452『ぐねれっ!』
≪───ん・・≫
「う・・ウィン!?」
【空の口】が・・ゆっくりと目を開け───
≪・・ごめんね?≫
「は?」
「幹太姉ちゃ・・!?」
───俺の頬に【空の口】が手を伸ばし・・触れたかと思うったら意識が『 スゥッ 』と暗転していった・・・・。
◆◆◆
「───た───ぇちゃ───」
「──・・・・・・ううん・・?」
寝てたのか、俺?
何処で何してたっけ?
自然公園?
キャンプ場?
近所にこんな所あったっけ。
「───幹太姉ちゃん・・!!」
「・・・・颯・・太?」
「幹太姉ちゃん・・良かったあ」
なんか、目覚めたら・・颯太が目の前で泣いていた。
起きた俺の顔を見て、笑顔になったけど。
取敢ず、超可愛いので頭を撫でておく。
「んー・・何処だ、ココ?
俺達、どうなったんだ?」
見渡す限りは草原。
初めて異世界へと転移してきた、あの草原に似ている、かなあ?
「【空の口】が目覚めたら・・幹太姉ちゃんの頬っぺたを触って─── 「 ごめん 」 って言った途端に幹太姉ちゃんが光り初めたんだ」
「ごめん?」
あー・・なんか徐々に記憶がハッキリしだしたぞ。
「それで、僕とっさに幹太姉ちゃんに掴まって」
「そっか。
初めて異世界転移した時といい、何時も颯太には助けられているなあ」
「そんな───ううん」
そんな───
───助けられなかった───だろうか。
辺りには俺と颯太だけ。
すぐ隣にいた母さんや彩佳、他の誰も居ない。
二人っきりだ。
この世界・・地球とも異世界とも違う感じがする。
魔力とヴォイド、2つの物質が互いに消滅し合う事なく共存しているのだ。
俺の魔力に・・多少は反応しているけど、地球ほどじゃない。
「青い世界・・なのかな、幹太姉ちゃん?」
「青い世界には色々種類が有るらしいしな、たぶんそうじゃね?」
だから。
だから颯太は───助けられなかった───と、言いかけたのだ。
俺達だけが、『新しい青い世界』に来た可能性・・ソレは俺達が───『死んだ』可能性があるから。
「・・まあ、颯太と一緒なら何処でも良いさ」
「幹太姉ちゃん・・うん!」
皆の事は心配だけど、アッチの大きな問題は片付いた後だ。
皆ならなんとか出来るだろう。
俺達が死んだかもしれない・・ってのは、取敢ず今は考えない事にする。
・・考えても、しゃーないしな。
「んぅー、どうしようっか?」
「今なら犬ゴリラが百倍千倍の群で襲ってこようとヘッチャラだしな」
「僕もだよ!」
「ああ」
ちなみに、両腕の怪我は気を失う前と同じ。
「あの樹、彼処まで行こうか。
他に目印っぽいのも無いし、食糧も探さなきゃならん」
「持ってきた食糧は全部トラックに積んでるし・・ビタちゃんが居ないから野菜とかも頼れないしね」
「まあディッポファミリー傭兵団に習ったサバイバル技術と俺達の魔法なら、なんとかなるさ」
「よぉーし、レッツゴー!」
てな訳で、この草原で一番目立つ樹へ。
◆◆◆
「大きな樹だねぇ」
「そうだな。
そんな植物に詳しく無いけど・・【銀星王国】では見た事無い樹だ」
しかも、この樹───
「魔力が・・殆んど見えない?」
「異世界だと植物も使ってる、自己再生魔法を使ってないみたいだね」
「もしかしてこの樹・・」
≪地球産の樹だよ≫
「え?」
「この声・・」
頭上から聞こえた声。
つい最近、聞いた───
≪まさかキミ等まで、お母さんの中に入ってくるとはね≫
「・・ヨランギ!?」
「そんな・・幹太姉ちゃんが【皆の巫女】に成って、ヤッつけたのに!?」
樹のほぼ天辺、奴は・・ヨランギは、座っていた。
警戒する俺達を、意にも介さず澄ました顔で地面に飛び降りる。
コケろ!
≪森の民が住んでいた森の、樹・・だよ≫
「森の民の・・」
≪お母さんが転移した際、服に付いてた種子から育てた樹さ。
そういう意味ではボクのお姉さんだね≫
植物で『お姉さん』って・・何処まで女好きなんだよ。
ああ、そう言えば『イチョウ』なんかは『雄の樹』『雌の樹』が有るんだっけ?
「『お母さんの中』っつう事は、ココは『青い世界の中の青い世界』・・【空の口】の中か。
オマエは・・何故、生きている?」
≪キミ達の母親と同じだよ≫
「僕達の?」
≪キミ達の母親が、自分自身の肉体で自分自身を作ったように・・ボクもボク自身の肉体を作って、ボク自身に擬似転生を繰返しているのさ≫
擬似・・か。
転生っつうより、自分のクローンに取り憑くって表現の方が近そうだ。




