454『やっとタイトル回収。』
≪ウィンです。
色々と貴女たちには、迷惑をかけたみたいね≫
『森の民』のウィンで有ると同時に・・魔王時の記憶が、心が壊れる前の記憶が───無い訳じゃあないみたいだ。
≪お、お母さん・・?≫
≪・・ねえ、ヨランギ≫
≪な、なんだい?≫
目を細める、ウィン。
・・笑顔。
≪今のままじゃあ・・駄目なの?≫
≪い、今のまま?≫
≪お母さんね・・疲れちゃった。
殺すのも、殺されるのも≫
≪・・お母さん?≫
その笑顔は、慈愛に満ちて───
≪誰にも迷惑を掛けないよう・・誰にも迷惑を掛けられないよう・・ずっと、ずっと、ずぅーっと・・親子二人で、ココに居るの≫
≪ず・・ずっと?≫
≪この樹に二人でずっと・・。
ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと・・≫
≪・・い、嫌だ!?
ボクは実世界へと出るんだ!≫
ずっと。 ココに。
『ソレ』は、『今まで』と同じ・・では無いんだろうな。
少なくとも───ヨランギの中では。
『今まで』は、ヨランギの中では復讐だか何だかがモチベーションだったんだろうし。
( 同情の余地なんざ、無いけどさ。)
≪お母さん!
ボクと一緒にココを出て、ソコの女魔法使いや三者や魔女の美女達を侍らせてようよ!?≫
「・・・・」
≪ソレ以外の愚民共は閉じこめてさ!
男魔法使いだろうと、魔女だろうと・・ココの中に居る者から放出される魔力は全てフラットな魔力となり、お母さんに譲渡されるんだよ!?
ココは、お母さんの中は・・奴等の新世界に成るんだ!≫
新世界の神になるってか。
下らない。
「閉じこめてどうすんだ?」
≪あ?≫
「母親の中に、皆を閉じこめて・・しかもソイツ等に感謝もせずに『恩恵』だけ受け続けるってか」
「屑な王族とかはショーがナイけどね、幹太姉ちゃん」
「ああ、全くだ。
屑どもを利用した魔力農場とかは別にイイや」
「うん、もし母さんとか源太ちゃんに魔力が必要なら・・僕達だって『そう』するしねぇ」
≪き、既知外どもめ!?≫
誰がや。
オマエが言うなや。
・・でも。
「でも、ソレ以外の人達は許さない」
母さんやウィンのような、勝手な主張に翻弄された人達。
ザレや女学園生徒達のような、理不尽な差別を受けた人達。
ビタ達、歴史に葬られた三種族の人々。
本来なら敵対する意味すら無かった、ラカたち魔女の皆。
「そんな人達まで閉じこめて───」
≪うるさいっ!
ボクは実世界に出るんだ!?≫
駄々を捏ねる餓鬼だな。
≪もう・・皆、ケンカは駄目よ?
ヨランギ、ソラお姉ちゃんに迷惑は掛けられないわ≫
≪───お母さん!?≫
ウィンは・・かなり『あやふや』だな。
【空の口】と【森の民】、危ういバランスを保って喋っている。
やはり心の傷を癒す作業の、最終段階で中断されたんだ。
・・チッ。
≪お母さんは騙されているんだよ!
・・そうだ。
お母さんが、こんな事言う訳が無い!≫
≪ヨランギ・・≫
≪コイツは喜ぶべきなんだ!
屑が、お母さんの糧に成れるんだから!?
・・・・オマエ等が、オマエ等がお母さんを、かどわかしたんだな!!≫
「母親の事を、もっと理解してやれ!」
≪魂の・・魂の傷さえ完璧に癒えたらああ!≫
ヨランギが胸の高さで両手を合わせ、魔力とヴォイドを捏ね始める。
『ソレ』は、互いに消滅する事も無く───
───ドゥンッ!
「───かはっ!?」
「颯太!?」
魔力とヴォイドを混ぜ合わせた『ソレ』が、消えた───かと思うと・・突然、颯太が膝を付く。
攻撃された!?
見えなかったぞ!?
いや・・攻撃じゃなくて、何か『干渉系』か・・!?
「ぅああっっ!」
「そっ、颯太ァ!?」
既に、俺と颯太には有りとあらゆる『防御・結界』魔法を掛けていたけど関係ない!
再び掛けなおす!
と同時にヨランギへと攻撃を加える・・が、俺一人ではヨランギの防壁を貫けず───俺自身も、ヴォイドによる束縛を受ける。
≪コレをしたらキミ達が死ぬから、ヤリたくなかったんだけど・・もうお母さんをかどわかす悪い女なんか、妻には要らないからさァ!≫
「颯太に何をした!?」
≪お母さんを癒すため、キミ達の中の『魔女』を貰う!≫
「お・・俺達の、中!?
魔女・・!?
