1『い・・一体、正体は誰なんだ・・・!? 作者ですら予想がつかないよ! part3』
今書いている連載だとギャグを入れにくいので、ちょっとコッチに戻ってきました。
僕の名前はゼレバ。
二週間前に、傭兵専門の中学を卒業。
全傭兵団の憧れ───傭兵ギルド総監督『イースト』様が理事を勤められている【銀星王国】首都ギルド所属の、傭兵高校入学試験を受け・・合格。
本日より、傭兵となった。
故郷の皆には 「 村の出世頭め! 」 と、祝福されたんだぜ。
んで、今日は日本の技術で建てられた体育館という大きな建物で・・常に忙しいハズのイースト総監の御言葉があるという。
隣に立つ、先輩傭兵も目がキラキラしている。
───が、沢山の人間が集まれば・・中にはゲスも居るわけで。
「ひひっ・・。
18番受付のネーチャン、見たか?」
「見た見た!
スゲー美人なうえ・・乳がデケーのな♡」
「あのデカさは、コッチの女じゃねえぜ。
さすが傭兵ギルドの総本山。
地球の女を受付に呼べるんだなー」
なんだコイツ等?
外国人か?
【銀星王国】で女性に対し、セクハラっぽい事を言ったら逮捕されかねないぞ。
「・・ゼレバ。
銀星王国の民として、悪質な男に狙われていますよ───と、その女性に忠告せねばならんな」
「・・そ、そうですね。
僕も銀星王国の民として、女性を見───守るため、お供します!」
おっぱ───か弱き女性を守るのは、傭兵の仕事だ。
うん。
「あの天然な感じが良いんだよなー。
この国の女王も天然らしいが、あっちは高嶺のナンチャラだしよ」
これ・・不敬罪ギリギリの侮辱発言だな。
だけど仕方無い部分もある。
・・なんと、我が国の女王様は自分が女王とは知らないらしい。
とんでもない魔力の持ち主で、彼女が女王だと思っている人をこっそり守っている───つもりらしいが、その人はただの影武者だ。
一説には、御本人が 「 自分は女王の器ではない。 補佐ならやる 」 と仰られた・・とか。
まわりの人 ( ほぼ【人土】らしい。) は、女王様の天然ップリを利用して本物の女王に偽女王をやらせているらしい。
ただ、「 女王の器ではない 」 と自ら仰られるような御方なので、表舞台に現れることは無く・・銀星王国の人間ですらその素顔は知らない。
イースト総監なら・・知っているんだろうけど。
「ゼレバはイースト総監の事を、噂でしか知らないんだっけか?」
「はい」
イースト総監もお忙しい方で・・滅多に表舞台に姿を見せない。
「噂では83年前の魔王討伐メンバーの一人で、今は115歳なのに尚、前線で戦っているとか」
「そうか・・ゼレバ、お前はどっちだろうな?」
「どっち?」
「イースト総監を見りゃあ分かると思うが・・その噂を信じていない奴って多いんだぜ。
一人で『村破級』を倒す実力から、噂がデカくなった───ってな」
『村破級』を一人で倒す!
そんな実力なら、ますます魔王討伐メンバーに居たって不思議じゃない。
・・っていうか、イースト総監が魔王に止めを差したんじゃないか?
みな、議題場の上・・イースト総監が現れる場所に注目する。
「・・来るぞ。
イースト総監だ」
「・・っ」
100歳越えて、尚壮健。
仙人みたいな人なのか・・憧れの人が今───
・・・・えっ!?
「諸君、御早う。
私が此処の理事をやらせてもらっている、イーストだ」
「「「 ・・・・っ! 」」」
会場の何ヵ所かから、どよめきが起きる。
たぶん、僕と同じでイースト総監を初めて見たんだろう。
僕も、事前の先輩との会話がなければ声をあげていたかもしれない。
「どうだ、ゼレバ。
イースト総監・・まだ30歳前後にしか見えないだろう?」
「は・・はい・・。
に、二世三世ってやつですか?」
「そう言うのも多いな。
100歳越えて尚壮健・・なんて嘘だ、ってな」
「先輩は信じているんですか?」
「魔王討伐世代の【人花】は、【アルラウネ】並みの薬草を作れた・・って聞くしな」
その話なら、僕も聞いた事がある。
僕の村に【人花】が居て、彼の祖父もそういう事が出来たらしい・・と、言っていたからだ。
「『村破級』を一人で倒す実力・・ソレに、30代の若僧だと説明できないような御歴々が頭を下げるシーンも見たことがある」
「御歴々?」
「ディッポファミリー運送団、現会長のジキリス会長とか・・リャター商会の白百合騎士団団長とかがな」
「超VIPじゃないですか!?」
「日本地区の、自衛隊とも個人的な繋ぎが有るらしい」
「異世界とも・・!?」
なるほど・・僕は魔法使いでは無いが、先輩が嘘をつくような人ではないと知っている。
先輩の言葉を信じるなら、噂の信憑性は高い。
なにより、幼い頃からの憧れだった贔屓目をナシにしても・・目の前のイースト総監からは、王者の気迫とでも言うべき物がある。
「100歳越えて・・ってのはともかく、格好良いです」
「そうか、まあイケメンっつうのも有るしな」
先輩がチラリと、イースト総監に黄色い声援をおくる傭兵高校女子科生徒を見て言ってる。
彼女達は噂とか関係なく、イースト総監にメロメロっぽいな。
信じられない事に・・歴史の授業で、かつてこの国は男尊女卑を推奨していたと習った。
けど・・今の国王は女性だ。
どちらかと言えば女性上位の国である。
「───あー・・雑談は終わったかね?」
やや、険のあるイースト総監の一言。
ソレだけで、体育館の中から一斉に音が引く。
───カリスマ。
体育館のアチコチから、絞りだすような小声で 「 けっ、嘘つき野郎が 」 とか 「 総監様っ、俺は信じます! 」 とか 「 自分、魔法使いでありますから、彼は嘘つきであります 」 なんて声が。
イースト総監に悪態をつく連中は、彼のカリスマに抵抗している・・のではなく、そう言わなければ今にもひれ伏してしまいそうだから。
抵抗と呼ぶのも烏滸がましい、悪足掻き。
そういった不貞の輩を、イースト総監が一睨みするだけでソイツ等は泡をふく。
「・・まったく、最近の若い奴は。
傭兵たる者、常在戦場の心意気───常に気を張りたまえ」
イースト総監に好意的な者も、否定的な者も、みな息を飲む。
僕や先輩も、村破級とでも対峙したかの如き緊張感に───一瞬・・腰の剣に手が伸びかけた。
「この場にいる以上、弛んだ顔を見せる者は───」
「パパぁ~、オシッコ~!」
「なァァにィィィィィっ!?
そりゃ大変だッ!
衛生兵! 衛生へェェいいいいいっ!!」
な・・なんだ?
2歳ぐらいの・・幼女? が、泣きながら議題場の上へ。
「うぇ~ん、漏れちゃうよ~」
「パパが・・パパが付いているぞォォォォォォォォォォォォォォ!」
「「「 ・・・・ 」」」
イースト総監が───これ以上無いくらい、ダルっダルっっに弛んだ顔を見せ・・幼女を心配する。
・・なんだコリャ。




