397『コッチの予想のフイしか突かない、爆炎しか撒き散らさない。』
王族の洗脳を受けた、ガロスの部下。
「ガロス・・洗脳を解くか?」
「・・いや、そんな余力は無いだろう」
人一人の洗脳を解くのに、さほど魔力は消費しない。
ココで言う余力とは、
『足手纏いを保護する余力』という意味だ。
残るは、【空の口】との戦いだしな。
「しかも、素人一人が得た情報なんて・・な」
「うむ」
たぶん、ガロスの部下を治療しても・・王族から直接聞いた話より、役立つ情報はない筈だ。
なら安全な場所で自活してもらう方が、双方に良い。
「ガロスが、ソレで良いなら」
「頼む」
という訳で、ガロスの部下には挨拶だけで出発。
ちなみに・・アスェベタ三兄弟の末弟、ザーロスさんも未だ【空の口】の洗脳中。
・・正直───
デロスと【ファフニール】騒動の時、ちょっと会っただけだし・・ワザに貴重な時間を割いてまで、ザーロスさん家まで行くメリットは無いから。
源太ちゃんはもうちょい、ザーロスさんに世話になっているけど・・せいぜい、困ってない衣食住の世話になった程度。
俺達やザレの負担とじゃあ、比べるまでも無いって感じ。
ガロスも、ザーロスさんを『敢えて今』治療するメリットは無し・・と、無視している。
ガロスは、兄弟なんだし家族を大事にしろよ・・と思わなくもないけど、まあ家族仲間以外に興味ゼロの俺が言えた義理じゃないよな。
「王族は【銀星王国】の貴族を、どうするつもりだったんだろう」
「【空の口】や魔女の魂を削って、テメェのチカラにするってンだ。
そのウチに糧にするつもりなのかもしれンし・・」
「魂を削られ、弱体化した【空の口】にぶつければ本気で勝てると思っていたか・・辺りじゃないか?」
ディッポ団長とイーストさん。
なるほど、そんなトコか。
「直に【空の口】の魂を、チカラを、確認しといて・・そんなんじゃ足りないって分かんないモンですかねぇ」
「さあなァ・・。
魔力も魂も見えねえ俺にゃあ見当もつかねェよ」
まあ、愚者共の王だ。
録なモンじゃないだろう。
◆◆◆
貴族区の壁を抜ける。
「「「 ふぅー・・ 」」」
「・・な、何ですか?」
王区へ着いた瞬間、至る所からタメ息。
ラスボスの下へ辿りついた緊張感・・では無く、安堵の息。
なんなん?
「いや・・前に御姉チャンが、
『貴族を皆殺しにしたら【空の口】の糧が無くなる』・・とか言ってたからよ」
「あー・・」
ソレで俺が貴族区を完全に抜けるまで不安だった・・と。
・・いやいや、なんで味方のフイを突いて攻撃するとか思われてんの!?
「兵糧攻めが本当に効果が有るなら、ヤりますけどね」
『そう』
ココに近づくにつれ、口数が減ってきた『三者を超えし者』だけど・・意を決した感じで喋りだす。
『最早、今さら貴族を皆殺しにしようと・・極僅かな時間稼ぎにしか成らない』
「うん。
ならまだ使い道のあるウチは生かしとこうかなーって」
「・・そりゃ重畳だな」
ディッポ団長のお墨付きを貰った。
・・微妙な表情だけど。
ってな訳で、貴族連中を無視して王区へ。
◆◆◆
「城が・・なんだこりゃ?」
草原や木々、湖といった景色は実世界そのまま・・城の人間や使用人などが数年食っていけるだけの食材も健在だ。
「『中世ヨーロッパ風』というか『ファンタジー風』というか・・」
ただ───
『城』が変わっていた。
無骨な・・『タワー』とでも言うべき実用重視の『城』から、絢爛豪華な・・見た目重視の『城』へと変わっていた。
「え、絵本に出てくるようなお城ですわ・・」
「キレイだねぇ幹太姉ちゃん」
『青い世界とは本来、魂や魔力・ヴォイドといった・・『世界を構成素材』だけで出来ている』
「今のアタシ達やトラックみたいな、肉体や物質は存在しない訳ね」
『この・・【銀星王国世界】とでも言うべき世界は、【銀星王国】に住まう人々の記憶から作られているらしい』
「・・まさか」
『・・王族は「 こういう城が良いなあ 」と、記憶から改竄したらしい』
「なんだそりゃ」
まさかとは思うけど・・都民を洗脳した本当の理由って、城を変える為───じゃあ無いよなあ。
『王族に・・真相を聞く?』
「・・いや、いい」
クチを開けばロクな事を言わない『箱』は情報収集以外、クチをふさいでいる。
ふさいでいる・・というか『三者を超えし者』が『箱』を、クチ無しに改造している。
ソレが数十個。
【オウゾク】の体内に有った、王族の魂の数だ。
『なら、その辺の事情は無視。
城から特別なチカラは一切感じない。
このまま進む』
『三者を超えし者』が若干、逸っている。
友達が・・『覇者』と『聖者』と『王族の子の魔女』が居るかもしれないからな。
最初は【オウゾク】の中に、その魂があるかと思って【オウゾク】の『箱』を色々やっていたんだ。
( 【オウゾク】の体内から【レッサーハウンド】が産まれた事から。)
───たとえ、王族が・・どれだけ魂を削っていていようと。
たとえ、原形が残ってなかろうと。