何を言って───」
───幹太の『部屋』───
≪この、『お母さんの中の世界』。
『街破級』で実験したデータから、『全世界の人間や魔女』を閉じこめるには、やや足らなかった≫
───『キミの母親』が『キミ』に、どんな『人体実験』をしたのか───
≪だけどキミの母親がココに来て、お母さんとキミ達の中の『部屋』について話しあっているのを聞いたのさ!≫
≪元々は、クキちゃんの計画らしいわ~≫
≪キミの魔力を上げるため・・キミの中に、キミが望んだ『魔女』を閉じこめる『部屋』を作ったとね≫
俺が産まれる直前までは・・俺を【空の口】に捧げて、親子二人で魔女になろうとしていた母さん。
でも・・産まれた俺を見て、その行為は結果的に俺を殺す事だと思い至った。
然れど既に、【空の口】復活希望派の全魔女が絡む計画になってしまい、母さん一人ではどうしようも無くなってしまう。
「ソコまでは聞いたけど・・」
俺の前世『クキ』が案じた一計・・。
この世界で魔法使いや魔女が産む魔力は、ウィンの糧になるとヨランギが言った。
ソレと同じ『部屋』を作る事か。
『部屋』の中の魔女の魔力で、俺の魔力を上げて俺自身を捧げなくとも通常の魔力譲渡だけで【空の口】の魂や心の傷を癒せるようにした───ってか。
≪残酷な人体実験だろう?
キミの母親は言っていたよ。
「 我が子の魔力の源は『家族想い』、とてつもなく巨大な『部屋』が出来た 」ってねェ! ≫
母さんが、『転移する際に俺達を改造』と言っていたのが・・『部屋』に魔女が入る事っぽいな。
颯太が転移に付いて来れるのが想定外だったらしく、颯太と半分ことか何とか言っていたのが・・中に入る『魔女』か。
そういや・・俺の魔力が急上昇しだしたのが、『街破級【アジ・タハーカ】』を倒してからだった。
最初は【アジ・タハーカ】の膨大な魔力を吸収したからかと思っていたけど、一緒に吸収した【人土】の皆は然程あがって無かったもんな。
コレが俺達のチートの正体か。
源太ちゃんが俺達チート級の中で一番魔力が小さいのは、中の魔女が少ないからか?
≪エミー、ラナ、クレア、シノン、アリス、ティリ、ロンド、ドリー・・≫
「くあっ!」
「颯太!?」
颯太から、8っつの光る玉が抜け出る度に・・苦悶の表情を浮かべる。
こんな・・こんな・・颯太が苦しんでいるのに、俺には何も出来ないのか!?
≪ふん。
こんな馬鹿げた実験に付き合う魔女なだけあって、全員『賢者』と同じ『安らかに寝ていたい派』か。
だけど8人・・街破級を超えるな≫
ヨランギが、俺へと視線を向ける。
≪さあ、次はオマエだ≫
「ぐううぅ・・!?」
何かが・・チカラというより、魂が抜かれゆくかのような感触。
「こ・・こんな方法じゃ無くとも、ウィンの傷は癒せるんだぞ!?」
≪お母さんをかどわかす女が、何を偉そうに・・。
キミは魔女の『紛い品』。
───魔女の『姉妹品』って訳だ≫
≪ヨランギ・・≫
≪今度こそ、穢らわしい屑を排斥してお母さんとだけの国を造る!
ミント、レイ、フィリア、デネブ、ゾラ、クシア、テリー、ローザ、ポーラ・・ハッ、9人だ。
妹を超えたぞ?≫
「ぐぅぅ・・っ」
とてつも無い苦痛と・・喪失感。
長く連れ添った仲間を失ったかのような・・。
≪かつてはこのボクの妻だったんだ。
もう少し頑張れ。
キティ、ルベア、メル、ヴァーゴ、メレン、マウマ───頑張るね、もう15人だ。
でもそろそろだろう・・?
パール、ブルー、デュロ、スター、ルドリー、ケイト、クレア、ヨフ、ピィド・・ルドラ・・ロイタ・・アン・・・・ミネイト・・!?
き・・貴様・・魔女の数を誤魔化してないか・・??」
何を馬鹿な事を・・。
「はぁはぁ・・。
な、何の事だ・・?
魔女云々はオマエからしてきた話だろう・・?
ちょっと予定外が起きたからって人のせいにすんなよ」
≪────っ・・!
イイさ!
最後まで魔女を吸い出される苦痛を味わい続けろ!
ロロ、アズシン、ケイ、ショカ、パル、キセ、ドレ、バーゴ、アスカ、アマン、ナバ、ウッケ、ムイ、スイク、キロ、タナ、エイダ、チャッケ、ドウ、ヒノ、ティード、レトジ、クォニー、アアオ、カアニ、ビース、モテナ、キャーマン、シャクロア、アヤ、シュク、リョーネ、クーネ、ヨーソン、ティキ、エト、アーマス、ペア、ソヒ、モネ、カカ、モナ、フレイ、モーン、ケマ、レムシー、キカ、オボロ、エイト、ロマ、オノボ、セトマ、ショウ、ミツ、ウネ、キヲ、ギィ、キーン、フウ、セン、カニャ、シャット、ヒカリ、ミキ、マシロ、マーサ、ハニ、ツェフ、カイ、ナホ、トキメ、キゥキ───
・・ハァ・・ハァ。
まだ、居るのか・・!?
ま、まさか今まで倒した街破級内の魔女全てを受け入れたとでも言うのか!?
き、キミは・・一体・・!!?≫
「さあ・・な。
だけど、魔女が、ウィンが、皆が哀れって事は分かるよ」
≪・・っは!
オマエ如きが・・屑どもに翻弄され続けたお母さんの気持ちが分かるって!?
勝手を言うんじゃ・・≫
「そっちじゃない・・。
オマエに利用されてる方さ!
・・俺達を『姉妹品』って呼んだな?
───その姉妹品が危険って事を教えてやるよ!」




