415『" その件に触れるな "。』
「幹太は『元』とはいえ───
『魔女の魂』と『魔女の血肉』を持って産まれました」
「・・失礼だが母堂。
カンタも済まぬが・・何故、他の魔女は子を産み、我が子を捧げようとしなかった?」
ガロスの質問。
俺は・・実際には、生け贄に捧げられて無いし、母さんからは、タップリたぷたぷ愛情を貰って育てられた。
ガロスの質問はもっともだし、別にいい。
「・・魔女は、たいがい人間嫌いです。
ですから子供を産もうと思う事自体が、まず有り得ません」
「「「・・・・」」」
自然発生の魔女は、母さん、【空の口】、俺の・・前世? の、三人。
( 母さん調べ。)
んで、ソレ以外は【空の口】による『不幸な目にあった女性』の避難場所としての・・作られた魔女。
まあ・・他人なんか、ウザイよな。
『ヨランギの嫁達以外・・魔女で結ばれたケースは極僅かしか知らない。
その極僅かのケースも、子が成せる確率は一割二割。
しかも産まれた子に、魔力は宿らなかったらしい』
「宿らなかった・・だから母堂以外に、子を【空の口】に捧げようという魔女が居なかったのか」
その人達も、我が子を捧げたくなくて───
・・いや、コレは俺が考えてもしょうがないか。
「クキに子は居ません。
魔力を持つ魔女の子は───
ヨランギ、初代三種族、王族、幹太のみ」
「実質、【空の口】とヨランギの子以外に魔法使いは居ないのか」
「んぅ?
母さん、僕はー?」
颯太も母さんの子なんだし、魔力を受け継ぐはずだよな。
「幹太は【空の口の巫女】ですので、魔力パスにより【空の口】陣営から逃げられません。
ですが颯太は違います。
ですから、魔力を封印していました」
聞きようによっては、颯太だけ庇ったみたく聞こえるのか・・何人か顔をしかめている。
けど、この状況なら颯太を守るのは当然だ。
「・・僕、幹太姉ちゃんと一緒が良かったなあ」
「結果論なのでしょうが・・今はそう思います。
申し訳有りませんでした」
今は?
「【空の口】に俺を捧げるのを止めて・・母さんの次の計画はどうするつもりだったの?」
「幹太の中の、戦うチカラが成長しきったら・・幹太一人を此方の世界へ送るつもりでした」
「俺一人・・」
転移時に颯太が見た、『俺が光ってた』ってやつか。
「当時、その為の道を作るのに相応しい空間の歪みが無かったので・・私は扉を開ける以外の方法で此方に来ました」
「扉を開ける以外の方法・・まさか」
「自殺し、青い世界を魂の状態で渡る・・転生です」
「そんな・・」
コレには、流石に家族全員で母さんに怒りを抱く。
俺の事で逃げ場は無かったとして・・全部は無理でも、相談はして欲しかった。
「ん?
転生・・って事は、今のオバさんは『秋原 昊』じゃ無くて別人の子供なの!?」
「なんじゃと!?」
「いえ。
街破級とは、【空の口】が自らの体を贄に作り出した魔物とは知っていますか?」
「源・街破級の事ですわね」
「現・街破級や村破級は、その子孫って聞いたッス」
ザレとジキアの説明に、母さんが頷く。
魔法使いの生き物は、何らかの形で【空の口】の血を受け継ぐ訳だ。
「私もこの術は使えます。
嘗てはこの身を『トレポネマ パリズム───ごほん。
ほんの極僅か、此方の世界に持ち出せた私の血肉をから新しい『秋原 昊』を産みだしました」
前部と後部だけー。
中部は聞こえませんー。
「御姉チャン、コッチに梅毒って病気が在ってなあ・・」
「" Do not touch on the matter "」
「何語ッスか!?」
何語か、分からなくて良いんだよ?
世の中には、分からなくて良い事は沢山有るんだよ?
つか、僅かの血肉って。
「肉体を失った【空の口】の代わりに、その術を真似ようとして王族がどんだけの魔女が犠牲になったか・・」
「幹太の得意技というか・・幹太と、ビタさん、でしたか。
あなた達にしか出来ない技ですよ?」
「俺と・・」
「私にしかですか?」
んな、街破級とか・・。
「少々の燃料を元に、太陽の如き炎を作ったり・・」
「分かったのです!
『魔力その物』を、材料にしたのですね!?
私も植物を、種から木々に大きくしたり出来るのです!」
「そうです。
魔力という原子を、別の原子へ作りかえる術です」
別に森の民や【人花】だけの魔法じゃ無いけど、得意というか特化しているというか。
そんな感じ。
「魔力を血肉に変え、新しい『秋原 昊』を作りました」
「あ、新しい『秋原 昊』・・。
言われてみれば・・元々若かったってのと、驚きの連続で気付かなかったですけど───
今のオバさん、滅茶苦茶若いですよね?
二十歳ぐらい?」
「そういや・・」
「御姉チャン、今頃気付いたのかよ・・テメエの母ちゃんだろうがよ」
「いや、母さん40超えてんのに、ぎり20代で通った事も───ぎにゃああああああああああああああああああああああ!?」
「『ぎり』では有りません。
25歳に間違えられた事も有ります」
わ、分かったから止めれぇ。
何で俺の回りの女性は、俺の乳を揉む!?
「ま、まさか母さん?
最初の第一声が、幹太の・・その、『アレ』の話題だったのは・・」
「あら。
まさか若い女性だけでなく、おっぱいの大きい女性の方が良いのですか?」
「どうして、そうなる・・」
父さんラブの女学園生徒達は、既にリャター夫人の白百合騎士団に紛れこんでいる。
何度か、母さんから底冷えする殺気が撒き散らされたから。
「───とにかく。
私は此方に転生し、幹太を目印に空間を少しずつ歪ませ、幹太が転移してきたら・・私達二人で暫く活動する予定でした」
「そう、しなかったのは?」
そう問われ、母さんが颯太を見る。
・・まあ母さんの計画の、最初の相違点は『ソコ』だよな。
「一応、幹太だけが通れるようにしていた扉だったのに・・颯太が、扉から付いてこれるのは想定外でした」
「て、適当過ぎないか?」
「・・知ってる?
オジさん以外、秋原家のモットーは『成るように成る』なのよ・・」
「嫌って程、知ってるぜェ・・」
世の中、大概そんなモンだ。
「コレで、颯太も大急ぎで改造しなければ成らなくなり・・私はチカラを使い果たし、今まで休息していました」
改造・・ソレって───




