401『理論上、宇宙は存在しない世界です。』
「上・・と、見せかけて───九方向からじゃ!」
「唐竹、袈裟斬り、右薙、右斬上、逆風、左斬上、左薙、逆袈裟、刺突の九撃を一瞬で・・しかもその大剣で!?」
源太ちゃんが・・騎士団員に、どっかで見たような技をくり出している。
何やってんの・・。
「け、拳撃は避けたハズなのに・・!?」
「えっとねぇ。
全身のパワーをパンチに乗せる時、ムメメメーンって震わせて衝撃波を相手に伝えるの」
颯太も、なんだかなあ・・って、技。
ヤバない?
「幹太も、【オウゾク】を討ち倒した魔法とか " 必殺技 " を見せてあげたら?」
「「「 ・・っ!? 」」」
新しい騎士団員が、ビクッと飛び上がり・・魔王を見るかのような目で見てくる。
女学園生徒に耳打ちされた白百合騎士団員は・・何やらタメ息。
オチャメな生徒達だ。
また、大袈裟な事を言っているんだろうな。
「必殺技ねぇ?」
「幹太ならカメハメ───」
「やらない」
『真空波動───』
「勘弁して」
・・出来るけど。
◆◆◆
【空の口】顕現まであと僅か。
【青い銀星王国世界】を巡り、各騎士団詰所へ行き洗脳を解く。
「あ、有難う・・!」
「う・・嘘だ!
今まで王家に忠誠を貫いた私を、王家が洗脳など・・そうだ!
貴様等が、私を洗脳したんだ!」
「・・恐ろしい・・恐ろしい・・恐ろしい・・」
この世界に来て一番最初に洗脳を解いた、白百合騎士団その他は───
直後に、『王族』から・・囮として使われ捨て駒として、俺達もろとも命を狙われたが故に、王族から洗脳された記憶を受け入れてくれた。
けど新たに救った、他の騎士団詰所にいた騎士団は・・反応がマチマチだな。
記憶は皆同じ。
『あの日』、空から女の声がして・・頭の中が【空の口】への忠誠心に満ち満ちて───
いたトコロを突然、王族が自分へ手を伸ばし・・洗脳を上書きした。
王族から受けた洗脳中は、頭の中をグチャグチャにかき混ぜられた記憶のみ。
「本当だ!?
我等も、恐ろしい姿の『王族』に襲われて・・」
「そ・・ソレは、貴様等の忠誠心が足りなかったからだ!」
結局受け入れてくれた人間は六割り強、半分よりチョイ多いぐらい。
「はっ!
【空の口】を倒す!?
その英雄団の中心人物がそんな小娘だと!?
なら、そのチカラを見せ───」
「超高層建築移動魔法」
「おわっ!?
じ・・地面が上がって!?
ちょっ、たっ高・・ちょちょっ!?」
「5mぅ・・10mぅ・・20mぅ・・・・・・100mぅ・・」
付いてこない、逃げたいという騎士団は無視。
戦意の無い者が、決戦の場に居ても邪魔だし。
問題は、付いてきて文句を言う連中。
洗脳した事を認めろ、謝れ、だとか言ってくる。
余りにウザいんで、【空の口】戦の邪魔と・・はっきり言ったら、この顛末だ。
「分かった!
分かったから・・!?」
「200mぅ・・・・1000mぅ・・。
・・何も聞こえないなあ?」
「───・・・・っっっっ!!!?」
「おかしいなあ?
コッチの声はちゃんと聞こえるようにしてあげているのになあ?」
「幹太姉ちゃん、お星様が見たいんじゃ無いかなぁ?」
「颯太はロマンチックだなあ♡」
「「「 ロマンチック・・ 」」」
俺達を受け入れた側の、騎士団員達のハモり声。
うんうん、仲良しで良し。
暫くしたら何人か落ちてきた。
高さにビビっている奴が、投身自殺も在るまい。
たぶん、恐怖で気絶したか足がもつれたか。
風魔法で優しく受けとめる。
「あ・・あの高さから、鎧を着込んだ成人男性数十人を、風だけで・・!?」
「土魔法で受けとめましょうか?
ソレでも、汚れはしませんし?」
「・・い、いや、風で受けとめてやってくれ」
「ハーイ♡」
そんなこんなで、一日目終了。
二日目の朝・・付いてこない、逃げたいという騎士団は無視。
付いてきて文句を言う連中は・・居なかった。
◆◆◆
緊張感を適度に保つ為、【空の口】との戦闘の準備の為、己れより強い者の攻撃を少しでも見慣れようとしている。
ダメージを残さない、簡単な訓練。
肉体や精神の疲れを癒す、食事。
・・そして、休憩中のお勉強。
騎士団員は王族が用意した歴史・神話しか知らないので、歴史の生き証人───『三者を超えし者』に語ってもらう。
俺達はすでに何度か聞いているが、『三者を超えし者』もコレが最後だからと・・より詳しい情景ごと語ってくれる。
『世界に『魔法使い』と呼ばれる人間が居なかった、二千年前・・一人の少女がとある国に突然表れた』
「・・・・」
『当時から、この世界にも魔力はあった。
人々にとって『魔法』とは・・自分の動きを補助する身体強化魔法と、怪我や病を癒す自己再生魔法の事』
「魔法使いでなくとも、誰でも使える基礎中の基礎魔法だな」
「魔法っていうより・・魔力の仕組みに近いわよね」
嘘をつくと、『魔力が歪む』とか。
『ところが、その少女は手を振りかざせば竜巻が巻き起こり、大地を踏みしめれば山が隆起したという』
「・・・・」
何故俺の方を見る?
『『魔力の本当の使い方』の存在を知った人類は・・その少女に、手を出した』
「少女に手ぇ出した・・って」
『そのままの意味。
大人に成る前の少女』
颯太には聞かせられないなあ。
颯太と源太ちゃんの訓練・・その余波を防ぐために、防音付き防壁魔法を張っていて助かった。
『数年後、少女は・・後に英雄と呼ばれる子供を産む』
「我等も・・貴族の我等も、元を辿れば【空の口】と強盗の血筋なのか・・」
そうじゃ無い、まともな人々の血を受け継いだ結果・・魔法使いの血が薄れたのは皮肉か。




