447『彼女は、姉より一つ上のステージへ。』
俺の魔力は、俺の魔法のキャパシティを遥かに上回る。
一つの魔法に込められる魔力は、ごく小さな物なのだ。
ソレでも無理して、一つの魔法に魔力を込めようとすると・・反動が、肉体へと返る。
・・この両腕が、その結果だ。
「・・俺自身の100%は、俺自身で出せない。
俺の100%を、みんなに託す」
『あ、アキハラ カンタ・・?
自分が言いたかった、『自分自身の為にチカラを使え』という意味はだな───』
「御嬢さん、幹太君にその辺の機微はちょっと無理が有るだろ・・っと!」
何故か、俺へと呆れた視線を向ける『三者を超えし者』に・・声がかけられ───ると、同時に銃声。
ヨランギに、弾丸の雨が降り注ぐ。
≪ぐうっ・・なんだっ!?
魔力の通わぬ武器だと!??≫
「幹太君、おまたせ!」
「崖下さん!」
俺が開けた、大量の『扉』のウチの一つから・・自衛隊装備で、銃を構えた崖下さんが出てきくる。
パソコンで見た時は気付かなかったけど・・最後に会った時と比べ、細かい傷があるなあ。
「【巫女】様!
初めてまして、赤人の妻です!」
んで、そのお隣さん。
・・うーん。
ううーん・・?
俺が『中』という単語に軽く悩んでいると・・次から次へ、扉魔法から自衛隊員や戦車やら色んな車両だのが出てくる。
「作戦内容、魔物の親玉の制圧開始っ!」
「【巫女】様の為に!」
「【巫女】様の為に!」
「【巫女】様の為に!」
自衛隊・・それに地球に残った【人土】達が、ヨランギへと現代兵器を向ける。
さすが一年以上、ラカ達魔女と大量の街破級相手に戦い続けている人達だ。
急な要請だというのに・・的確な動きでヨランギを翻弄してくれている。
「幹太・・!
あ、アンタねえ・・無茶しすぎよ!?」
「あら、幹太に付いてって異世界へと旅立った彩佳も十分無茶だと思うけど?」
彩佳に似た声。
「ああ!?
部外者が───って、ま・・まさか、アンタ・・!?」
「奈々さんなのですか!?」
「きゃーっ♡
ビタちゃん、久し振りぃ♡
いやーん、ビタちゃんと通訳無しで会話できるー♡」
彩佳の一つ年下の妹、奈々。
彩佳の体内にある【人茸化キノコ】の制作者で、本人も【人茸】。
「あ、アンタねえ・・今コッチがどうゆう状況か分かってんの!?」
「幹太と、地球側の【人土】達が繋げてた無線機魔法でバッチリとねー───って、あ・・彩佳!?
アンタ・・!?」
「あ?
何よ?」
奈々が、己の『一部分』を見下ろし・・彩佳の『一部分』と見比べる。
世界差による時間差で・・二人は同学年、かつ、肉体年齢では奈々の方が数ヵ月だけ年上になった訳だけど・・。
「アイヤー・・」
「なんで中国語!?
言いたい事が有るなら日本語で言いなさいよっ!?」
「え? 言ってイイの、幹太?」
「お、俺に振るなよ」
そんな、とてつもなく恐ろしい事。
≪ボクを無視するなあああ!?≫
「ゴーレム!?」
自衛隊や【人土】達の攻撃を受け止めつつ・・ヨランギが地面に手を着き魔物を、次々と生成。
一瞬・・【空の口】が街破級を産みだしたかのように、ヨランギも魔物を産みだしたのかと思ったけど・・飽くまで、魔力で動くロボットみたいなモンだ。
俺の大小自動追尾魔法の『自動化』『小火球の生成』みたいな、操作系魔法を土でやっているような感じ。
≪お母さんとボクの世界に、オマエ等は要らないんだよォ・・屑共!
