419『魔女の天丼は弱いなあ。』
昨日入ったお風呂の貯水槽に、「ネズミの死体が入っていた」という話を聞いて、未だにショックを引きずっています。
( 今話から戦闘が始まる予定でした。)
【空の口】への生け贄である俺を捜していたら・・他にも生け贄候補を見つけた魔女達。
≪魔女が・・一気に三人も!≫
≪共に、【空の口】様の下へ!≫
≪【空の口】様の復活が近づいたな!≫
・・浮わついてんなあ。
呆れた感じで応対する源太ちゃん。
「確か【空の口】は・・『絶望した魔力持ち』を、魔女にするんとちゃうかのう?」
≪貴様ぁぁ・・!
この世界で!
男尊女卑の世界で!
絶望していないとでも言うのか!?≫
「言うぞい。
お主等が言う程・・詰まらん人間ばっかしじゃあ無いんでな」
≪貴様!≫
源太ちゃんの言葉に、魔女が憎悪を脹らませる。
「僕の事も、魔女にしたいの?」
≪魔女に成りたく無いのか!
絶大なチカラが手に入るのだぞ!?≫
「いらな~い」
≪貴様!≫
颯太に嗜められてる、老婆っぽい魔女。
まあなあ。
確かに俺達は、気付いたらチートを持っていたけど・・チートを操る為の修行を疎かにした事は無い。
楽して・・ましてや───
コイツ等からチカラを得たいとは思わない。
≪君もかい、アキハラ カンタ?≫
「まーな」
≪赤子の君を助けたのは、我々なのだがな≫
「助けた、ねえ。
・・ホントにか?」
≪・・どういう意味だね?≫
今、ココには同じ動きの魔女ばっかりだ。
「赤ちゃんの俺を殺す───
そう言った魔女達は、後ろに居るのか?」
≪・・・・≫
「確かに、なァ・・。
そンなせっかちな奴等が、悠長に話し合うたァ思えねェな」
今や・・異世界侵攻用の魔物も、洗脳した戦士も、王族も・・【空の口】に手駒は無い。
【空の口】の魂を癒すのは、急務のはず。
『母さんに任す一派』と『赤ちゃんの俺を殺す一派』。
最終的にはどっちも、俺を殺して【空の口】へと魔力を捧げたいとはいえ・・一致団結出来るとは思えない。
・・けど『母さんに任す一派』ばかりで、『赤ちゃんの俺を殺す一派』が居ない。
急務で在ろうと、一致団結しない理由───
「───邪推、するよなあ」
「可能性は手柄の一人締め、ってトコかしら」
「あらあら。
【青い銀星王国世界】の王族モドキも、似た感じだったわねぇ~」
ナニやら、焦りも見え隠れするし。
彩佳とリャター夫人の予想は分かりやすい・・けど、魔女達が更に憎悪を脹らませる。
怒髪天って感じ。
≪あんな下劣な連中と我々を一緒にするな、人間如きが!≫
≪やはりこの場で・・≫
王族を下劣扱い、ねえ。
尊敬する【空の口】から、子を奪った盗賊の子孫だから。
【空の口】の魂を傷つけ続け、【オウゾク】なんぞを産み出したのだから。
だから下劣扱い。
蝙蝠だった王族は、人類と【空の口】の両陣営から利を得ていたのだし・・下劣である事は間違い無い。
・・けどなあ。
「その、下劣の愚行を・・止められなかったのか?」
≪地を這う羽虫は隠れてコソコソやるのだけは上手かったのだよ≫
「・・・・」
≪・・・・≫
魔女と王族は繋がりが有る。
なのに、下劣扱い。
・・なんだかなあ。
≪き、貴様・・!
母から聞いているのだろう!?
貴様にとって、【空の口】様は母の妹、叔母に当たるのだ!
助けたいとは思わないのか!?≫
「死にたくは無いし?」
≪ふん、やはり人間は生き汚い!≫
やや慌てている魔女と比べ、何処か落ち着いた感じのラカさんは憤慨する魔女達を抑えて静かに語る。
≪死は終わりじゃないよ。
魔女になれば、続きがある≫
胡散臭さしか無い。




