407『様々な視点⑫』
「・・ねぇ、貴女の名前───
なんだっけ?」
「ひっどーーい!?
実の双子の妹の名前を知らなかったのっ!?」
『あの女』が、飛び去って三日。
私は・・死に体の如き態で、支えられながら村に辿りつき───直後に倒れたらしい。
目の前の少女、両親、村人、皆が見舞いに来る中・・今日まで眠り続けていたとの事。
目覚めると、ちょうど村人達が帰った後で・・この娘が私の世話をしてくれていたようだ。
「・・クキよ、クウお姉ちゃん」
「クキ・・。
・・それに私、クウって名前だったのね」
「・・お姉ちゃん」
家族。
家族だけ。
家族だけを想い、前に進む。
家族を奪われ、誓い、魔女となった『生』。
自分にとって『死』は終わりでは無いと知り、家族の大事さを再認識させられた『生』。
国が変わろうと時代が変わろうと・・下種な人間だけは変わらないと再認識させられた、数々の『生』。
色々と知った、知ってしまった・・今の『生』。
「・・ねえ、クキ」
「な・・なあに、クウお姉ちゃん?」
「私、16歳になったらこの村を出るわ」
「・・・・そう」
認めよう。
一番は、間違いなく『妹』と、森の民たちだ。
・・だけど。
だけど、私はこの村の人間と・・この目の前の少女も、守りたいと思ってしまっている。
この村に、下種が寄り付く事が許せない。
下種は殺す。
私は魔王。
神の敵。
殺して殺して殺して殺しまくる。
だけど・・無差別に殺す気は無くなってしまった。
下種は殺す。
だけど、私の家族は。
仲間は。
・・お、恩人は。
守りたいと、思ってしまった。
「あれっ!?
クウお姉ちゃん、顔が紅いわよ?」
「・・紅くない」
「えぇ~? 紅いってぇ~!」
「・・殺すわよ?」
「ぎ、ギブギブッ!
クウお姉ちゃん、マジ!
マジで蔦が絞まってるからっ!?」
あの女は言っていた。
私と同じ目にあっている人間は、沢山居るようだ。
そんな人間にタカる下種は、もっと沢山居るようだ。
なら、私は前に進みたい。
妹を、森の民を守れなかった、せめてもの償い。
「んっんー・・。
しょうがないわねぇ、まあその頃にはアタシの魔力も旅に耐えれるかぁ」
「・・は?」
「は? じゃないでしょ、は? じゃ。
とーーぜんっ、アタシも付いてくわよ!」
「む、村はどうするのよ!?」
「今のクウお姉ちゃんなら、植物操作で村の周囲に薬草山菜果実の為る木を用意出来るでしょ?」
「・・で、出来る」
「アタシは土や水を操作して、浄化水道を用意したり・・隠れ里を、より完璧に隠せるし」
「・・・・」
「ココの人達も好きだし、寂しいけど・・クウお姉ちゃんを放っておけないじゃない?
クウお姉ちゃん、天然だし」
「貴女も大概、天然だと思う・・」
むしろ・・ずっとこんな私をお姉ちゃんと呼び、後ろを付いて来た彼女は───クキは、特別の超ド天然だと思う。
◆◆◆
あ
お
い
せ
か
い
。
た
ま
し
い
の
せ
界
。
い
ま
迄
は
一
人
。
暫
く
し
た
ら
人
が
増
え
た
。
多
分
魔
女
の
魂
。
私
と
同
じ
魂
。
今
は
隣
に
も
う
一
人
居
る
。
クウお姉ちゃん、その思考波の感じ・・だいぶ纏まってきたとはいえ、何とかならない?
貴
女
が
異
常
。
こ
の
ド
天
然
。
アタシは天然じゃないわよ。
失敬な。
ソ
レ
を
真
顔
で
言
う
辺
り
が
ド
天
然
。
なんなん?
えらく、突っ掛かるわねぇ?
目
的
が
居
な
い
。
目的・・?
ああ、あの時の女性と───
≪我の事かな?≫
!
わあ、びっくりしたあ!
すごぉーい、この青い世界でクッキリ姿を維持しているなんて・・。
クウお姉ちゃんは未だに意思だけしか顕現できないのに!
う
る
さ
い
。
≪ふふっ・・まあ性格かな。
変に考えスギない事だよ。
・・懐かしいね≫
久
し
ぶ
り
。
お久しぶりでーす。
御元気ですか?
≪この世界で御元気ってのも、どうかと思うよ?≫
あれっ?
・
・
天
然
。
≪まあ、また会えて嬉しいよ。
此方も色々あってね・・≫
ソチラでは、どのぐらい経っているんですか?
≪・・ん?
もしかして・・君達は、あの時の『人生』の後なのかな!?≫
ハ
イ
。
あの後、ちょっと世直しの旅に出て。
幾人か助けたり、悪い奴を殺っつけたりして。
≪そう・・か≫
・
・
?
あの、何か・・?
≪我の主観時間は、アレから千年経っているのだよ≫
!?
・・へ?
い、いや・・この青い世界は時間の感覚がかなり曖昧っていうのは感じていましたけど・・せ、千年ってのは流石に・・。
≪我等がこの千年の為に、色々動いていたように・・裏切った魔女達もまた、色々仕込んでいてね。
窮した【空の口】様が、最後にトンでもない一撃を放たれる程だったんだ≫
トンでもない一撃?
≪奴等の殆んどを死滅させ、空間に亀裂が入る程の一撃さ≫
空
間
に
亀
裂
?
≪あの時の我のように、この世界を死を持って介したのでは無く・・『君達の世界』と『異世界』が直接繋がったのだよ≫
世界と世界が・・?
そ
れ
っ
て
・
・
?
≪死を待たずして、肉体を持ったままこの世界を通った・・という事だな≫
・
・
!!?
そ、そんなチカラが・・。
アタシ達も大部強くなったって、思っていたんだけどなあ。
≪奴等の中核・・【三巫女】は全員殺した。
【人土】に至っては、種族ごと君達の世界へと放逐された。
本拠地も破壊したし、洗脳の事も有るから・・後世に、録な情報は残らないだろう≫
次の千年には勝てるって事ですね。
≪・・・・≫
・
・
ど
う
し
た
ん
で
す
か
?
≪その、最後の一撃の後遺症かな。
元々、追い詰められて・・重傷を負われた状態での渾身の一撃だったからね。
【空の口】様の、魂の傷が・・かなり酷い≫
危険なんですか?
≪我より更に死生を超越された御方ゆえ、危険とは言わないが・・顕現に千年以上は掛かるだろう。
復活には・・ひょっとしたら、更に掛かるかもしれない≫
・
・
・
・
。
私
達
は
会
え
な
い
ん
で
す
か
?
≪───意識は、混濁状態だが・・会うだけなら出来る。
というか、会ってほしい。
以前、君達の事を話したら・・とても会いたがっていたからね≫
そっか・・クウお姉ちゃん?
行
こ
う
。
≪此方だ。
魂の世界といえど、別の枝葉の世界だからね≫
え
?
枝葉って何ですか?
青い世界は一つじゃないんですか?
まさか地獄とか天国とかですか?
≪いや、【空の口】様の故郷の伝承でね。
魂の世界は、一本の巨木であり・・その枝葉に、魔女だけ人間だけと、別れて存在するんだ≫
・
・
そ
、
そ
の
伝
承
は
・
・
森
の
民
の
・
・




