46『俺の弟がこんなに可愛い過ぎて ( 以下略。)』
「迷惑をかけたのはむしろ私だわ。
デロス、貴族にしてはやたら男尊女卑が酷かったでしょ?」
ディッポ団長の御母さんはソレで病んだらしいけど・・。
もしかしてリャター夫人への個人的怨みが、女性差別や平民差別へ・・?
「・・あのコ、魔法使いの出生率が高い家で唯一魔力を持たずに生まれて・・弟に対するコンプレックスが凄いのよ。
権力を誇示するために平民に理不尽な命令や罰を与えてたり」
「リャターさん、関係ないよね」
「そうなのですわ、ソウタ様!
でも・・最下級貴族が権力を手に入れるには手柄か──
お金が必要で、デロスは・・」
「まさか・・デロスの金儲けに、リャター夫人の会社が邪魔だから・・とか?」
・・頷くみんな。
うわっ、ダッセ~!
兄として弟に負けたから、自分が頑張るんじゃなく、まわりの権力者を引き摺り落とすって?
馬鹿だな、馬鹿過ぎる。
弟は愛でるモンだ。
【※作者注・幹太は天然変態ですが害は有りません※】
「さっき倉庫に閉じ込めた時、中から小声で『リャター夫人の依頼を受けた、という噂は女生徒の・・?』って、部下の人が言ってたよ?」
す、スゲぇな・・俺も魔法使いになって五感は上がったつもりだけど。
「つまり俺達を自分の権力の手駒として探しつつ、リャター夫人の弱味を探ってた?」
「・・そんなトコロかしらね?
『領主命令』なんて持ちだす訳だし・・。
なら、このままお帰りして貰って、領主様に『生徒が対、村破級だった』と、報告してもらいましょう」
女生徒達は、貴族が彼女達を認め世間から迫害を受けなくなる、
俺達は、『対、村破級』じゃなくなり、貴族の目から外れる。
・・って訳か。
「・・なるほど・・分かりました。
取敢ず、傭兵式の魔物退治法を勉強しつつ、最終的に【ケルピー】討伐を目標としましょう」
◆◆◆
「くそっ、くそっ!
何が『許してやるから帰れ』だ!
平民の癖に!
女の癖にっ・・!!」
「デロス、何を騒いでいる?
何処に行っていた?」
「ぐっ・・ザーロス、兄に対して何だそのクチの聞き方は・・!
・・ふん、まあ良い。
父上の願いを叶えるのはこのボク──」
「父上の願い・・?
ああ、噂の『対、村破級』の方か。
ソレならとうの昔にお連れしている」
「・・は?」
「ザーロス殿、済まんが──
・・おっと、客人じゃったか。
コレは失礼をした。」
「いえ、ゲンタさん。
こちらは私の愚兄でして。
───兄上、此方の女性が父上が探しておられた『対、村破級』です」
「おお、コレは重ね重ね失礼した。
・・儂の故郷は貴族が身近に居らんのでその手の礼儀がワカランでな。
ゲンタという」
「・・・・は?
ザーロス・・き、貴様ふざけているのか!?
こんな女が『対、村破級』な訳──」
「失礼ですよ。
ゲンタさんの実力は私が・・私と黒薔薇騎士団が保証します。
何せ我々の目の前で【ビッグボア】を単独撃破したのですから」
「な・・なん・・な・・・!?
【アルラウネ】は・・【コカトリス】【ワーム】【スライム】は・・!?」
「ソレがのう──
【あるらうね】とやらはこの頭の花が証明となるらしいが・・他は地元民の話とでは、ガ・・【がるうだ?】だの【なあが】だのと・・噛みあわんでなあ」
「情報はかなり錯綜していましたからな・・。
同じ鳥型で間違えたとか、その辺でしょう」
「が、【ガルーダ】だと!?
【コカトリス】より上位の魔物ではないか!
そんな異国の女の話を信用出来るか!」
「・・ハア、『魔法使いでない兄上』は人を疑うことしか出来ないでしょうが・・私は『魔法使い』なので彼女が真実を語っていると分かりますから。
・・では。
──ソレでゲンタさん、御話とは──」
『──バタン──』
「・・・・・・・・・っ!!!
・・くそっくそっくそおっ!
何もかも、あの学園のせいだ!!」
◆◆◆
騎士流の戦闘技術──
まあ、全体レベルだとナンチャラ陣形とか有っても・・個人レベルだと遠けりゃ弓矢、近けりゃ剣か槍。
基本的に皆が皆、同じ戦術と同じ個人技を習い、何時でもどんな状況でも対応出来る兵隊を作る。
一方、傭兵の戦闘は──
・・戦争なんかの大人数戦ならともかく、基本は自分の得意な技術のみやる。
弓矢が得意な人は弓矢だけ。
剣が得意な人は剣だけ。
魔法が得意な人は魔法だけ。
自分に有利な状況だと圧倒的に強く、不利な時は・・逃げる。
ソレが傭兵流の戦闘技術。
「戦闘は合ってない──
例えば・・今までのリャター夫人のやり方で会社に入りたいって人ォー?」
4人が手をあげる。
彼女達の戦闘授業は俺達のバックアップを覚えてもらう。
女性の自由化を目指す組織だし、出来得るかぎり願望は聞きたい。
言うまでも無くバックアップは必要だしな。
ちなみに騎士になりたい・・っていう人は──
「 デロスが来るまでは・・ねェ? 」
っつう感じで居なかった。
残りの18人には ( ザレは魔法使い専行になりたいそうなので ) 対、【ケルピー】訓練で適正を決めてもらおう。
「「「・・おっ、大っきいぃ・・! 」」」
【ケルピー】は、その巨体を活かした攻撃方法──
馬部分の頭突き
魚部分の尾びれ回し
大波
──の、3パターンがある。
ソレらを、どう再現しようかとみんなで相談していると颯太が
「あっ、アレなんかいいんじゃない?」
と、高さ5m・幅2m・形はやや反って先っぽが膨らんでいる岩を持ち上げて、突いたり・・左右に振ったりする。
・・駄目だ。
さっき奴等を素っ裸にしたせいか・・颯太が・・颯太が卑猥な形の岩を、卑猥に動かして遊んでいるようにしか見えない。
誰かが 「 デロス 」 とか 「 すぼまって 」 とか言ってる。
やめてあげて。
「大きさとかは、【ケルピー】に似ているけ『ブォオオンッ!!』」
・・颯太が俺達目線で岩を突く。
【ケルピー】が頭突きしてもこんな音シナイヨ?
「あ、当たったら怪我所では『ブォオ・・ぴたっ!』」
「当てないよ?」
手加減して振ってるらしいよ?




