437『色々理由は有りましたが・・一番のキッカケは、失敗した料理を「美味しい」と、笑顔で食べてくれた事です。』
「おおっ、ゲンタ様!」
治療所代わりのキャンピングカー。
このまま怪我人達は、【銀星王国首都】内の病院に使える建築物へ。
源太ちゃんは秋原家で自宅療養。
ザレの対なる【人狼の巫女】を宿す今の源太ちゃんは・・有る意味、長よか敬われている。
・・つーか連戦の緊張やら生命の神秘やらで、テンションが可笑しくなってて───
源太ちゃんが『生け神様』扱いされているっぽい。
( ゲンタ『殿』→ ゲンタ『様』とか。)
「やっぱ源太ちゃんと赤ちゃん・・安定期前から戦っていた弊害は出ていたらしい」
「なんとっ!?」
「御姉様、ゲンタ様と赤ちゃんは・・」
「今は無事だ。
源太ちゃんのチート級自己再生魔法と、その赤ちゃんの自己再生魔法だから」
言いつつ、俺の腕を見せる。
初めてこの世界へ来た時、犬ゴリラ相手に自爆。
自らの魔法で、両腕を炭に変えてしまい。
ソレから・・だいぶ腕の形が分かるように成った。
今は若干『全力全開』の後遺症で、血は出ているが。
「確かに、貴女方の自己再生魔法は・・我等【人狼】をも上回るが───」
「うん。
長が危惧する通り、場合が場合だからな・・源太ちゃんが心配なのは分かるけど安定するまでは───源太ちゃんへの見舞いを大幅に制限させて貰う」
「そんなっ!?
・・いや、仕方あるまい」
「コレを破る者、秋原家を敵に回す者・・として、徹底してくれ」
ザレや【人狼】の長が息を飲む。
俺達ならヤるって理解しているだろうし。
ザレや、この場の人達を信用してない訳じゃあ無いけど・・ね。
「わ、分かりました。
皆に徹底させます」
「源太ちゃんが落ち着きしだい会えるんで、もうちょい待っててほしい」
源太ちゃんや赤ちゃんは心配。
コレは紛う方無く事実。
・・だけど、もう一つ。
未だ茫然としている源太ちゃんは・・何を口走るか分かんない。
ソレこそ 「 何故、元男なのにぃ!? 」 とか言いかねないからなあ。
肉体的にはモチロン当然なんだけど、精神的にも安定しないウチは、事情を知る人間以外に任せられない。
「ついでに、【空の口】の所へ行くメンバーは【巫女】と魔女とその手伝いだけになった」
「【空の口】が、『唯の』敵では無いとなった今・・致し方あるまいな」
「追い出しといて、図々しい御願いだけど・・俺達の居ない間、秋原家や病院周辺の警備を頼む」
「今や・・アキハラ カンタ、貴女も我等が【巫女】。
遠慮なく命ぜよ」
「有難う」
【人土】【人花】にもほぼ同じ事を通達。
皆、最後の場に居られない事を悔しがりつつも納得してくれた。
「幹太さん、【人土村】から後続のトラック・バス・キャンピングカーに乗った第二陣の三種族が来ているらしいよ」
「現状は伝えているんですよね?」
「もちろんさね」
「じゃあ【銀星王国首都】本来の住人が【青い銀星王国世界】に居るウチに、【銀星王国首都】を丸ごと乗っ取っちゃって下さい。
ガロスやガロス騎士団はその辺納得してますよね?」
王族共は・・忠誠心の高い彼等騎士団を、使い捨ての駒にしちゃったからな。
一般都民は、英雄ヨランギ ( というか、その親の王族 ) の言いなりで男尊女卑主義者共。
被害者ならともかく、加害者から家・土地・財産を奪う事に抵抗はない。
「分かったよ。
騎士団も使うんだね」
「山柄さん達三種族の長達と、ディッポ団長達傭兵団団長達とリャター夫人とで、適当に御願いします」
「我等が【巫女】の御心のままに」
◆◆◆
「ディッポ団長、という訳なんで」
「ああ、悔しいがな。
しゃあねェよ。
・・ジキアは好きに使え」
「任せるッス!」
山賊顔なせいで、初めて見る人は信じてくれないが・・ディッポ団長は知性・品性・身体能力に優れる格好いい人だ。
こんな頼れる人はそう居ない。
・・ソレでも。
今から行く場所へは連れていけない。
「【人土村】を出発した時の約束を覚えてるかい、御姉チャン」
「え?」
「御姉チャンは最強でも・・まだ小娘、ガキなンだ。
無茶だけはすンな。
・・死ぬんじゃ無ェぜ?」」
「・・覚えていますよ。
大丈夫。
思いっきり長生きしてやります。
当然みんなにも長生きしてもらいますから!」
「───おう」
短い返事だけを返し、去るディッポ団長。
ディッポ団長は格好いい人だもんな。
瞳に光るものが見えたのは・・気のせいだ。
「・・・・さて。
行くか、ジキア」
「はいッス」
◆◆◆
【空の口の巫女】、俺。
【巫女のスペア】、颯太。
【空の口】の魂の姉、母さん。
【人茸の巫女】、彩佳。
【人狼の巫女】、ザレ。
【人花の巫女】、ビタ。
二千年前の英雄、『三者を超えし者』。
俺の魔力付与料理の影響を色濃く受けたジキア。
このメンバーで【空の口】の元へ。
唯一、リャター夫人の付き合いで車の運転を修得したザレの運転により、父さんの車で移動。
「───で?
ジキア君、貴方は『大きな魚』ですか?」
「さ・・『サカナ』??
は、分かんないッスけど・・カンタさんの為なら、何でも出来るッス!」
「では、生ピーマンを食しなさい」
「ひいいぃぃぃ!?」
うむむ・・コレが、『嫁( ? )姑戦争』か。
後部座席で並んで座る母さんとジキアが、剣呑な雰囲気を纏う。
「母さん・・」
「秋原家に好き嫌いする者は許しません」
「いやいや、俺にだって苦手なモンぐらい有るよ・・」
「苦手と嫌いは違います」
・・母さんの目が座っている。
颯太の場合、理太郎くんには手が出せなかったから・・かなあ。
「( アタシが椎茸が駄目なの、バレて無いわよね!? )」
『昊氏・・あまり戦意を挫くのは・・』
「ジキア君は、この為に呼びました」
「言っちゃた!?」
こ、コレが前世で魔王と呼ばれた御方の暴威か。
「そ、そりゃこん中じゃオレが一番弱いッスけど!?」
「男なら男らしく、しなさい!
幹太が欲しくないのですか!?」
「欲しいッス!」
「なら食べなさい!
生き汚いぐらい逞しいのが、調度良いのです!!」
まあ、母さんは母さんなりにジキアを強くしているんだろう。
たぶん。
おそらく。
( ディッポ団長も、ジキアに似たことを言っていたし。)
『自分は一番後ろで漫画を読んでいる。
付いたら呼───』
「・・『三者を超えし者』さん?
その本・・幹太の部屋の本ではありませんか?」
『え? あ・・か、借りた・・ました』
「幹太の部屋に入り?」
『え? あぅ・・あ?』
「僕達が寝てる間に、部屋に入ってたんだよ!」
『あ、アキハラ ソウタ!?』
ジキアと共に、『三者を超えし者』まで・・母さん相手に縮こまる。
「あ、アタシの知ってるオバさん・・もっと優しかったんだけど」
「き、緊張してんだよ・・。
たぶん。
おそらく」




