398『この世界に来る為には、『城』を破壊せねば成らないと分かった時の顔・・楽しみだ。』
「虐殺悶絶魔法とか、埋まってない?」
『残虐凄惨魔法は、地中には無い』
「だーかーらーー。
あん時、皆に防爆衣魔法を掛けていたから味方に被害は無かったっつうの」
騎士団詰所にて王族が攻めてきた時、俺が【レッサーハウンド】へのトラウマで前後不覚になる直前・・超劣化版・極大爆発魔法を、敵の侵攻経路に埋めていた。
最初は───
防爆衣魔法を全員に掛けてんだから、戦場の至る所に埋めようとしていた・・と、分かると、颯太と【人土】以外の皆に怒られた。
・・あの怒られ方も、【人土村】の前にトイレを作った時の怒られ方で・・割とトラウマだ。
閑話休題。
『本当に何の罠もない。
美しい居城を汚す要素は何もないと思われる』
「ソレだけ、この世界に絶対的な自信が有ったって事ね。
幹太が実世界の城をブッ壊した瞬間のコイツ等の顔・・見たかったわー」
まあ、理想郷っちやあ理想郷だよな。
街中で、男尊女卑は無かった。
道を行き交う人々は、笑顔で溢れていた。
「アンタの秋原家魔法を見た人々からは、笑顔が消えてたじゃないの」
優しい系ファンタジー世界の人々で溢れているのだ。
・・もし、最初にこういう系の世界に異世界転移していたら───
いや、考えるだけ無駄か。
「魔女達の気配は分かるのか?」
『視認は出来ない。
パスも感じられない』
「・・・・」
『そんな顔をしないで欲しい。
元々、二千年近く会えてなかった』
友達と二千年離れ離れ・・か。
『三者を超えし者』が、魔女の事になると俺達に敵対宣言したり。
俺の想像もつかないアレコレが有るんだろう。
「・・よし、じゃあ数隊ずつに別けて警戒しつつ進みましょう」
「うむ。
騎士団の一番~三番隊は、王区の門を警戒せよ。
四番隊は門から右手側に、五番隊は左手側に、壁沿いから探索せよ」
それぞれの騎士団に、【人土】【人花】【人狼】も一隊ずつ付いてゆく。
魔法が使えない騎士団は、魔力が見えないしな。
騎士団が探査っていうより、三種族の探索を騎士団が護衛って感じ?
「千年前は・・三種族も戦っていたのに、人間だけが戦っていたみたいな扱いだからなあ。
四種族 ( 【人茸】は実質、人間なので。) での協力はなんか感慨深い感じだなあ」
厳密に言うと、途中から【人土】になった俺が言えた台詞じゃないけど。
「おそらく使命を果たした二種族 ( 【人土】は地球に飛ばされたので、三種族ではなく二種族。) は・・戦いが終わり、特に何も求めず早々に里へと帰ったんじゃないかね?」
「あー・・」
山柄さんの予想。
確かにな。
戦後復興のさい、誰がどれだけ手柄を立てたか・・醜い争いは在りそうだ。
ソレこそ、ソレきっかけに人類同士の戦争が始まりかねない。
「そういうのが嫌で、ひっそり居なくなったのかもしれませんわね」
「同族間の争いが殆んど無い種族だと尚更な」
まあそんな【人土】と【人狼】の前長は、暴走した訳だけど。
「じゃあ、探索班が戻る間に拠点を作りまーす」
「「「 了解 」」」
城の近くに広場が有ったので、お互いをフォロー出来るよう基地を分散してキャンプ準備。
「魔王城の目の前でキャンプねぇ」
仮に誰か居たとしても敵しか居ない、実世界の城の時みたいに・・いきなりブッ放っつ訳にもいかないしな。
〔───ザッ・・。
こちら壁の探索班。
只今、門の反対側でもう片方と合流。
どちらも、異常を発見出来ず〕
「了解。
引き続き、片方の壁を再探索せよ」
〔了解〕
無線機からの報告。
この期に及んで王族が何か出来るとは思えないけどな。
暫くして、二重チェックの意味で一周してきた両班が帰還。
やっぱ異常なし。
「城攻め・・か。
御姉チャン、城を外からブッ壊す以外を出来ンのか?」
「で、出来ますよ。
昨日のタコ焼き、繊細技術の塊ですもん」
まあディッポ団長も、分かってて言っているんだけどね。
「ビタ、道中に巻いた種から反応は有るかな?」
「何も無いのです!」
昨日ビタが【巫女化】した時、この世界に来てから撒き続けた根が街の半分まで伸びたとの事。
『【空の口】復活まで、あと48時間は有ると思う』
「よし、城に突入!」




