあ、それでも穢れなき魂である以上・・兄さんの方が上等であるがね」
自分が地球人類にした事について、後悔はしていない。
が、償いはしようと転生してみれば・・なんの因果か、この世で一番難儀な親の元に産まれてしまった。
( ずっと『彼女』の『中』に居たのだから、可能性は想定して然るべきだったのかもしれないが。)
求められれば、復讐をも受けいれようとしていたのに───わたしの素性を知って、自衛隊員の数人が歯をくいしばっていたよ。
中身が憎くても、外身が大英雄の娘じゃあ・・ね。
わたしも、今の母親の表情を見れば迂闊な事なんか出来やしない。
・・まあ精々、身を粉にして償いはするさ。
≪ちゃー≫
「有難う、モスマン」
モスマンが、必要な情報をネットで集めてプリントアウトしてくれる。
「モスマン・・凄いよね。
ボク、パソコン分からないよ」
「こんな物は慣れだな。
・・まあ、モスマンの賢さは異常だが」
モスマン達は、唯の魔力付与料理ではなく・・魔力を濃縮して保存できる繭の───限界値までたまった、母の超高密度魔力を食っていたらしいからな。
何らかの進化はし ( て、しまっ ) たのかもしれない。
( 遺伝子汚染・・だとかでは無いはず。 たぶん。 きっと。)
斯く言う、わたしも・・魔女とか名乗るのが恥ずかしいほど桁違いの魔力を受けついだ訳だが。
「で? ラカちゃん、何か分かったかなあ?」
「自衛隊の崖下から貰った資料によると・・当時、『母さん』を批難していた政治家で───脱税などの違法資産を遺していた連中が少なからず居たそうだ」
「その子孫が怪しいって訳?」
≪ちゃー?≫
「そう成るな。
今代の、活動資金となっている可能性がある」
当時・・地球の大国は、ほぼ全滅させたが───大幅にパワーアップした【人土】と自衛隊にしてやられ、日本に大した傷は与えられなかった。
生き残った『反・英雄』はチカラを付けたように見えた・・が、魔王討伐隊の頑張りにより、目覚めた日本人によって討伐されたのだ。
・・いや、討伐されたはずだったが───『カビ』の如く、表面上を退治してキレイになったと勘違いしていた。
カビの根は残っていたのに・・な。
「・・どう、するの?
まま達に・・言う?」
「・・いいや。
あの人の『体感時間』は、あの戦いからまだ3年・・とんでもない魔力の持ち主で在ろうと、まだまだ19歳。
小娘なんだ。
わたし達と違ってな」
「未だに、仲間が死んだ事を引きずっているみたいだしねー・・」
わたしにも、責任は有る。
それも、途轍もなく巨大な。
「自分のけじめは、自分でつける。
・・年長者としてな」




