431『ドジっ娘。( 世界滅亡レベルの。)』
〔幹太ちゃん、コッチに帰ってきてくれないか?〕
「魔女と【ファフニール】退治。
復興の手伝い。
俺が悪いんじゃないと、半テロ組織共に見せつける。
・・ですか」
〔君が帰ってくれば、気運が高まり・・奴等を逮捕出来る〕
半テロ組織の大半は【アジ・タハーカ】の被害者と、【アジ・タハーカ】で金儲けしようとして失敗した者と、【アジ・タハーカ】で権力を失った者達。
ソレ以外・・大多数の日本人は、世界との現状を認めているそうだ。
警察の首は、当時とだいぶ入れ替えられているそうだけど・・落ちた警察のチカラに合わせて自衛隊も逮捕権、というか捕縛権はあるらしい。
・・でもなあ。
「言った通り・・コッチでラカ達と戦ったのはついさっき───
まだ【空の口】が残っているんです」
〔・・そうか〕
【空の口】と母さんと・・。
倒す以外の道が見えた事は言わなかった。
・・まだ、どうなんのか分からんしね。
「・・・・。
山柄さん、原子操作魔法のデータを日本の【人土】に渡して下さい」
「分かったよ、幹太さん」
〔原子操作魔法?〕
俺が使う、汚水から超純水を作る魔法を【人土】達が研究して出来た魔法。
大規模な施設や薬品・道具が無くとも錆びた金属を綺麗な金属に戻したり、金属やコンクリート等を変形・接着・加工したり。
早い話が、ゴミからその場で物を作る魔法だ。
〔す、凄いじゃないか!?
世界がグチャグチャに成って・・ゴミや廃材だけは大量に有る!〕
「その他、山柄さんの方で研究している俺の魔法も基本全部、データを送って下さい」
「そのテロリストや他国、魔女とかにデータが渡ったら・・どうすんのよ?」
「【人土】以外に魔法使いは居ないんだから、別に良いさ」
「アッチの復興優先って訳ね」
「ああ」
仮に、渡ったデータで俺の魔法の対策が立てられたとしても・・そんときゃ新しい魔法を作りゃあ良い。
〔───彩佳?〕
「・・え?」
原子操作魔法は向こうで相当有用な魔法であり、興奮が伝わってくる。
バタバタとし始めて暫く・・彩佳と似た声が聞こえてきた。
「・・まさか、奈々?」
〔ええ、そうよ〕
彩佳の一つ年下の妹、奈々の声だ。
「無事だって、聞いてはいたけど・・良かったわ・・。
・・パパとママは?」
〔二人も無事よ。
・・半テロ側の流す情報を鵜呑みにしてるけどね〕
「・・そう」
進学校に通う奈々だけを可愛がり、彩佳に対しては育児放棄気味のあの両親じゃあな。
視野の狭い人達だったし・・彩佳の手前、言わなかったけど薄々分かっていた。
・・たぶん、彩佳も。
「ナナさん!」
〔あらっ!?
ひょっとして・・ビタちゃん!?
