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その姉妹品、危険につき──  作者: フユキ
その姉妹品、危険につき──
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414『あの一族。』

 

「───か・・母さん!?」




そんな・・。


王族たちは、自分達の下種な野望のため【空の口】を含む魔女達の魂から魔力を削り盗っていた。


そのせいで、【空の口】の顕現時間が来ても・・一向に姿を見せない。


時間が余った俺達は、この【青い銀星王国世界】から【実世界】へと戻ろう・・と、した瞬間を、【空の口】の手下である魔力体に襲われた。


その危機に、助け舟をだしてくれたのが───




「幹太姉ちゃん・・母さんが!?」


「母さん・・そんな・・」


「そ、昊・・!」




母さんが。

事故で死んだ筈の母さんが。

普通の人間であった筈の母さんが。

魔力を纏い。

ゆっくり。

ゆっくりと。

此方へ向き・・クチを開く。




「・・幹太」


「は・・はい」


「おっぱい、大きすぎませんか?」



◆◆◆



───気付けば、実世界。

【青い銀星王国世界】へと行った時の場所・・【銀星王国】の王区、その中心部だ。


世界が青くない。


アッチ(青い世界)で仲間入りし、異世界転移に半信半疑だった騎士団達が一瞬で変わったら光景に絶句している。




「ほ、本当に異世界転移を・・み、見ろ!

城が破壊されているぞ!?」


「「「 し、城破級・・! 」」」




皆はそんな反応だけど・・俺は。

俺達は。

・・一人を呆然と眺めるしかない。


無言で、辺りに結界のような魔法を張り続けながら・・ナニやら微妙な顔をする母さん。


いや、割りと俺等も微妙な顔になりましたよ?

なってますよ?


ディッポ団長、その「 またか 」って何?




「母さん!」


「もうちょっと待って下さい。

・・っと、コレで盗聴防止になります」


「と、盗聴・・!?」


「幹太、あなたは【空の口】と・・あなたの言う『魔力パス』が繋がっています」


「は?」


「今から説明する事は、【空の口】側には知られたく無いので・・この魔法を使いました」




俺と・・【空の口】が魔力パスで繋がっている?

ナンノコッチャ?




「お・・オバさん!

ちゃんと幹太に・・秋原家のみんなに説明してあげて下さい!」


「彩佳ちゃん」


「は、はい」


「幹太とは・・まだ清いお付き合いですよね?」


「きょっ!??!?」




あの。

その辺、微妙な時期なんで。

まだお互い思春期なんで。

放っといてん。




「清いお付き合いと言えば・・仁一郎」


「・・はっ!?

か、母さん!」




母さんに『名前』で呼ばれ・・ハッとする父さん。

俺達ですら、パニクる事態なんだ。


頭の固いところがある父さんだと、思考停止してもオカシクない。




「周りに若い娘を侍らせて・・私をまだ 「 母さん 」 と、呼べますか?」


「ち・・違っ!?」




父さんラブな女学園生徒達に囲まれた父さんを・・母さんが胡乱な目で見る。


でもまあ、父さんが若い女性にモテるのは初めての事じゃない。

この辺の夫婦喧嘩は何度か有る。


んで、今度は源太ちゃんの方へと向く母さん。

源太ちゃんも、熱病の如く母さんを見つめる。


源太ちゃんは、母さんの死が原因で死病にかかったんだしな。




「昊・・会いたかったぞ・・」


「御免なさい・・私の死が───御母さんの次に、オトコ(人狼)へと走らせるなんて」


「違うんじゃ!」




一瞬で、別種の朱い顔になる源太ちゃん。


今度は颯太。

俺達の惨状を見て・・ビクッと肩を震わせる。




「颯太・・あなたには素直に謝っておきましょう。

済みませんでした」


「母さぁぁん!」


「「「 ずるい! 」」」




「あー・・あのよう・・。

アキハラ漫才は、もうちょい余裕の有る時にヤっちゃァくれねェか?」




漫才とちゃう。




「そうですね。

まず、此処にいる全ての人に謝ります。

有りとあらゆる元凶は、私なのですから」


「か、母さん?」


「元凶?」




母さんが、深々と・・面々に頭を下げる。




「私は、魔女です」


「昊が・・魔女?」


『前世の記憶がある、という事だ』


「昊に・・」




『三者を超えし者』の言葉に、源太ちゃんが信じられない物を見る目で母さんを見る。


俺も信じられない、けど───母さんの魔力は・・真実だと語っている。




「私の、最初の記憶は・・【空の口】の姉である人生です」


「そっ、【空の口】の姉っ!?」


「私達は『森の民』と呼ばれる、森の恵みから様々な薬を作りだす一族でした」


「む、昔から母さんは植物が好きだったからな」




家庭菜園───

とはちょっと違う・・もはや研究に近い、よく分からない趣味だなとは思っていたけど。




「ある日、私の不注意で・・病気・怪我といえば祈祷で治す連中に、私の薬が見つかってしまったのです」


「あー・・魔女で薬草で外で───って成ったらもう、アッチの騎士団とか異端審問とかしか思い浮かばないわ」




コクリと、彩佳に頷く母さん。




「・・あれ?

なんか俺、その話に近い夢を見たような・・??」


「あなたには、あなたがお腹に居る頃から魔力を譲渡していましたから・・魔力と密接な関係である感情とともに、そういった記憶が流れたのかもしれませんね」


「えっ?」




俺が、言葉の意味を理解する前に・・父さんが声を荒らげる。




「ど・・どういう事だ!?

