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その姉妹品、危険につき──  作者: フユキ
その姉妹品、危険につき──
461/547

461『決着。 そして───』

 

「───ん、ううん・・」


「あ、目ぇ覚めた?」




・・んあ?


あぇ?


朝?


俺・・寝てたのか?




「ずいぶん、長く寝てたわねえ」


「彩佳・・」




何時もと変わらぬ姿の彩佳が・・傍らに居た。


ココは・・秋原家の、俺の部屋か。

自分の部屋のベッドで寝ていたようで、彩佳が看病 ( ? ) してくれていたらしい。




「お、おはよう。

面倒みてくれてたんか・・済まんね」


「はい、おはようさん。

ソレは言いっこナシですよ、お婆さん」




誰がお婆さんだ。

何時もの魔力切れ───




「───って、ヨランギは!?

颯太は!?

みんなは!?」


「落ちつきなさい。

アンタの作戦は、取敢ず成功よ」


「そ、そうか」




まあ、彩佳がこんな落ちついてんだ。

そうゆう事なんだろう。


颯太は側に居ない。

けど・・魔力パスは感じる。

───距離は有るが・・うん、元気そうだ。


他のみんなのは感じない。

まだ俺達は、パスの通じなくなる【空の口(ウィン)】の中の『青い世界』に居るのかな?


・・あれ?

なら、何で秋原家が『この世界』に・・?




「立てるかしら?

お腹へってる?」


「ん?

んー・・身体や魔力は大丈夫。

腹はへったかな」


「じゃあ、台所に行きましょうか。

なんか作ってあげるわ」


「済んません」




遠く離れた場所に、颯太以外にも何人かのパスを感じる。

コレは・・『三者を超えし者』と───あれっ?

ラカっ!?

ラカと、ラカの仲間の魔女たちっぽいのを感じる。


向こうも、俺の目覚めを感じたっぽいな。




「ラカのパスが・・」


「今の彼女は味方・・といえば味方よ。

屑には容赦ないけど」


「ま・・まあ、屑になら何しようと良いけど」


「地球人を滅亡近くまで追い込んで、スッキリしたんじゃない?」




壮大な憂さ晴らしですな。


彩佳がラカの事を説明しつつ、冷蔵庫を物色。

野菜やエビ等を取りだし、下ごしらえしている。

今のキノコ・・冷蔵庫からじゃなく、彩佳から直接───いや、気の所為だ。

きっと。


玉子に冷水を加え、小麦粉や片栗粉に混ぜている。

天ぷらかな?

朝っぱらから?

いや、言うまい。

天ぷら・・大好きですしね。


衣に酢を加えている。

カラッと揚がる一手間らしいな。


野菜から衣をつけて揚げる。

青紫蘇は裏面に。

キノコは全体に衣。

・・あのキノコからも、彩佳とのパスが───いや、気の所為だ。

たぶん。


火を若干強め、エビに衣をつけ油にソッと入れる。

油切りしつつ、つゆも作っている。




「・・・・」


「・・・・」




凄くゆっくりな時間が流れる。

もうずっと、バタバタしたり緊張したりしていたからなあ。




「・・はい、出来たわよ」


「有難う御座います。

・・ん、美味いよ」


「そりゃアタシも、自活が長いしね」




俺達が日本へ帰ってきて、【アジ・タハーカ】が現れて・・その騒動の最中に彩佳は【人茸じんたけ】となった。


人茸じんたけ】になり、再構成された彩佳は・・実の両親からネグレクト気味だったのもあり、独り暮らしを始めたんだよな。


再構成・・か。




「・・なに、考えているの?」


「ん・・んー・・」


「ふん、どうせパパとママとの事とか再構成の事とかでしょ」


「・・・・イエス・マム」




そんな、表情に出てないハズなんだけどなあ・・。




「・・パパとママは───

まあ、奈々に任せたし・・敢えて会話したいとも思わないわ」


「そっか」


「再構成は・・アタシの中に魔女の『欠片』みたいなモンが入ったらしいって、オバさんに聞いたわね」


「欠片?」


「代々の王族がヤッてきた、屑の下種行為の、成れの果て・・だそうよ」


「・・そっか」


「【人土じんど】達や自衛隊員の翻訳チートは、ソレより更に小さな欠片みたいね」




なるほど、魔女たちの記憶の欠片・・みたいなモンか。




「その小さな欠片が砕けた、更に小さな欠片の事を『魔力』と呼ぶみたい」


「ほほー・・。

やたら『魔力』が『人の心』と反応するのは、その辺が理由か」


「たぶんね」




先人の欠片が、今の俺達の為に。

今の俺達の欠片が、何時か誰かの為に・・だな。




「オジさんに入った欠片は・・オバさんの欠片だったらしいわよ?」


「へっ!?