久しぶりぃ!〕
奈々と仲良かったビタが、無線機に駆け寄ってきた。
【空の口】 ( 、もしくは、魔女か王族 ) が転移させた魔物から洗脳キノコに寄生された奈々と、奈々からキノコを取り除いたビタ。
その縁で二人は仲良くなった。
日本に居たころは、奈々の豊富なジェスチャーで何となく二人は会話していたけど・・さすがに無線機だとな。
水入らずで会話したいんだろうが、通訳つき。
・・彩佳はソッと離れる。
「良いのか?」
「まあね。
奈々も黒キノコで再構成されて、アタシ達は仲直りしたけど・・然りとて奈々とビタ程は───まだちょっとね」
「そうか」
彩佳がそうだと言うのなら。
ソレ以外は話題にしないのなら、俺もクチにしない。
〔───・・うなのよ。
だから今は私の方が彩佳よか年上だから、彩佳に私の命令聞けっつっといて〕
「ちょっ・・アタシ達、誕生日は一週間違いなんだから、まだ同い年でしょ!?」
・・と、言ってるそばから奈々の言葉にキレる彩佳。
二人はほぼ一年調度違いの産まれだから、そうなるのか。
〔半年ちょい年上ですぅ。
私、医療班でちょっとしたモンなのよ?〕
「医療班?」
「ナナさんは、体内で様々な薬用毒用キノコを持っているのです。
私と同じ仕事なのですよ!」
彩佳と同じ、人間を【人茸】化するキノコを受け入れた奈々。
( というか、キノコは奈々が作った。)
ビタの植物全てを操る【人花】と比べ、【人茸】はキノコだけしか操れない下位存在っぽいけど・・奈々は才能だけ【人花】にも引けを取らない事をやっているらしい。
〔ゆくゆくは、製薬会社でも作って製薬業界のボスってのも悪くないわね〕
「はあ」
〔彩佳は製毒業界のボスになれば良いわ〕
「なんでアンタは救世主みたいなポジで、アタシは悪魔みたいなポジなのよ!?」
〔アンタに渡した超猛毒キノコのデータは紛失しちゃったから、もう作れないのよ。
いや~、辛い辛い〕
「がああぁぁぁ!!?」
「僕、理太郎君とちゅーしたんだから!」
〔そんなん、私達は何時だって出来るわ。
理太郎ぉー、ちゅー♡〕
「がああぁぁぁ!!?」
「そ、颯太!?
ちゅーとは何ですがああぁぁぁ!!?」
〔えっ?
颯太の姉ちゃ───お、オバさん!?〕
仲良き事、善き哉。
「よくこんな惨事を見て、ンなこと言えるな」
◆◆◆
皆が落ち着いて。
キャンピングカーやバスを使って簡易作戦会議室を作り、相談。
「正直、世話になった人も居るが・・私は【アジ・タハーカ】襲来日から出立日までの言動で、日本人を見限った所はある。
挙げ句が半テロ・・。
此方で苦しむ仲間に【空の口】を押しつけたまま日本に帰るのは気が進まない」
「俺は、まんま父さんの意見に賛成かなあ。
アッチの【人土】、崖下さんや奈々にあの時の番組ディレクターさん達には悪いけど」
「幹太さん、【人土】は一切気にする必要は無いよ。
日本は安全だと言うなら、そうすべきだと思うがねえ」
「我々は元々、アメツチの全てを【巫女】様が支配すべきだと思っていますので」
「多少、人類が減った方が統治しやすいかと」
統治て・・。
対魔物最強存在である【人土】が、俺の名前を連呼しながら『こーゆー事』言うから『反・俺』みたいな連中が多いんじゃなかろうな?
まあ腹立つ連中だし良いんだけど。
「僕は・・僕は帰り───
ううん。
早く【空の口】をどうにかして、平和をもたらさなきゃね!」
「颯太・・」
颯太の気持ちも分かるけどなあ。
・・いや、颯太自身が一番分かっているか。
だからこそ感情より、理屈を取ったんだし。
「分かった。
速攻解決しようぜ、颯太」
「うん!」
「幹太の無線機魔法で『彼方』と『此方』が繋がる今なら、時間のズレは無いはずです」
コレ以上、手遅れになる事は無いっつう訳ね。
「今こそ、『青い世界』の中の『青い世界』へと行きましょう」
「青い世界の・・中?」
「【空の口】の魂の中に、街破級の如く更なる青い世界が有ります」
「【空の口】の中・・」
「私は・・颯太の改造でチカラを使い果たし、動けない間はソコで【空の口】と作戦会議をしていました」
【空の口】の中で作戦会議・・ソレって───
「あーーーっ!?
【空の口】の寝言が予言とか何とか、王族が言ってたのって・・!?」
「・・・・」
母さんが俺の言葉に、ポカーンとしつつ・・言葉を紡ぐ。
「・・たぶん、私との会話ですかね」
たぶんじゃないと思いますが。
Myマザー。