有りとあらゆる元凶とは・・最初から幹太を、巻き込むつもりだったのか!?」


「はい」




悲しそうな母さん。

激昂しそうになり・・その表情を見て、父さんも食い縛った歯を開ける。




「・・続けてくれ」


「・・・・。

私は、妹を逃した・・つもりだったのですが、結果的には離れ離れになり二人とも魔女として覚醒します」


『まさか・・【空の口】以外の、自然発生魔女!?』


「正確には劇薬による魂の喝入れですが」




無茶苦茶だなあ。

『三者を超えし者』は『三者』の一人、聖者に似ているとか何とか。

聖者も森の民とか聞いたけど・・。




「・・ん?

じゃあ俺、【空の口】とビタと親戚?」


「魂の、という意味ではですね。

聖者は、おそらく私の数十代前の先祖かと」




やや、置いてきぼりだったビタが、嬉しそうにする。

良い子だ。

ちなみにビタの姉ピヒタは・・とっくに飽きて、キャンピングカーの食料品を漁っている。




「か、幹太・・ずいぶん落ち着いてるわね」


「いやあ・・落ち着いているっつうか」




パニクり過ぎて、一週回って悟りを開いたっつうか。




「離れ離れになった妹が・・此方の世界へ転移してからの事は、此方の世界の住人の方が詳しいかと」


「二千年前に現れた。

屑に孕まされた。

屑に我が子を盗まれた。

【空の口】になった。

自らの子、ヨランギと戦った。

負けた。

千年前に復活した。

負けた。

・・ンで、現在っつうトコだな」


「はい。

とにかく・・妹の為、仲間の敵討ちの為に───

・・この世の全ての他人を無視し、動きました」


「親子だな」


「親子ねぇ~」


「間違いないな」


「ふむ」




・・何故か、皆の視線が俺へと集中する。

なんなん?

自分の家族と他人なら、家族じゃね?




「そんな、何度目かの生で・・私は双子として産まれました。

もう一人の彼女も、神の愛とやらのために火炙りになり自ら魔女として覚醒した者でした」


『また自然発生の魔女・・』


「幹太の前生です」


「───は?」




この日、何度目かの思考停止。

えーっと・・。




「彼女が、幹太を守るため・・【空の口の巫女】となり幹太へと転生し───」


「ちょっ・・待っ・・・・俺の前生?

前世って事? その女性が?」


「【空の口】の【巫女】!?」


「幹太を守るため、幹太に転生って・・」




かなりイッパイイッパイだ。

転生の概念が無い異世界組はだいぶ思考放棄している。


かろうじて・・ディッポ団長、リャター夫人、イーストさん、ガロスが付いて来ているぐらい。


騎士団や【人花じんか】【人狼じんろう】には周囲の警備を頼む。




「【空の口】の魂の傷を癒すには、女魔法使いの魔力が最良です」


「そ・・ソレはまあ、聞いたけど。

だからヨランギ達の策略で男尊女卑の世にして女魔法使いが産まれないようしたって」


「そうです。

此方の世界で女魔法使いが産まれる事が無いと知った私は妹のため・・子を産み、魔力を捧げ、妹は復活。

私達は親子で魔女になろうとしたのです」


「その、転生先が───」


「『秋原 昊』でした」


「「「・・・・」」」


「最初は利用するつもりだった、御父さん、と・・御母さん」




一瞬、母さんはチラッと俺達・・っていうか、源太ちゃんを見た。

『源太ちゃん = 御父さん』と男呼びしないでいてくれるのか。




「・・ですが。

本来は極々普通の事である家族を思う気持ちを共有出来した事で、私の中で・・『森の民ソラ』ではなく『秋原 昊』である時間が増えました」


「昊・・」




涙目の源太ちゃん。




「そして、父さ───中学の頃からラブレターをいつも貰っていた仁一郎と出会い・・」


「君たち、頼むから本当に離れてくれ!?」




涙目の父さん。




「幹太が産まれ・・私の全ての行いが間違っていたと悟ったのです」


「・・母さん」


「ですが、幹太を利用しようとする計画は・・既に私一人で止められる範囲を超えていました」


「まあねぇ~。

【空の口】側からしたら千年ぶりの一大チャンスだもの」




リャター夫人が困ったように言う。

俺は、千年ぶりの餌ってことか。




「ソコで、本来は幹太が産まれた瞬間に捧げられる筈だったのを、先ほどの双子が・・背負う事で時間稼ぎをしてくれました」


「背負う?」


「【三種族の巫女】が、『三者』の封印強化・魂の傷を癒す魔力の譲渡という役目が有るように・・幹太に【空の口の巫女】の役目を与える事です」


「直ぐ生け贄にしなくて良いよう・・ってか。

御姉チャン、その記憶は?」


「いや・・まったく」




俺の前世、魔女・・ねえ?




「クキは、もはや『魔女』ではなく『幹太』ですから・・あと」


「あと?」


「幹太が本来産まれるべき・・とある事象でなくす為にも動いてくれました」


「とある事象?」


「あ」


「なんだよ、彩佳?」




変に、言い淀む彩佳。




「( た、たぶん・・性別じゃない?

女じゃなく、男として生まれ変わったんじゃ・・ )」


「( あー・・ )」




そっちの時間稼ぎもあんのか。

・・てか、俺、何回性転換してんの。

 

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