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その姉妹品、危険につき──  作者: フユキ
寝所・幕間
406/547

406『様々な視点⑪』

 

≪まずは警戒を解いてもらうため、我から素性を明かそう≫




そう言う、魔力の塊の女。

隣の、( 今生の )私と同じ顔をした少女を見ると・・表情こそ平然としているが、不自然な汗をかいている。


・・たぶん、私も。


恐らく、この女がその気になったら・・一瞬で私達は殺されるだろう。

それだけの存在感だ。


死、そのものは恐くない。

だけど。

目の前の『コレ』は───恐いというより・・息苦しい。




≪まず、我も君達と同じ魔女だ。

・・天然ではないがね≫


「天然・・じゃあ、ない?」




眼前の女は、何とも言えない表情だ。

哀愁・・とも言い難いが、ソレが一番近いか。




≪とある刑務所に収監された女が、看守達に強姦され・・産まれたのが我だ。

・・産まれた時から、我は奴隷であったよ≫


「・・・・」


「・・・・」


≪生きる事と苦しみは、同義だった≫




似た経験は、有る。

生と苦しみは同義・・というのも、理解は出来る。




≪ある日、体が何処も痛くなかった(・・・・・・)

気がつくと其処は一面、青い世界で・・目の前に強大な存在が居たんだ。

あんなに恐ろしかった看守達が・・地べたを這いずる、羽をもがれた羽虫にしか思えないほど強大な存在がね≫




言葉、そのものは・・神を語る連中と同じ。


けど・・居もしない者を無理矢理『信仰』という言葉を連呼する事で信じこもうとする───

自分で、自分に嘘をつく連中とは違う顔。


知り合いを語る顔。




≪ソレが【空の口】様さ。

彼女は君達と同じく、自力で魔女になり・・彼女のチカラで、我は魔女にして頂いたのだよ≫


「魔女にした・・?

あ、アタシ達にも、そんなチカラが有るのかしら?」


≪残念だが、格が違うよ。

・・君達の資質は、我より上だろう。

然れど、今は我の足下にも及ばない≫




それは分かる。

眼前の女の存在感は、圧倒的だ。

そんな彼女よりの上の存在・・。


そして・・そんな存在に、私も成れる・・!




「ど・・!

どうしたら、私も『そう』成れる!?」


「お姉ちゃん・・」


≪そうだな・・上位存在から料理などで魔力を得る手も有るが・・。

・・・・。

君達はまず、我等の拠点である異世界へと行くべきだ≫


「異世界?」


「青い世界かしら?」




其処へなら何度も行った。

何度も何度も何度も。




≪いいや、魔力が空気のように存在する世界が有るのだよ≫


「そんな世界が・・」


≪この世界は、魔力と相性が善くないからね・・君達の発育にも善くないのかもしれない≫




其処に行けば、私も魔王に成れる・・。




「───でも、駄目。

私は・・この世界の人間を殺すと・・妹に、皆に・・誓ったから」


≪我だけでなく・・【空の口】様も、【空の口】様に魔女にして頂いた他の魔女も、その多くがコチラの世界出身だ。

君と同じ想いで・・異世界にて次の千年のため頑張っている≫


「・・せ、千年?」




千年も、頑張らなきゃならない?

千年も、この世界の人間を殺せない?




「そういえば・・アナタの素性は分かったけど、アナタがその異世界からこの世界に来た理由は?」


≪───情けない話だけどね。

我等は負けたのだよ≫


「負けた?

そんな凄い存在が・・!?」


「ま、まさか・・異世界には神が居るとでも!?」


≪神は居ないよ。

此方と同じで、宗教なんてのは権力者の金儲けと人殺しの道具でしかない≫


「なら・・」




眼前の女が、深くタメ息をつき───




≪裏切り・・かな。

【空の口】様に助けられた魔女が、二・・いや、三派に別れたのだよ≫


「【空の口】に助けられたんじゃなかったの?」


≪【空の口】様に助けられたのに、だ。

その中核に、【空の口】様の息子を据えてな≫


「息子?」




家族が・・家族を裏切った?




