455『ヒロイン。』
「・・俺達を『姉妹品』って呼んだな?
───その姉妹品が危険って事を教えてやるよ!」
≪は・・ハッ───
な、何を・・何が・・!?
唯でさえ、ボクより弱いキミが・・こ、コレだけ魔女を抜かれたんだぞ!?≫
「知るか・・」
≪し・・しかもボクは、その魔女全てのチカラを───この世界を、お母さんを通して使えるんだ!≫
「知るかっつってんだろ・・」
「か・・かん───
幹・・太姉ちゃ───がはっ!?」
颯太・・颯太が苦しんでいる。
ヨランギは言った。
「 コレをヤると俺達が死ぬ 」 と。
このままでは颯太が死んでしまう。
颯太を・・俺の一番大事な人を放ってはおけない。
───犬ゴリラの時とは違う!
「ヨランギ・・殺してやる!」
≪お・・女如きが、ボクに逆らうなああああ!?≫
「・・殺してやるぞ・・!
焼き殺してやる!
挽き殺してやる!
絞め殺してやる!
溺死が良いか!?
凍死が良いか!?
枯死が良いか!?
毒殺・感電死・刺殺・斬殺・撲殺・腐死・・・・何度復活しようと───その度に殺してやるぞ、ヨランギ!!!」
≪───っっ!≫
颯太を死なせない。
颯太を死なせない。
颯太を死なせない。
颯太を死なせない。
颯太を死なせない。
颯太を死なせない。
颯太を死なせない。
颯太を死なせない。
颯太を死なせない。
颯太を死なせない。
颯太を死なせない。
颯太を死なせない。
颯太を死なせない。
颯太を死なせない。
颯太を死なせない。
颯太を死なせない。
颯太を死なせない。
颯太を死なせない。
颯太を死なせない。
颯太を死なせない。
颯太を死なせない・・その為なら。
───俺は・・・・どう・・なっても・・良い。
「全力全開・全力全開・全力全開───」
≪なっ、何だよ・・この魔力はぁ!?≫
「───魂の、安全機構・・解除」
≪ヴ・・ヴォイドが効かない───いや!?
ボクのヴォイドを上回る魔力・・!?
こ、コレが・・『蠅』のチカラなのか!!?≫
両腕は、疾うに燃えつきた。
≪お・・オマエなんか、女のクセに!≫
目も、片方見えない。
≪ボク達の召し使いのクセに!≫
ドスン、と・・落ちる感触。
≪ぼ・・ボクは英雄だぞ!?
男なんだぞ!?
オマエなんかより偉いんだぞ!?≫
ああ、両足も無くなったか。
「───て"も"・・良"い ん"た"。
颯"太 を"守"れ"る な"ら・・・・」
≪ば・・化け物・・!!≫
「死"ね・・颯 太" の 敵"は"み"ん な"殺 す・・!」
◆◆◆
「か・・幹太ぁ!?
幹太、幹太、幹太ああ!?」
「カンタさァーん!
ソウタちゃァーん!
何処ッスかァーーー!??」
「御姉様・・ソウタ様・・」
「幹太、颯太、幹太、颯太・・!
くそっ、父親なのに私は何も出来ないのか・・!」
「かあ・・っ。
何が " ちいと " じゃい・・!」
「御姉チャンよう・・死なねェっつったよなァ?
御姉チャンに貰った『目』で見たンだゼ。
嘘ァ・・付くンじゃ無ェぞ・・!」
「カンタさん・・私達は、貴女から貰った物の百分の一も返せていないのよぉ~・・」
「カンタ先生・・」
「カンタよ、私はお前に忠誠を誓ったんだ。
私より先に死ぬのは許さない」
「オマエには、我がペリオラ傭兵団に入ってもらうぞ・・」
「デロス・・アキハラ カンタを恨んでいるか?
引きずり込みたいのか・・?
・・頼む、許してやってくれ!」
「カンタお姉さん・・ソウタお姉さん・・」
『・・・・』
皆が、祈っています。
私の息子、幹太と颯太が・・突然、目の前から消えました。
「ウィン・・」
貴女なの?
