432『マザコンと思われない為に。』
「王族の端くれだった者が、もたらした情報では───」
ザレが、【青い銀星王国世界】にて王族達に襲われた時に聞いた台詞。
俺と颯太が、転移してくる場所。
【人狼】の里の位置。
【人花】の里の位置。
【ニーズホッグ】の卵の位置。
・・等々。
「か・・幹太が此方に転移してきたなら、出迎えて色々謝ろうとしていた───といった話を、【空の口】と」
「【人土】は全滅していると思っていました。
ですので、【人狼】と【人花】は何とか仲間にすべき───といった話を」
「体内に『青い世界』を持つ『街破級』を欲していたので、確実に居場所が判明している【ニーズホッグ】の産卵場所を───といった話を」
母さんが、ダラダラと汗を流しながら事情説明。
・・・・まあなあ。
「も、申し訳有りません!」
「・・故意で無い以上、我等は文句は言えん」
「【人花】も【人狼】に同意します。
悪いのは貴女では無く、王族でしょう」
「・・・・有難う御座います」
シュンとする母さん。
実の母だから庇う、という訳じゃないけど・・言ってみりゃあ、
『盗聴機に気付かず、色々喋った』
ようなモンだし。
盗聴機バスターみたいな番組で、極まれに
『盗聴されるかもしれない状況を作る方が悪い』
って言ってる業者が居たけど・・悪いのは『盗聴する側』だよな。
青い世界の中の青い世界・・機密性の高い場所での会話───その為の技術を作った王族だから『盗聴できた』んだ。
「ラカ達が、母さんの裏切りを予見してなかったって事は・・魔女ですら会話は聞けなかったんだしな。
───王族の執念の方が異常だよ」
「「「 はい 」」」
・・とは言え、【人狼】【人花】は大切な人達が王族に殺されているし・・『許す事』と『納得する事』は、また別だろう。
盟主の母親・・ってのも善くないし。
「他に重要な話はして・・」
「・・無い、と思います」
「───という訳で・・今は。
今だけは『三種族の使命』を優先します」
「・・うむ」
「分かりました」
人命に償いは出来ない。
今は、誠意を見せるだけだ。
「まず、整理させて欲しいッス。
【空の口】は・・伝説に語られるような、『理由なき殺戮を繰り返す』悪の存在では無いんスよね?」
「被害者、というのは居るのでしょうが・・飽くまで『きっかけ』は、王族の先祖に奪われた我が子を取り返そうとしただけです」
傭兵の流儀で言えば『仲間に手ェ出された』みたいなモンだ。
死すら生温い罰を与えねばならない。
「千年前も・・ラカ達と人類の争いに巻き込まれたッスか」
「当時の【空の口】は・・魔女達の言う『安寧派』です。
人類側は・・まあ王族は二千年前のクチ封じ的な物もあったようですが」
魔女側は人間が憎い。
人間側は・・三種族は使命を『【空の口】封印』に、囚われすぎた。
王族側は・・【空の口】の政治利用目的が見え隠れする。
俺も日本で政治利用されかけたしな。
「そして現在・・【空の口】は、【空の口の巫女】であるカンタさんに過去の心の傷を癒されつつ有る・・んスね?」
「すでに御存知かもしれませんが・・魔力譲渡には、遺志の伝達能力が有ります」
「俺達はソレで、傷付いた人々のトラウマを消してきたよ」
「まさしく。
私が【空の口】にやりたい事はソレです。
私は・・妹を、【空の口】ではなく森の民だった頃のあの娘に戻してあげたい」
「成功率は高いんですの?」
「・・・・心の傷の深さ次第です」