≪彼方の、とある権力者が【空の口】様のチカラを欲してね。

然れど、【空の口】様は権力者に靡かず・・仕方なく権力者は【空の口】様に子を───ヨランギを作らせたんだ≫


「何処の権力者も、似たようなモンなのね」


≪何処の権力者も、似たモンだよ。

その権力者に育て上げられた【空の口】様に近しいチカラを持ったヨランギと、裏切りの魔女と、権力者軍に、我等は負けた≫


「「・・・・」」


≪【空の口】様は、封印された。

だけど魔女は、死んでも記憶を保持するんだ≫


「ソレは知ってるわ。

アタシ、二回目の人生だし」


「私は・・全部の生を併せれば、たぶん8~90歳ぐらいだし」


≪ほう、まさか40歳の我の方が年下だったとは?≫




彼女の見た目は・・20歳ぐらい?




≪でもまあ、面倒なのでこの口調で行かせてもらうよ≫


「ソレはどうでもイイ」


「アタシはまだ30代だし?」


≪【空の口】様は凡そ千年後、復活為される。

その時の戦力集めに、我のような・・この世界に居ながら魔力を持ち、世界を恨む女を探しているのさ≫


「この世界に居ながら魔力を・・」


≪我も含め、その殆んどが・・魔女になる前に絶望し、心が朽ちるのだよ。

君達や【空の口】様のように、絶望を乗り越えられる者は少ない≫


「そんな乙女達を・・【空の口】は集めているのね」


≪【空の口】様は、な。

【空の口】様は、苦しむ乙女全てを救おうと為されるが・・その挙げ句が、前回の裏切りだ≫


「アナタは?」


≪世界への復讐派。

新たな人生を楽しむ派。

何もせず、眠りたい派。

【空の口】様は魔女全員に、二番目を推奨為されておられるが、まずは地盤を固めてからだ。

世界への復讐派のみ集める≫


「ならアタシは無理かしら。

政治利用された挙げ句、火炙りにされないのなら・・特に不満は無いし」


二番目(新たな人生を楽しむ派)という訳か。

無理強いはしない。

平和になった暁には【空の口】様の望む通り、我等も楽しむ故≫


「【空の口】さんに、興味は有るんだけどね。

お姉ちゃんは?」


「わっ、私は・・・・。

私は、この世界の人間を殺す・・」


≪何なら、手伝おうか?

魔力形態とは言え・・ソレぐらいなら出来る≫


「えっ?」




女は、キョロキョロと何かを探るように視線を動かし・・ピタッと視点を固定する。

その先は・・私達の村。




≪なあに。

保護者を失い、暫くは飢えるだろうが・・『復讐』を糧にするタイプの君なら、直ぐに我を越える魔女になる。

そうすれば、あんな保護者など居なくとも・・≫




そう言って、目の前の女は・・数十の人頭大の岩を宙に浮かせ、ナイフのように尖らせ───




「───駄目ぇっ!」


≪・・っ!

・・どういうつもりかな?≫




気付くと・・私は、岩のナイフを全て叩き落としていた。

今までとは比べ物にならない程、強く、速く、大きな植物で。




「あ? ああ・・?

わ、私・・私は・・」


≪・・・・≫


「・・御免なさい。

お姉ちゃんが本当に許せないのは、『権力者』だとかじゃあなくて・・『家族を守れなかった自分』らしいの。

お姉ちゃんの心の糧は、『復讐』というより───」


≪・・なるほど≫




女が、フワリと浮かぶ。




≪君は、【空の口】様に・・とても、とても良く似ている。

君の思う通りにすると良い≫


「アナタは?」


≪再び、別の土地で『世界に復讐したい』乙女を探すよ≫


「あっ───」




女が、遠ざかって・・。




≪・・・・。

出来れば、君達とは敵になりたく無いな。

厳密に言えば、裏切ったという魔女達も・・別陣営に別れはしたが、憎みあっている訳では無いしね≫


「取敢ず、そのうち(・・・・)ソチラに行って見ますね(・・・・・・・)


≪・・ああ。

待っているよ(・・・・・・)




そして、女は・・何処かへと、去って行った。

 

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