・・死ねっ!≫
「ワタシだってねえ、【人茸】として向こうで魔女達と戦ってきたんだからぁ!」
ヨランギに負けじと、奈々も地面に手を着き魔力を送ると・・地面から、人間サイズの薄っぺらいキノコがわらわらと。
スライスされたマタンゴ?
「うぉっ!?」
「な、何よこの『ジャ○プ放送局』に出てきた『ハガキの妖怪』みたいなの!?」
「なんでコレ見て、そんな訳分かんない感想が出てくんのよ!?
イメージは『アリス』のトランプ兵だから!」
「いや・・アタシ、童話とか殆んど興味ないし・・」
ヨランギの・・『英雄』と『魔王』のチカラを持つゴーレム、一匹に対して数十のマタンゴが張り付く。
「い、以外と善戦してますわね」
「幹太が【巫女】に成ってくれたお陰よ。
前は、子犬サイズ十体前後が精々だったし」
≪ぐううっっ・・雑魚がああ・・!
数が増えたからって調子に乗るなあぁ!!≫
「【巫女】様の援軍はコレだけでは無いぞ!?」
『扉』からは更に、俺のワガママを聞いてくれた人々が出てくる。
アレは・・車の関係で、【人土村】に置き去りにしていた、二級戦力通知された『三種族』『【人茸】』、大進行により怪我を負っていた『ウェスト傭兵団』『ペリオラ傭兵団』の面々!
「銃器をかき集めてきましたから・・我等でも砲台くらいには成れます!」
≪ぐ・・まだだあっ!≫
更に増えた援軍。
明らかに、狼狽え始めたヨランギ。
「あらあらぁ~、なら耐えきってみなさいなぁ~?」
更なる声が、扉から聞こえてくる。
頼もしい声。
俺が最も頼りにしている声。
著しく心が傷ついた【空の口】を刺激しないため・・万が一の事を考えて【銀星王国首都】から連れて来れなかった人達・・。
「───一応、魔王討伐隊として来てンだ。
舐めンじゃあ無ェゼ?」
「一度はソラ殿の言葉に、付いてゆく事を諦めたが・・真の黒幕が居たと成れば迷わん!
私はカンタに忠誠を誓ったのだからな」
「全く・・ムセンキから、聞こえてくる不快な言葉の数々、現王族が屑ならば国父も屑だったとは」
「リャター夫人!
ディッポ団長!
イーストさん!
ガロス!」
みんな、来てくれた。
俺のワガママを聞いてくれた。
「私は───」
「母さん・・」
「私は・・また、失敗していたのですね・・。
このメンバーで妹の下へ行くのが最良だと思っていたのに・・」
「いやあ、まさかヨランギが復活するとか───あの時と状況が丸きり違うんだし・・母さんは間違ってないよ」
「そうッス!
悪いのは全部ヨランギッスよ!」
結果論ってヤツだ。
「よーしっ!
今度こそ、ヨランギをやっつけるぞ!」
颯太が、周囲を見渡し・・一瞬、淋しそうに笑ってヨランギへの攻撃に参加する。
「本当は理太郎くんも、コッチへ来たがっていたんだけどね」
とは、崖下さん。
「ジンイチロウさんとゲンタさんも、来たいと仰られていましたが・・」
とは、白百合騎士団の一人の弁。
「どうも、ラカ派・・ではなく、別の魔女の一派の生き残りが居るようでして・・【銀星王国】からは一部援軍が来れません」
「なるほど・・分かりました。
充分ですよ、皆さんも怪我なく守ってください」
ヨランギへ、攻撃が集中する。
ザレとビタと『三者を超えし者』の【三種族の巫女】による結界で、【空の口】の一部を魔力を封印し。
ヴォイドの効かない武器で攻める。
≪ちくしょう・・!
オマエ等・・オマエ等、たった一人のボクにこんな人数でなんて卑怯だぞぉ!≫
「知ったことか。
全力全開・大小自動追尾魔法っ!」




