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その姉妹品、危険につき──  作者: フユキ
その姉妹品、危険につき──
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453『お母さん。』

 

≪ボクの死と共に発動する、後発性の魔法をお姉さん(森の民の樹)に掛けてあるのさ≫


「後発性の魔法・・」


≪お姉さんに保管してあるボクの血肉から、新しいボクを生む魔法だよ≫




母さんも、俺を異世界へ転移させる為の扉を開くために自殺。


魂となり、僅かの『 自分自身の血肉 』を持って魂の(青い)世界を通り抜けて、異世界へと移動。


異世界に渡ってのち、血肉から自分のクローンを作ってその肉体へ転生したとの事。


魔女だから出来る、そうとうブッ飛んだ移動手段(やり方)だ。

・・家族としては、とても許容できないけどな。




「ヨランギ・・オマエはこんな何も無い場所で二千年もの間一人ぼっちで、ずっと死と再誕を繰返して───」


≪?≫




「 ソレがどうした? 」 とでも言いたげな、すっとぼけ顔のヨランギ。

・・コイツは・・。




「幹太姉ちゃん・・。

元が『三者を超えし者』さんを裏切ったり、悪い奴だったとしても・・アソコまで気持ち悪い奴になったのは・・」


「ああ。

精神が歪んでいったんだろうな」




『完全なる孤独』に人を閉じこめると、数日で発狂するという。

嘘だという説も聞くけど、二千年も閉じこめられりゃあな。


『三者を超えし者』はヨランギの変わり様に、おののいていた。


ソレは当時のヨランギの嘘や三者達の『恋は盲目』ップリが酷かったのも有るんだろうけど・・ヨランギの歪みが大きいってのも有りそうだ。


───男尊女卑などは、『最初のヨランギ』が出した政策だし、何一つとしてコイツを許す理由には成らないが。




≪魂は複製できないから、仮に肉体を幾ら作ろうと・・ボクは一人だけ。

だから正真正銘、今のボクが最後のボクだ≫


「・・・・」


≪どうしたんだい?

ボクを倒さなければ、また新しいボクを準備するよ?

っていうか、作っている途中だよ?≫




ヨランギが、手をヒラヒラさせて挑発してくる。


ヒラヒラさせたヨランギ手に・・この世界の『魔力』と『ヴォイド』が応えるかのように動く。


・・ああ、ココは『【空の口(ウィン)】の中の青い世界』。

その魔力もヴォイドも【空の口(ウィン)】の物。


我が子に応えて当然か。




≪もう・・充分だろう?≫


「・・は?」


≪キミはボクの調教に応えて、お母さんに魔力を送ってくれた。

『妻としての自覚』を得たキミなら、お母さんに頼んで魔女にしてあげても良い。

ソッチの妹も、オマケでね≫


「「 キモぉぉい!? 」」




なんであの戦いの顛末が、ヨランギの頭の中だとそんな結果に変換されるんだ!?

やっぱコイツの歪み具合は半端じゃない。




「母さんは、王族共に傷つけられた【空の口(ウィン)】の心を癒したくて色々動いた。

・・なのにオマエは何だ!?」


≪・・・・っ≫


「何もしてないどころか・・【空の口(ウィン)】の心の傷を、利用すらしてるよねぇ」


≪・・うるさい≫


「王族や魔女に利用されない為とか言いつつ、男尊女卑政策で女魔法使いが生まれないようにしたり・・【空の口(ウィン)】の心を癒す努力を欠片もしていない!」


≪うるさいっ!≫


「俺は! 母さんの妹を、俺の家族を、助けたかったんだ!

その為に、【空の口(ウィン)】に魔力譲渡をしたんだ!」


≪うるさァァァいっ!≫


「オマエなんか、家族じゃナイやい!」


≪うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいっ!≫




血走った、ヨランギの・・目。




≪ボクの・・ボクの努力を何も知らないで・・・・!≫


「知るかよっ!」


≪二千年前の戦いは、お母さんを魂の世界に避難させるため!

千年前の戦いは、人類を弱らせるため!≫


「・・・・」


≪現に今の魔王討伐隊とやらはキミ達だけ・・世界中の人間は、お母さんの対策もせずに『街破級の中身』に御執心!

だから簡単に洗脳されるんだよォ!≫


「世界のバカ共と、オマエが母親(空の口)の心の傷を癒そうとしないのとは、何の関係も無いだろうがァァ!

全力全開フルオーバー()大小自動追尾魔法クラスターミサイル!!!」


「豪! 震脚ッッ!!!」


≪ぐっ・・効かないんだよ!≫




───攻撃が、僅かとはいえ・・通った!?

転生直後ならパワーダウンが有るかも・・とは思ったけど。


皆の協力と、ヴォイドで無効化されない通常兵器なら、俺の100%で奴を圧倒した。


今の奴なら・・俺と颯太でもダメージを与えられる筈!




「颯太!」


「うん、幹太姉ちゃん!」


≪舐めるなあああああ!≫




やっぱ、ヴォイドが難敵だ。

でも、少しずつとはいえダメージを与えていっている。




≪ぐっ・・ぐぐっ・・・・!

卑怯者め、卑怯者め・・!?≫


「何がだ!?」


≪ボクは一人なのに、そんないっぱい(・・・・)で・・卑怯だぞ!?≫


「・・!?

コレが俺と颯太のキズナだあ!!」




≪いいえ、そうでは無いの≫




「「 !? 」」


≪───この声・・!?≫




・・ついさっき、聞いた記憶のある声。

『森の民の樹』から・・一人の少女が現れる。


俺達とヨランギ・・双方が、お互いの方法で助けようとした少女。




≪お母さん!?≫




───【空の口(ウィン)】。




≪駄目じゃないか・・ちゃんと寝てなきゃ!?≫


≪ごめんなさい、ヨランギ。

アナタたちを放っては置けなくて≫


≪・・お、お母さん?≫




足下はおぼつかないけど、確かな意志を持って・・コチラに歩みより、話しかけてくる。


前の青い世界で会った時の・・目が虚ろだった時の【空の口(ウィン)】とは完全に違う───たぶん、母さんが追い求めた・・魔王となる前の、森の民の【ウィン】だ。




≪初めまして・・では無いんでしょうけど。

ソラお姉ちゃんの子供ね?≫


「あ、はい・・秋原 幹太です」


「あ、秋原 颯太・・です」


≪ウィンです。

色々と貴女たちには、迷惑をかけたみたいね≫




『森の民』のウィンで有ると同時に・・魔王時の記憶が、心が壊れる前の記憶が───無い訳じゃあないみたいだ。

 

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