貴女が目覚めた、と・・思った瞬間の出来事でしたから。
今では、私の言葉にも反応しません。
『扉』も、開く事が出来ません。
今は再び眠りにつく貴女。
いとおしい妹。
いとおしい息子達。
・・私は、また失敗したのでしょうか。
妹なら妹、息子達なら息子達。
どちらかだけを選ぶべきだったのでしょうか。
私の、この場にいる全ての人間の【巫女】になった幹太。
・・その幹太から送られてくる魔力が、どんどん小さくなってゆく。
世界を隔ててすら繋がるパスが、繋がらない。
・・幹太、颯太・・。
アナタ達を助けたいと思うなら、私は妹を・・ウィンを───
───ああ、こんな事なら秋原 昊に転生など・・幹太を産まなければ良かっ──────
「秋原 昊どの」
「え?」
其処に居たのは、山柄さん。
山柄さんと・・【人土】の皆さん。
「秋原 幹太様を産んで下さり、有難う御座います」
「はっ?」
「秋原 幹太様を、あんな素晴らしい方に育てて下さり有難う御座います」
「あ、あの・・」
「我等は、素晴らしい主に遣えられて・・幸福でした」
「や、山柄さん?」
山柄さん達は、とても朗らかに笑っています。
まるで、その辺のコンビニにでも行くかのような気楽さで。
「みんな、今こそ例の【スライム】を使うよ」
「「「 はい 」」」
「【巫女】よ・・偉大な【巫女】よ」
「【人土の巫女】よ」
「今こそ我等が【巫女】に、我等【人土】が死ぬ時なり」
山柄さん達・・幹太達と共に異世界へと旅立った【人土】達の全身が溶けて───まるで巨大な一匹の【スライム】かのように・・!?
そして・・幹太が大量の扉で呼び出した地球の【人土】達も、その【スライム】の中に溶けてゆきます。
「おお、【人土】よ・・!
【巫女】が此の場に居らずとも、【巫女化】したのか・・!」
「【人狼】の長・・」
「羨むべきかしら、数百年間ずっと【巫女】が居なかった種族が・・三種族の真髄にたどり着いて・・」
「【人花】の長・・」
【スライム】となった【人土】が。
【人狼】が、【人花】が・・ウィンを取り囲む。
三種族の使命・・【空の口】を、討ち滅ぼす事───
ウィンを・・殺す?
私は・・どうすれば・・!?
≪クウ≫
「え?」
≪取敢ず、行こう≫
「そ・・その声、まさかラカ?
・・貴女も、幹太の『部屋』に!?」
ラカの姿は見えません。
ですが、確かに聞こえます。
≪なかなか、快適だったよ。
信じられないくらいに広大な部屋と、途轍もない人数の魔女・・そして、ソレを許容する『星の如き』魔力≫
そ、それ程?
幹太の魔力の大きさは知っていたつもりでしたが・・。
≪あれは、家族仲間思いからくるのかな。
常に我等を癒したいという魔力が流れていた。
全く・・君達と争うのが、馬鹿馬鹿しくなったよ≫
「ラカ・・」
≪敵だろうと、気に入ったなら誰でも受け入れる懐の深さ・・。
か弱き不幸な者だろうと、気に入らなければ慈悲の欠片も持たない容赦無さ・・。
───君の子供は面白い≫
「そ、そうですか?」
≪あの衝撃は───
産まれてからずっと恐れていた監守を『羽をもがれた羽虫』の如く感じた【空の口】様以来・・いや、ソレ以上か≫
「そうかもしれません。
私が何度、あの子に驚かされたか・・」
≪あの子を、あの思いを、殺したくは無い。
今、ヨランギがアキハラ カンタから我等魔女を引き抜いている。
アキハラカンタの内外にアキハラカンタと繋がる魔女が居る事で、魔女同士のパスのみソチラと繋がるようだ≫
「・・・・っ!」
≪君がわたし達にも隠して遂行した計画が。
我等の敵である三種族の抵抗が。
まだアキハラカンタの命を繋いでいる。
・・行こう≫
「・・はいっ!」
魔女と・・辛うじて【人土】が呼べる、とても細い繋がり。
・・でも!
「オバさん!
アタシも連れていって!」
彩佳ちゃん・・。




