47『様々な視点・特別編① 現代人なのにジジイ語ってフィクションだから成立しますね。』
『様々な視点』は他の登場人物に動きが無いので、とある人物の視点を、数話続けさせて頂きます。
・・何時の間にか寝とった儂は、森の中で目覚めた。
そんじょソコ等の森ではなかろうのう・・なんせ儂の身長の3倍は在ろうタンポポが咲いておる。
「夢か──・・ううん!?
なんじゃこの声・・って、お・・女に為っとる・・んか??」
咄嗟に喉を触ろうとして・・自分の胸が女の『ソレ』に為っとるのに気づいた。
そして、喉を触ろうとした手。
その手が若い。
初孫が産まれた時の娘ぐらいの歳頃かの?
とすれば30歳辺りか・・。
髪は白髪のまま・・いや、色だけが白くツヤは若者のソレじゃ。
そう言われればこの肉体、若さに満ち満ちておる。
息を吸う。
吸える。
まだ吸える。
息を吸うとはこんなにも気持ち良いことであったか!
「ほっ!」
軽く走る。
おおっ、この岩がゴロゴロしとる足場をモノともせず足があがる!
息切れも全然せん!
「女・・というのは、チト困るが・・若いとはエエのう」
夢じゃろうか?
・・覚めたくないの。
ひょっとしたら何処かで死んだか?
死んで彼岸にでも来たか。
「・・だとしたら娘に会えるかの」
まあ取敢ず、この森から出んとのう。
暫く僅かに見える木漏れ日の先を目指し歩く。
──む?
此は・・悲鳴!?
悲鳴が聞こえた方角へ本気で走る。
・・・・?
若い肉体とは此処まで速く走れるのか?
平坦な道であったなら車にも勝てそうじゃわい。
それに相当な距離を走ったのに今だ悲鳴の主が見えん。
徐々に声が大きくなっておるから聞き間違いでは無い。
若い耳は随分良く聞こえるんじゃのう。
◆◆◆
「なっ・・【ナーガ】だあっっ!!?」
「商品は棄ててゆけぇぇ!」
森と街道の境目、行商人の馬車が脱輪し横転している。
積み荷を狙った盗賊が襲撃、雇っていた傭兵が何とか撃退したものの・・馬車は横転してしまったようだ。
手分けして馬車を起こそうとした・・所に、『村破級【ナーガ】』が出現したらしい。
「待って・・足を挫いたの・・!」
「知るかっ!
『村破級』が出る道にケチって俺等みたいなのを雇ったオメエ等が悪いんだよ!!」
「ああ・・神様・・!
英雄ヨランギ様・・!
どうか御加護を──」
『シャララララッ!』
『ぜえぇぇえいっっ!!』
「──はあっ!?
い、今・・【ナーガ】を蹴り飛ばしたのか!?」
「な、なんだあの女性は!?」
◆◆◆
「さっさと逃げェい!!」
森を抜けると──
馬車と、外人と、化物がおった。
ドッキリ・・じゃ無いわな、この存在感。
巨大な蛇・・コブラっちゅう奴かの?
咄嗟に飛び蹴りを喰らわせてやったが・・秋原流甲冑柔術に蹴り技はないからの。
腰のない・・大した一撃にはなっとらんようじゃ。
生命力の強い蛇を殺るんは、頭を切り落とすのが一番なんじゃが・・鉈なんか持っとらんし・・というか鉈じゃ足らんか。
『シャッ!』『シャッ!』『シャララッ!』
「よっ、ほっ、っとりゃ、大部 ( この身体に ) 慣れてきたの・・随分楽に避けられるわい」
「【ナーガ】 ( の攻撃 ) に慣れてきた!?
・・なんという女傑か!」
なんか・・変なのが居るの・・。
雰囲気だけでなく格好も変じゃわい。
幹太がやりよるピコピコの戦士っぽい格好じゃ。
「この剣を!」
戦士っぽいのが自身の剣を儂に投げてきて──
「──ううん?
なんじゃこりゃあ、発泡スチロールで出来とるんかのう・・!?」
「い、いや・・その発泡ナントカは分からんが、間違いなく鉄製品だぞ!?」
・・触った感じは確かに鉄製っぽいが・・軽すぎる。
若い肉体とはこの大きさ ( 約1m80cm ) の鉄剣を軽々持ち上げられるんじゃなあ・・。
「御主に恨みは無いが・・儂の腕試しにさせて貰おうっっ!!!」
渾身のチカラで蛇に切りつけ・・一撃で巨大蛇の頭をぶった切る。




