最終話『様々な視点⑲・とある一家。』
「婆さん・・幸せだったか?」
「幸せだよ」
「俺は・・奪っていなかったか?」
「沢山、貰ったよ」
「俺も───だ」
そう、言い残して・・爺さんは───
理太郎君は死んだ。
僕は、幸せだったよ。
僕は、いろんな物を貰ったよ。
・・理太郎君は?
理太郎君を幸せに出来た?
理太郎君に沢山あげれた?
理太郎君は、笑顔で逝った。
たぶん、そうだと良いな。
「母さん、コッチは全部終わったよ」
「うん、有難う」
僕トコの長男。
理太郎君の葬儀その他を、全部任せちやった。
母さんの前世の事があるから、僕たちは宗教があんま好きじゃない。
だから喪主とかお経とかは無く、家族で理太郎君を火葬してその煙を見ながら宴会するのがウチの御葬式。
「・・・・みんなで、いっぱい旅をしたね」
「そうだねぇ」
「旅の最中でも、どんどん兄弟が増えるし」
「えへへ」
「えへへ、じゃないよ・・」
だって、ねぇ?
家族が増えるのは嬉しくて楽しくて・・気持ち良いし♡
(『中の人』で二人、異様に男の人の喜ばせ方に詳しい人も居るし。)
「ハァ、年齢考えてよ。
「・・アハハ」
もう、僕が男の人を好きになる事は無いんだろうけど。
「俺の回りの年寄りって、そんなんばっかだよ。
田坂さんと奥様も・・。
奥様はむかし、【人土】の敵だったらしいけど『ソレが燃える』とか言って、未だラブラブだし」
「彼処は・・まあ、ね」
田坂さんは・・ちょっと人格に問題ある人だし、ヨーさんは魔力も無いのに無茶する困った夫婦だけど───何だかんだで、日本地区の【人土】には受けが良いしねぇ。
・・今の、若い【人土】達は、日本地区の『影のドン』が誰か知らないし・・。
「・・まあ、コレで一区切りかな」
「どうするの?」
「結構まえから、仲の良かった山柄さんの玄孫から会社に誘われてたんだ。
旅の間で得た、コネやノウハウも有るしね」
「そっか」
「俺の子供や甥っ子姪っ子も、目ぼしいのには声を掛けてある」
「うん」
「後は、自分たちだけで旅したいって連中かな。
母さんと旅すると、大概チートでなんとかなっちゃうから」
「大丈夫?」
「大丈夫さ。
幹太さんトコの子供たちみたいに、チートは受け継がなかったけど・・コレでも全員、純【人土】の中じゃあ最強だしね」
「うん・・分かった」
理太郎君・・。
僕たちの子供や孫達が、自分だけの道を行くよ。
僕も・・かな。
◆◆◆
「───あれっ?
婆ちゃん、どっか行くの?」
暖炉の前で、小さい孫達に旅の話をした後───こっそり準備をしてたら、一番小さいのに見つかっちゃた。
9歳。
あの頃の、理太郎君ソックリな子だ。
「・・うん。
さっき、大事な人が目覚めたんだよ。
・・爺さんも居なくなったからねぇ、ソッチに旅立とうかなって」
「ふーん、婆ちゃん大丈夫か?
もうすぐ90歳だろ?」
「大丈夫だって。
僕、強いんだよ」
「えー?
そんなシワクチャなのに?」
「アハハ」
・・そうだな。
「爺さんも居なくなったし、子供達は全員一人立ちしたし・・いっか」
「んぅ?」
「見ててね?」
そう言って・・僕は───【人土】のチカラを解放する。
『あの時』、魔女が僕の身体から抜け・・再び入ってきた時、僕は『再再構成』された。
その時、手に入れた・・『魂』の姿を、肉体に反映させるチカラ。
「・・・・っ!」
「───ほら、君と同じ9歳の身体だよ」
「・・っげ・・・・。
すっげ、すっげえ・・!
婆ちゃんすっげえええええええええええええええっ!?」
「婆ちゃん、一人でも街破級を倒せるんだからね」
「すっげええ・・!
すっげえええ・・!」
ああ・・懐かしいな。
この感じ───理太郎君の子供の頃を思い出す。
「・・決めた!
俺もついてく!」
「えっ?」
「最初は・・年寄りだから介護でって思ったけど───今なら仲間として、付いていきたいんだ!」
「仲間・・」
「秋原家として、婆ちゃんは大好きだぜ?
・・でも、婆ちゃんの若い頃の話を聞く度に───羨ましかったんだ」
「・・うん」
「俺も、婆ちゃんから『ディッポだんちょー』みたいに、教わりたい。
『かんたねえちゃん』みたいに、一緒に冒険したいんだ!」
あの頃の、僕と同じ想い。
今でも、昨日の事のように思い出せる気持ち。
「良いねぇ・・冒険。
行っちゃおうか」
「うん!」
年齢なんて、関係ない。
性別なんて、関係ない。
───ただ、楽しもう。
あと二話の番外編、
『様々な視点・超特別編③』と『人物紹介』をもって、完結とさせて頂きます。
もうちっとだけ続( ry




