435『チベットスナギツネみたいな表情の秋原家( -1 )。』
元434話を、434・435話に別けました。
内容は変わっていません。
「げ・・源太ちゃんが───に、妊娠してるっ!!!」
「「「はああぁぁぁぁっっ!!!?」」」
改めてクチに出して言う事で・・改めて、周囲に動揺が走る。
慌てる人。
嘆く人。
ニタニタする人。
「んぅ? んぅう??」
「お、おおお御お義と父とととうささんんん!!?」
父さんが、日本時代の源太ちゃんの呼び方に成っている。
成るよなあ・・。
カミカミで、誰も 「 御義父さん 」 とは聞こえてないけど。
聞こえた所で、そもそも『妊娠』という事実の前には・・父さんが御義父さん呼びしようが、誰も気にしないけど。
そんだけのパニックだ。
このメンバー・・三種族や傭兵団の中には、源太ちゃんに惚れていたっぽい人は居る。
そうゆう人等は 「 嘘だろォォ!? 」 と叫んだり。
「─────────」
あーあ・・源太ちゃんが呆けを通りこして、固まっちゃっている。
「かかか、幹太?
ど、どゆこと?
Do you knowって、どーゆーの??」
彩佳が、古文書レベルのボケをする程にパニくっている。
「あらあら、まあまあ~♡」
リャター夫人は嬉しそうだ。
不幸な少女を人生をかけて救っているからその分、幸福な話が好き・・いや、関係ないな。
ただ、恋愛話が好きなだけだ。
「御相手はザラクスさんかしらぁ~♡」
「ザっ!!?」
一瞬で反応し、真っ赤になる源太ちゃん。
・・まあ、そうだろうなあ。
「ししししし知らん知らん知らんっ!?
だだだだ誰が、あんなデカイ図体と、無駄に知識豊富な所と、変に気ぃ回せる所と、子供を助ける為に一人で【にいずほっぐ】に戦いを挑む所ぐらいしか、取り柄の無い男に抱かれるか!?」
取り柄・・いっぱい有るね。
「・・あの、御姉・・様?」
「な、何? ザレ?」
「ワタクシが・・【人狼の巫女】かどうか云々の話の時───
確か、【人狼の巫女】候補は他に居る・・と」
「ああ、そういやあ・・そんな話も有ったな」
・・って事は・・??
母さんが、「 閃いた! 」 って顔で言う。
「想像力だけで【皆の巫女】になれる幹太ならば、【人狼の巫女】だけ元のシステムに出来るのでは?」
「んー・・??」
理屈では分かるけどさ・・。
割と無茶を言う母さんの言葉に従い【人狼の巫女】の事を色々想像。
「えーっと・・。
一時的に【皆の巫女】から【人狼の巫女】の全権利を『覇者』が本来想定した形でザレに戻───」
「「「 うぉっ!? 」」」
想像の完了と共に・・【人狼】達が騒ぎだす。
「かっ、感じるぞ・・【巫女】の気配だ!
ザレ様以外に、ゲンタ殿から・・いや、ゲンタ殿の中から【巫女】の気配を感じるぞっ!」
「へぅっ!?」
俺達と【人狼】は元々、敵として出会ったんだよな。
源太ちゃんが元長の息子ザラクスさんと縁が有った事から、源太ちゃんには【人狼】達の【人土村】における保護者のような役割を担当して貰っていた。
反省してからは、強さを信奉する【人狼】は源太ちゃんをリーダーとして認めていたのが・・。
「ゲンタ殿・・お主は、いや貴女は貴女こそは・・!」
歴代の【人狼の巫女】は、長の娘として産まれてきた。
【人狼の巫女】を宿すという事は───
「いやいやいや・・流石にもう言い逃れ出来ないよ。
吐いちゃえば楽になるよお?」
「好きな相手に抱かれる・・恥ずべき事じゃあないわぁ~♡」
よたよたと、半泣きで後退り始める源太ちゃん。
まるでイヤイヤする赤ちゃんだ。
ちなみに・・颯太とビタは、白百合騎士団がどっか連れてった。
「げ・・ゲンタ殿。
も、もしやザラクスが不義理でもはたらいたか!?
ならば我等【人狼】一堂は何としても───」
「ちっ、違うんじゃ!
アレは・・・・」
「「「「「 アレ? 」」」」」
「ぐうっ!?」
源太ちゃんは父さんに助けを求める視線を送るけど───
「御義父・・源太ちゃんさん」
首を横に振る父さん。
そりゃそうだ。
たぶん、こん中で一番気に成ってんのは父さんだしな。
「て───」
「て?」
「テリトリー型の・・儂がコッチの世界へ来て初めて苦戦した、パワーより特殊能力に特化した魔物の群を苦労して倒した晩───
ついつい、酒が進んでのう・・」
源太ちゃんは酒はあまり得意じゃない。
婆ちゃんは飲む人だったので、付き合い程度には飲むんだけど・・。
そんな源太ちゃんが浴びる程飲むなんて───
「あ・・朝、起きたら・・その。
───す、素っ裸になっておった」
「「「「「 ・・・・ 」」」」」
颯太とビタだけじゃなく、彩佳にも聞かせたく無い。
彩佳は・・顔を赤くして、鼻息が粗いけど。
「あ・・慌てて服を探そうと、辺りを見渡したら───」
「・・隣にザラクスが、居たのだな」
あの、【人狼】の長さん。
せめて、真顔で問わんといて。
「眠るザラクス殿を、慌てて部屋から蹴とばして・・後は無かった事に───」
「「「「「 成らないよ!!? 」」」」」
ついに、源太ちゃんは体操座りの姿勢から動かなくなり・・辺りには、源太ちゃんのすすり泣く声しかしなくなった。
・・・・。
ザラクスさんの性格を考えるとなあ・・。
無理矢理ってのは無さそうだなあ。
源太ちゃんの酒を考えるとなあ・・。
好きな人を『食っちゃった』可能性の方が高いなあ。
結局、源太ちゃんは父さんに連れられ・・医者の所へ。
何らかの検査の最中、怪鳥の如き怪声をあげ・・俺達の『【空の口】の中への移動』を見守る事となる。
「・・え?
こんなオチで良いの?」
「お、オチとか言うなよ」




