443『こうゆう描写ばっかり出てきますが・・二人は仲良いんですよ? ・・ホントですよ?』
≪・・お母さんの為さ≫
「【空の口】の為?」
『お母さん』と言った時の、奴の顔は・・情欲のソレだ。
「ま・・マザコン!」
「・・い、いやあ・・幹太と颯太はマザコンだと思ってたけど───アレは流石に・・」
「俺達のは家族愛だ。
マザコンじゃ無い。
あんなのと、一緒にすんな」
「誰だって、子供は自分の母親が大好きだよぅ」
「誰だって、母親は自分の子供が大好きです」
「秋原家のそーゆートコ、もう良いから。
・・で?
『お母さんの為』って?」
≪・・・・。
屑共の手から、守るため≫
・・俺達の『ワチャワチャ』を、待ってたヨランギ。
待ってたっつうか───正確には、俺達の話を聞いていなかったな・・コレ。
自分の悪口になると、途端に耳が聞こえなくなるみたいだ。
親に怒られてばっかの悪ガキかよ。
たぶん、昔っからヨランギの周りにはコイツに腹立ててる奴ばっか居んだろう。
その人達から小言を言われ続けていくウチに・・身につけたスキルなんだろう。
『そ、そういえば昔から・・自分への悪口や、御気に入りの女への悪口は───都合善く聞こえなかったり、別の解釈をしていた』
「『三者を超えし者』も、だいぶ冷静になったみたいじゃん」
「つか、完全に婚約破棄する王子でしょ」
閑話休題。
【空の口】の中の『青い世界』にヨランギが居た理由。
屑共の手から母親を守る。
「屑共の手・・ソレは」
≪幼き、お母さんに手をだした者。
あんな穢れた血が・・ボクの中に入っていると考えるだけで、気が狂いそうになる者だ≫
「・・王族、か」
≪王族ではない。
唯の、薄汚い犯罪者だ≫
「ソレには完全同意するけどな」
確か伝承では───
「オマエは乳離れと同時に【空の口】と引き離されて、王族の教育を受け・・オマエを求めて暴れる【空の口】を、オマエが討った───と、聞いたんだが?」
≪天才のボクが案じた一計だよ。
ボクは赤ん坊の時から、母さんの全てを知っていた≫
「赤ん坊の・・時から?」
≪キミは・・食料に魔力を交ぜる事で、相手に魔力を渡す方法を知っているかな?≫
「ああ、知って───
・・そうか。
『母乳』もまた・・」
≪赤ん坊にとっての『食料』だからね≫
俺が母さんの腹に居た時から受けた魔力譲渡によって、母さんの『森の民』時代の記憶を夢に見たことが有った。
ひょっとしたら・・臍の緒から送られてくる血液もまた、胎児にとっての『食料』だからかもな。
≪お母さんは・・真なる子への愛情を持つ、凡百なるその辺の母親と違う方≫
「あ"ぁ んっ!?」
「母さんが・・なぁに!?」
ウチの母さんが凡百の一人だと!?
≪お母さんはその記憶の全てをボクに見せてくれた!
お母さん以外の母親なんか、とるに足らぬ凡百の一人でしかない≫
≪ヨ・・ラン・・ギ♡≫
「ウチの母さんなんか、幾度もの魂の旅を繰返してきたんだぞ!」
「ゴハンだって美味しいよ!?
野菜野草ならなんでも出来るよ!」
「幹太・・颯太・・♡」
「確かに、秋原家の食事って葉物が多いのよね・・漢方とかも出てくるし」
≪お母さんの読む絵本は、どんな物語も最高にステキだった!≫
≪・・あ・りが・・・とう♡≫
「母さんと共に習う源太ちゃんの秋原流甲冑柔術、母さんと共に行く父さんの仕事場見学・・どれも楽しかった!」
「源太ちゃんや父さんに居る、" 出待ち " って言葉を初めて習ったんだ!」
「アレは・・幹太が8歳の時でしたか」
「出待ちについて、次の日熱弁される8歳児のアタシの事も考えてよ」
≪お母さん以外の女性なんて所詮、お母さんの身代わりでしかない!≫
「母さん以外の女性・・は・・」
「幹太?
彩佳ちゃんは良く出来た娘さんだと思いますよ?」
「幹太?
オバさんは最高の母親だと思うわ?」
「───・・・・ヨランギ!
論点がズレてってるぞ!?」
「・・御姉様、逃げましたわ」
「逃げたッス」
「二人とも、良い人なのですよ?」
はい。
二人とも、良い人デスヨ?
・・何で急に、御互い誉めあうん?
怖えぇよ。
≪まあ、そうだね。
話を戻すと───赤ん坊の時から、完璧な記憶をお母さんから貰っていたボクは・・屑共に拐われた後も、その企みを理解していた≫
「なら何故!?
【空の口】と、長じたオマエ、二人なら世界征服だって出来ただろう!?」
俺の、その言葉に・・ヨランギは両手をダランと下げ───笑みを浮かべる。
≪別に世界征服───王だ皇帝だの地位なんかに興味は無いね。
ボクの目的は、『お母さんと二人だけの世界』さ・・。
まあ、魔女や美人は見逃してあげるけど≫
『ふ・・二人だけ・・?
ヨランギ・・どういう意味だ?』
≪そのまんまの意味だよ。
二人だけの世界。
キミ達、ボクの妻はゴハンを作ったり掃除したり抱かれたり・・ボク達親子に役立つのが役目さ≫
なんだそりゃ!?
コイツもやっぱ男尊女卑主義かよ。
秋原家は基本・・秋原家の家事を家族全員でやるので、その考えは理解できない。
≪屑が色々と企んでいたようだからね・・。
『この世界における』お母さんの救出を諦めて───お母さんの心臓に剣を突き立てた≫
【空の口】の、心の傷とかより・・コイツの螺曲がった根性の傷の方がヤバそうだ。




