420『フッ・・それは残像じゃない。 本物だ。』
「ラカさんが、赤ちゃんの俺を救った」
≪そうだよ≫
「でも───
俺の味方じゃあ・・無い」
≪・・・・≫
胡散臭さMAX。
母さんが
「【空の口】だけが悪い訳じゃない。
黒幕が居る」
と言って隠れた。
胡散臭さ、更に倍率ドン! だ。
( 元ネタ知らんけど。)
≪・・確かに【空の口】様へ魔力を捧げる過程で、人間としての君は死ぬ。
だが魔女に産まれ代わる以上───≫
「ソレ以外だ」
≪・・なに?≫
今この場に『赤ちゃんの俺を殺す派』が居らず『母さんに任す( と言いはる )派』のみ。
その理由は。
「メーラ」
≪!≫
『!』
俺がポツリと言った『メーラ』という名前に、『三者を超えし者』を含めて魔女達が反応する。
王族の端っこに位置する女性から産まれた『子』にして、人間に転生した『魔女』の名だ。
魔女達はザワめき始め───ラカさんの目は、スウッと、細まる。
カマカケでは在ったけど・・当たりか。
「王族が青い世界を生身でウロチョロする内、妊婦だった女性に宿った魔女だそうだけど・・この話を聞いてた時から、違和感は在ったんだよな」
「動物的カンね。
ソレ以外は、異様に鈍いのに」
彩佳から謎のツッコミ。
誰か別人のことを言ってる。
俺は鈍くなど無いのだから。
「王族に都合が良すぎんだよな」
≪・・・・≫
「『三者を超えし者』。
彼女は、『世間を恨む者』『新しい人生を楽しむ者』『安寧を求める者』のドレなんだ?」
『・・・・。
世間を恨んでいた。
【空の口】と共に、人類と戦争をしていた』
「ラカさん。
彼女は、『母さんに任す派』とは別の派閥だったんじゃないのか?」
≪・・彼女が転生してからは、連絡をとっていなかったからね。
彼女が『赤子の君を殺す派』だったかは───≫
「ソレ以降、王族に渡った魔女達は?」
≪・・・・≫
ラカさんが、黙る。
魔法使い・魔女の間で、嘘が通用しない以上・・もはや 「 知らない 」 とすら言えない訳だ。
「 沈黙は金 」なんて言葉が有るけど・・その沈黙は、な。
「オマエ等が『下劣』と呼ぶ、王族に・・仲間を売ったんだな?」
≪貴様!≫
あそこの魔女、さっきから≪貴様!≫としか言ってないよ。
ディッポ団長が腰に手をやり、盛大なタメ息をつく。
「俺ら傭兵にゃア、裏切り者を絶対に許さねェっつう掟が有るがよう・・」
≪奴等が裏切り者なのだ!≫
「だからその『裏切り者』が、どンな『裏切り』をヤったか、言ってみるンだな」
≪貴様!≫
≪待て・・今は───≫
ラカさんは・・一応止めようとした、が───貴様魔女が、ディッポ団長めがけ炎を、飛ばしてくる。
≪死───≫
「防爆衣魔法。
アンド、魔力吸収」
炎を、消す。
ついでに、貴様魔女も消す。
≪なっ・・!?≫
≪消えた!? あ、アレが・・!?≫
「俺の仲間を狙ったんだ。
反撃は当然だろ?」
ディッポ団長を狙った魔法は・・少なくとも、村破級を一撃で殺る魔力が込められていた。
俺の仲間を『殺すつもり』で撃った。
母さんの懸念の正体は、未だ分からない。
・・だけど、もうイイ。
「───オマエ等は、俺の敵だ」
≪よ、よくも我等の仲間を・・!≫
ラカが逸る仲間魔女を手で制し、俺達の前へ出る。
・・全ての表情を消して。
≪・・今のは、此方が悪い。
けどね。
仮にも世界の被害者たる我々を消す事に、そんなにも躊躇いは無いものかね?≫
「今まで、俺のエゴで【空の口】の洗脳を都合よく上書きしているんだ。
出来る限りは助けても・・敵まで助ける気はない」
≪そうか・・残念だ≫
魔女たちが、離れつつ散開する。
≪まあ・・どっちみち、君は死ぬんだ。
【空の口】様に殺されるか、我々に殺されるか、の違いだよ≫
『ラカ』
≪・・っ!≫
ラカを、呼び止める声。
≪ソラ・・≫
「母さん・・」
隠れていた母さんが、ラカを呼び止める。
≪我々の加勢に戻ってきた───
訳では無いよね≫
「ええ」
≪君は・・そうか、ハナから君は我々を疑っていたのか。
・・何時からだい?≫
「私が、此方の世界へと来て・・貴女と話した時ですよ、ラカ。
貴女・・幹太だけでなく、【空の口】も殺す気でしょう?」




