440『スーパー腹ペコぷりんせす。』
「( ザレ、無線機は繋がっているな? )」
「( は・・はい、御姉様 )」
実世界と時間の流れが違う青い世界。
無線機魔法で、世界を跨ぎ繋げる事により『俺達』『銀星王国首都』『日本』の時間差をなくせるらしいのだ。
「ウィン」
≪ソラお姉ちゃん≫
母さんが、【空の口】へと近づく。
『ウィン』・・それが【空の口】の本名なのか?
≪わたしのごはん・・もってきてくれたのねぇ≫
「・・ウィン?」
≪おなか、ぺこぺこだよぉ≫
「ウィン・・」
ニコニコと笑顔の【空の口】。
訝しげな母さん。
確かに、第一声が『ごはん』では・・状況的に相応しいとは思えないよな。
「ウィン、むす・・娘の幹太です」
≪ごっはん、ごっはん♡≫
【空の口】は・・母さんの話を聞いているようで───聞いていないっぽい。
「( か・・カンタさん、どう思うッスか? )」
「( ・・少なくとも、邪気は感じられないよな? )」
「( 感情レーダーで悪意は見えませんわ )」
「( 善意も見えないけどな )」
「( んぅ?
本能に任せてる・・のかなあ? )」
颯太の言葉はよく分かる。
『本能』は、かなり近い表現に思えるな。
「( なんだか、懐かしい感じがするのです )」
「(【空の口】は【人花】の原形たる『森の民』だからかな? )」
母さんも、魂は森の民だけど・・肉体は日本人だからな。
言ってみりゃあ、混ざり物が有るようなモンだ。
≪もう良い?
お腹すいたから・・食べちゃうよ?≫
「ウィン!」
表情はニコニコとしたまま・・だけど纏う雰囲気が変わる。
圧力が変わったというべきか・・!
「私にプレッシャーをかけるパイロットとは・・一体何者なんだ・・!?」
『あっ・・ずるい!?』
余裕あるなあ・・。
いやまあ、虚勢だっていうのは分かるけど。
「母さん、下がって!」
「幹太!?」
「魔力譲渡!」
≪ふぁあん♡≫
「【空の口】・・!
母さんはオマエを大事に想っていたんだぞ!」
【空の口】が受けた傷は、『魂』の傷と『心』の傷。
魂の傷は、時間による癒し ( たぶん自ら産みだす分の魔力 ) で癒すか、周囲から吸収した魔力で癒すしか無い。
周囲の魔力とは・・普通なら空気中に含まれる魔力。
だけど『魔法使い』か『魔法使い級』に魔力を保持する者なら、誰かに魔力を譲渡できる。
(【デロスファフニール】戦で、俺の魔力を受け続けた女学園生徒たちが・・俺に魔力譲渡───うっ!? あ、頭が・・!? )
受けとる側が『人間』なら・・与える側の種族は何でも良い。
受けとる側が『魔女』なら・・与える側は、『女魔法使い』しか駄目。
『男魔法使い』が駄目って事は無いが、魔力譲渡の際に余計な感情が流入してくるらしい。
ソレは心の傷が深い、【空の口】には致命傷に成りうる。
俺なら。
女魔法使いである俺なら。
【空の口】を癒す意志のある俺なら。
「正気を取りもどせ、ウィンっ!!」
≪あ、ああ・・あ・・ああっ!≫
ニコニコとした表情が、剥がれてゆく。
コレは・・この感じは・・!?
「───!?
だ・・誰だ、オマエ!?」
「か、幹太・・?」
「カンタさん?
誰に言ってるッスか!?」
他の人間が使う魔力譲渡は、相手に『ただ』魔力を送りつける物。
けど・・俺の魔力譲渡は元々【スライム】から受けた魔力吸収を元にした物。
他生物間の魔力移動に長けた【人土】が使う魔力譲渡。
加えて、【空の口】が使った洗脳魔法を千人以上魔力付与料理で癒し続けたんだ。
ハッキリと分かる!
「【空の口】の中に・・誰か、別人が居るっ!」




