417『ジャイ○ニズムって、特許が取れそうですね。』
戦争を望む者達の復活・・。
「ソレって」
「黒幕が居る・・と、言うと、都合が良すぎるでしょうか?
ですが、【空の口】だけが悪かった訳では有りません」
「そ、ソレは貴女が【空の口】の姉だから───」
「大小自動追尾魔法っ!」
「「「・・っ!?」」」
突然溢れでる火球で、場が騒然となる。
「か、幹太さん・・!?」
「【巫女】様っ!?」
特に───三種族の本能から、母さんを責める【人土】は、蒼白と言っても良い程に。
「わ・・我っ、わ々は、あああ貴女を【巫女】と仰ぐ者として、た・・例え相手が貴女の母でも───」
「違います、山柄さん!
【人土】の皆も!
【人花】、【人狼】も!」
俺の炎に、戸惑う人達に号令。
プロであるディッポ団長たち各傭兵団は、指示が飛ぶ前に。
リャター夫人と女学園生徒達は、俺の炎と気付くと同時に動き始めていた。
騎士団は一瞬遅れる。
指示を聞いてから動く人達だからな。
でも動き始めたなら、即座に陣形を固める。
「魔力持つ者を、感知しました!」
「か、感知?
魔力を視認したんじゃなくて??」
母さんに気を荒らげていた山柄さん達は、突然の事態に・・やや気の向け所を見失い、キョドる感じ。
「扉魔法の広がる魔力で、魔力体を視認できなかったのが悔しくて・・以前、颯太がとり憑かれた事もあったし。
なんで、魔力を視認外で確認できないか考えてたんですよねえ」
「あ・・あの、混乱していた様子で?」
「魔力操作は普段、寝ている時でも無意識にやっていますし・・傭兵団の皆もパニックを起こしつつ、残心していたでしょう?」
母さんの話に、心底驚きつつ───
ソレでも意識的・無意識的にキョロキョロしていた。
俺と颯太も秋原甲冑柔術の教えとして、残心の考え方は理解していたし、ディッポファミリー傭兵団に弟子入りしてからは実戦で・・特に颯太の油断でピンチに陥ってからは『集中しない集中』を磨いてきた。
知らない人だとコレ、人の話を聞いてないみたいに捉えられるんだよな。
やれやれだぜ。
「アンタは、人の話を聞いてない訳じゃないわよね。
ただ、会話のブッタ切り方と、話の変わり具合がエゲツナイだけで」
「え、エゲツナくない!」
彩佳が、準備をしながら学生時代のアレコレを愚痴り始める。
「食事中、無反応でイキナリ大魔法をブッ放すのは止めてくンねェか。
アレ、心臓に悪ィンだがよ」
便乗してディッポ団長も愚痴りだす。
魔法使いだと、剣士だとかと違って初動が必要無いからたまに怒られるのだけど・・ついつい咄嗟だとね。
「か・・幹太さん」
山柄さん達が、怒られる寸前の子供のような・・半泣きの表情で、見つめてくる。
「も、申し訳ない・・。
我欲に囚われて注意を怠るなんて・・。
で、でも・・我等は、【人土】は───」
「この空間内魔力探査魔法は、扉魔法や魔力レーダー技術を参考にしています」
「・・はい?」
俺の、言葉内容が理解出来ないみたいな顔でキョトンとする山柄さん達。
そこまで、唐突じゃない筈だけどなあ?
「どっちも、【人土】の皆さんが苦労して編み出した技術です」
「───」
「【人土】二千年の歴史が、母さんを信用させないのは・・別に構いません」
俺がそう言うと・・山柄さん達は、目を丸くする。
そんなに?
「俺が。
勝手に母さんを、信じるだけ。
勝手に皆さんも、信じるだけ、です」
「幹太さん・・」
「【巫女】様・・」
「皆さんが母さんを信じる必要も、【空の口】を信じる必要も有りません。
俺は俺の『家族』も『仲間』も守るだけですから」
「「「 ───・・ 」」」
まるで人を、お化けでも見るかのような目で見てくる。
酷ない?
「・・はあ、山柄さん達の負けよ。
恨むなら・・千年二千年の怨念を丸きり呑みこむような、器が馬鹿になってるやつを大将に選んだ方よね」
「・・・・」
意味は分からねど、彩佳が俺を見て鼻で笑う。
酷ない?
「『上』に立てるヤツってのァ、どっか頭の大事なトコが飛んでんのさ」
「まあねぇ~。
敵は巨大で、味方の数は数える事もできないものよぉ~」
「そういう、馬鹿に付いていくのが楽しいのだ」
頭が飛んだ計算の出来ない馬鹿?
みんなして酷ない?
泣くよ?
「貴方方がやらねば、我が秋原家が幹太と妻を支えるだけですので」
「まあ、難しゅう考えんでエエんとちゃうんかのう」
「メーンと行って、ミョーンと敵をやっつけるだけだよね!」
父さんと源太ちゃんと颯太は・・分かりやすく隣に立ってくれる。
うん。
家族サイコー、俺サイキョー。
「幹太の言う通りです。
私や【空の口】を信じる必要は有りません」
母さんも俺の隣へ。
母さんの敵は、俺の敵。
俺の敵も、俺の敵。
「ヨランギから続く、【空の口】との因縁・・ココで決着を着けましょう」
「・・・・はあ」
あ、今、山柄さんにも鼻で笑われた。
清々しい顔で。
酷ない?
「・・負けたよ。
敗因は、彩佳さんの言う『懐』と・・自分で自分の『忠誠心』の置き位置を間違えてたってトコかね。
───・・。
【巫女】様の、御心のままに」
「「「【巫女】様の、御心のままに」」」
ナニやら、山柄さん達の目から険が取れた。
良くは分からんけど・・善き哉。
なのか?
まあ善き哉。
◆◆◆
皆が配置に付く。
今、ココで、現れる魔力を持つ者が。
・・現状と、無関係とは考えにくい。
母さんが様子を見ると言い、姿を消した。
ソレはつまり───
≪おやっ?
クウ・・いや、現在の名はソラだったか・・魔力が見えないという事は・・まさか、母を殺したのかな?≫
「誰だ?」
≪我はソラの、前生からの味方。
君の、前生からの味方。
君が産まれる時、本当は殺される所だったのを我が【空の口の巫女】として延命させたのだ≫
魔女が。
魔女の軍団が、魔力体としてやってきた。