か、母さんの欠片が父さんに!?」


「オジさんを気に入った魔女が、オジさんに入ろうとして・・オバさんが無茶したみたい」




当時の母さんは、まだダウンしていた頃のハズ。

ほんと無茶するなあ。




「───ああ、その説明の流れで・・アンタが、オジさんと女学園生徒たちとの仲を取り持った事・・オバさんにバレたから」


「げほっ、がはっ、ごほっ!?」


「あとオジさんに『【銀星王国】全ての女性に種付けすりゃあ良い』って言った事とか」


「言ってないんですけど!?」




あん時は確か・・・・?

【銀星王国】中の屑男を始末したら、女性たちが余るから・・みたいな流れから、どうせなら一番優良な遺伝子を持つ父さんに───


・・あれ?




「取敢ず・・合掌だけしとくわ」


「勘弁して下さい」




震えながら食事終了。

途中から、味がしませんでした。




「ふう・・御馳走様でした」


「お粗末様」




・・さて。




「颯太も、俺が目覚めた事に気付いたっぽいし・・俺も颯太の所へ行くかあ」


「・・そうね」




あ、そうだ。




「( 山柄さーん、皆さーん・・あれ?

おーい、魔女のみんなぁ? )」




・・あるぇ?

俺の中に居るハズの住人たちに呼びかけるも・・反応が微かにあるだけで、返答が無い。

なんか、企んでんのか?


自分の体内なのに、魔力パスが通じないってのも変な話だ。




「彩佳は・・」


「・・知ってる。

けどまず、みんなに顔を見せなさい」


「みんな?

・・ああ、家の外の【人土じんど】ね」




彼等みたいに、パスは繋がってんだけど会った事は無い・・って人は、認識しづらいんだよな。


そうゆう意味では【人土じんど】の7~8割方が、そう。

数も多いし、ついつい意識から外れやすいのだ。


玄関の戸を開け───




「「「「 御早う御座います、【巫女】様 」」」」


「あ・・うん。

お、御早う御座います」




物凄い人数と、何時にない真剣さに・・圧倒されちまったゼィ。

まあ・・大仕事を終えた【巫女】と会いたいって感じなのかね。


・・ん?




「そういや・・皆さんどうやって、この『青い世界』に?

この【空の口(ウィン)】の中の世界・・無理に突破するのは、俺でもちょいキツいんですけど?」


「そ・・ソレは───」




人土じんど】が言い難そうにし・・彩佳をチラリと見る。


??




「幹太には・・現状をまず、『見てもらう』つもりよ。

イッキに、事の顛末を説明するのは───幹太もアタシも疲れるしね」


「・・わ、分かりました」




彩佳が、そう言うと・・【人土じんど】達は道を開ける。


・・な、なんだ?




「彩───」


「取敢ず・・現状を見なさい」


「・・・・分かった」




人土じんど】達が開けてくれた道を進む。


・・んん?

随分と綺麗な道だ。


ココは最終決戦があった場所から、そうとう離れてんのか?


ヨランギとの最終決戦があった場所は、魂の安全機構を解除した俺の一撃でメチャクチャになっていた。

アレは・・数日でどうこう出来るヤツじゃない。


ソレに・・建築物がチラホラと。


コレ等も、如何な【皆の巫女】として100%のチカラを出したとしても・・数日で整地・建築完了とは思えない。




「あ・・彩佳!

俺、どんだけ眠っていたんだ!?

まさか───一年以上とか・・!?」


「・・ソコの三叉路を右よ」




・・彩佳は、応えてくれそうに無い。

仕方無く、彩佳の言う通りに三叉路を右に曲がると───ココは山の頂上近いトコだったようだ。


麓が見える。




「・・こ、コレは・・!?」




絶句する俺に、彩佳がゆっくりと───『ビル群』を見ながら、クチを開く。




「ココは、青い世界じゃなくて実世界。

・・ヨランギとの戦いから、80年たった世界よ」




『何時もと変わらぬ姿』の彩佳の瞳が───俺を真っ直ぐとらえていた・・。

 

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