418『そりゃ、続けますよ?』
「母さんの、前世・・前生からの味方で、俺の前生からの味方?」
≪そうだね。
君が、クキと呼ばれていた時からの味方だよ≫
魔力体の・・魔女たち。
母さんが言う『人間嫌い』の言葉どおり・・俺達を見下している目、怯えた目、汚らわしい物を見る目が殆んど。
その中の一人。
何チャラ諸島的な、ちょい南国っぽい格好をした魔女が先頭に出てくる。
目は───
懐かしい友人を見る目・・っぽい目。
≪我が名はラカ。
【空の口】様の御力により、人間の身と名を捨て・・魔女となったもっだ≫
「ラカ、さんか。
悪いけど・・俺はクキとやらの記憶は欠片たりとも無い人間、秋原 幹太だ」
≪知っている。
君の様子は【空の口の巫女】として、逐一情報が来ていたからね≫
「逐一!?」
逐一・・って事は、俺達の情報は筒抜け───
≪貴女、魔女の子たる者・・男にはもっと警戒せよっ!?≫
「はあ?」
突然、『ラカ』とか言う魔女の後ろに居た別の魔女が・・泣きながらコチラを指差す。
≪・・その隣の男である!≫
「・・?
ジキアの事か?」
≪なんで我が監視番の時にぃぃぃ!!
あんな・・あんなモノを見せつけて・・アレの先から───
あ"あ"あ"あ"ぁ"あ"ぁ"あ"あ"あ"あ"っ"っ"っ"!!≫
「「「「・・・・」」」」
皆が。
皆の視線が。
ジキアに集まる。
秋原家の。
ディッポファミリー傭兵団の。
ウエスト傭兵団の。
ペリオラ傭兵団の。
リャター夫人達と女学園生徒の。
白百合騎士団の。
各騎士団の。
【人土】の。
【人狼】の。
【人花】の。
場の皆の視線が集まる。
ジキアは・・羞恥に赤くなっているのか、絶望に青くなっているのかよく分からん。
分からない人は一様に、首を傾げ。
分かる人は・・まあ、合掌したり、咳払いしたり、自分だったらと想像して顔を青くしたり。
ザレは、俺と同・経験者だからか・・ジキアに対し、アカンベーをしている。
彩佳は・・良かった。
首傾げ組だ。
二重の意味で良かった・・。
父さんの方は見ない。
見んでも分かるざます。
「鍵・・かけような」
「・・・・・・・・かけるッス」
俺はジキアをディッポ団長に預け、ラカさんはヒステリーを起こす魔女を別の魔女に預ける。
───えー・・ごほん。
「俺達を監視してたってのか!?」
≪・・続けるのだな≫
話の腰を折ったのはソッチだ。
( 原因はコッチだけど。)
≪そうだ、逐一は言い過ぎだが監視していた。
此方の世界に来てから、やや定期的に≫
「やや定期的・・ね」
やや、作為的な物を感じる。
もしかすると・・俺が監視される事は回避出来ないので、母さんとクキが『監視網』に穴を開け、与えるべき情報のみ与えているのかもしれん。
ジキアの『アレ』は魔女にダメージを与える為───
いや、ソレは考えすぎか。
≪少し前まで君は、【空の口】とだけ繋がっていてね・・。
最近やっと我々も君と繋がれるようなったのだよ≫
「キモいなあ」
最近、か。
王族による【空の口】へのチョッカイっぽいな。
≪ソレが───
君の魂に宿る魔力を、産まれてすぐ【空の口】様に捧げたがった一派から君を助ける、唯一の方法だったのだから仕様がないね≫
「具体的には、どうやって黙らせたんだ?」
≪心情的には、何も分からぬ赤子に迫る判断では無いから。
打算的には、赤子より成長した方が効率は良いから・・と≫
利にはかなっているのか。
( 魔女の都合だけ、だけど。)
≪が───ココで、君の監視網が途切れたのだが・・何が在った?
クウ・・ソラを殺したのか?≫
「殺してない。
・・逃げていった」
俺達から、では無いけどね。
≪そうか・・取敢ず、今の君が実の母殺しをするような者で良かった───と、しておこう≫
「・・・・」
≪彼女は・・君を此方の世界へ呼んだ途端、昏睡してね≫
「昏睡?」
≪最初は・・我々としても、疑わざるを得なかったのだ。
常時監視のハズが・・やや、定期的監視───クキと謀り、我々から君を隠そうとしているのではないか、と≫
「・・・・」
≪移動しまくる君を、中々捉えられずにいて・・しまいには人海戦術で億を超える魔物を使わざるを得なかった≫
なるほどなあ。
【人土村】物流回復の旅で、やや定期的に魔物に襲われていたのは、やや定期的に俺が【空の口】と魔力パスが繋がっていたからってのも在ったのか。
≪だが、ソラは目覚めて真っ直ぐ君の下へと飛んで行った。
いやあ、仲間を疑いたくは無いね≫
チラリ、ラカは『三者を超えし者』を見る。
≪君達も多少は聞いたと思うが。
我等は共に【空の口】様に救って頂いた者同士であるというのに・・一枚岩では無いのだよ≫
『・・・・』
「自分達を虐げた、この世を恨む者。
別人として生き返ったのだから、新しい人生を楽しむ者。
ひたすら疲れて、安寧を望む者───
だったか」
≪そうだ≫
「ラカさん達は・・恨む者、なんだよな?」
≪そうだ≫
「何をしに・・来た?」
周りの魔女は、憎悪一色。
感情レーダーなんか無くともハッキリ分かる、俺達への殺意。
・・でも、ラカさんは。
≪大事な時期である今は、君以外の人間達に用は無かった───んだけどね≫
「・・違うのか?」
≪やや定期的監視のせいで漏れていた・・ソチラの少女と白髪の女性。
君と同じ、純粋な女魔法使い≫
「僕?」
「はぁ・・面倒そうじゃのう」
とても美味しそうな御馳走を目の前にしたかのような・・笑みを浮かべていた。




