396『少女と少年以外にも、食べている人は居ます。』
「えげつ無ェよな。
魔女とはいえ・・産まれたての小娘を利用するンだからよ」
<こ・・小娘ではない!
魔女は・・死しても、その記憶を失わぬ者───
赤ん坊のナリをしていて、その歳は・・>
「そういう事じゃない」
「覚悟の話だ」
各傭兵団の団長・副団長達が、俺を見る・・?
・・なんなん?
・・また俺、小娘扱いされてますのん?
「カンタさんは戦士っつう話ッス」
「はぁ・・?」
「戦士だから・・例え子供であろうと女性であろうと、共に戦場に立つ・・って話ッス」
・・んー?
「・・ソレってやっぱ、小娘って話じゃね?」
「んー・・覚悟の話ッスよ。
不甲斐ない自分で居る訳にはいかない・・っていう」
「??」
よくは分からんが・・そう語るジキアの横顔にちょい───
ドキッとするような・・力強さを感じた。
・・なら、俺がとやかく言う事じゃないか。
「でもモチロン、共に戦うだけじゃなく守りたいっていうか・・本当ならカンタさんのトラウマは、オレが治したかったッス!」
「あー・・」
ジキアの叫びに、彩佳が反応する。
「ふふん♪
まあ、年季が違うわ」
「年季て・・」
「僕もそういう魔法が欲しいなぁ・・彩佳姉ちゃん、なんか骨って有るの?」
「教えて欲しいッス」
「聞きたいのです!」
「くっ・・」
颯太の質問に、ジキアとビタは素直に・・ザレは悔しそうに聞き耳を立てる。
ソコまで?
「・・しょうがないわね。
幹太の、単じゅ───真剣な『癒しの想い』・・」
「単純、って言おうとした?」
「ソレで相手が弱味を見せた時、弱味に付け込───弱味ごと相手を包み込むのよ」
「弱味に付け込む、って言おうとした?」
いや、気のせい・・気のせいだ。
「私が『人食の " あにめ "』を見た時・・一番辛かった時にカンタお姉さんに癒されたのです!」
・・そりゃまあ、助けたかったけど。
アレはいずれ解けるようなトラウマだったろうさ。
ただな、ビタ・・アレは人食のアニメじゃないんだ。
「わ、ワタクシだって・・!
御姉様と出会ったあの日の出来事は、毎晩のオカ───素敵な思い出ですわ!」
オカ───何だろう。
・・いや、たぶん気にしたら負けのヤツだ。
「御姉チャン達ゃアそうやって、戦いの緊張感を感じさせねぇぐらいで丁度イイやな」
「ディッポ団長」
「・・はぁ~、俺にもタコ焼きってのをくれ」
「はい」
『箱』の聴取を終えたディッポ団長達が、疲れた顔でやってくる。
タコ焼きは、かなりの量を作ったからな。
まだまだ有る。
他の団長達にも、タコ焼きと飲み物を渡す。
「皆、ちょっと話しては・・疲れた顔して戻ってくるのが良く分かったゼ」
「まるで・・人を馬鹿にする為だけに、産まれてきたみたいな奴ですもんね」
あの王は・・一言一言が、感に障る。
まだ『箱』だから、耐えられるのかもしれない。
顔が付いてて、憎たらしい表情が分かったり・・手足が付いてて、腹たつリアクションされたら・・殺意を抑えきれなかったかもな。
「魔女は・・【空の口】の魂を削る実験台にされたらしいゼ」
「・・・・。
・・そう、ですか」
街破級たる【空の口】の魂は、未だ耐えている。
・・けど、彼女達は。
「自分達で、魔女のチカラを使えるようになったらソイツ等を───
・・ほんと、ブチ殺してやりてェよ」
「何処で、かは・・」
「コッチの『城』で、だそうだ」
なるほど・・。
「皆さん、大きな怪我はしていないんですよね?」
「ああ」
「では明朝、準備を終えたら出発したいと思うんですけど」
「おう、ソレで問題ねぇゼ。
皆に伝えとく」
◆◆◆
時間によって、空の景色が変化したりしない『青い世界』。
時計頼りに、キャンピングカーや秋原家に興味津々な騎士団を抑えつつ、一晩を迎えた次の日。
( 結局押しに負けて、女性だけで構成された白百合騎士団はウチで寝た。)
「よう、御姉チャン。
眠れたか?」
「彩佳とザレとジキアが・・俺のトラウマをしっかり治すとかってケンカを始めたんですけど、まあ何とか宥めて」
最初はビタも参戦してたけど、幼児らしく早々に眠気でダウン。
頃合いを見計らって、ピヒタとアナナゴさんとウーニさんが向かえにきた。
「・・・・。
疲れる事、しちゃあ駄目ですよ?」
と言うと、男二人からメンチビーム。
シャバゾウは引っ込んでまーす。
ピヒタは「 ? 」という顔。
うんうん、まだ暫くはそのままの君でいてくれ。
んで、彩佳達。
「そろそろ眠たいんだけど」と伝えて・・意味を察した彩佳が、慌てて自分に割当てられた部屋へ。
シレッと俺の部屋へと付いてくるザレに、彩佳が昇○拳をかまし・・顔を赤くするジキアに、父さんが改造スタンガンの電光を見せていた。
「父さん・・源太ちゃんは・・」
「今はだいぶ、落ち着いている。
いや、落ち着いているというより・・明日へと切り替えた、というべきか」
「少なくとも、明日へ疲れを残す事は無いんだね」
───等々あっての今日。
皆の体調・武器・各種物資のチェックを終え、問題無い事を確認。
騎士団詰所を出発。
金持ち区を出て、貴族区へ。
「ガロス・・道行く人はどうだ?」
殆んどが、貴族に仕える使用人か貴族相手に商売する人達。
未だ王族の洗脳魔法が効いているようで、トラックだとかに驚きはしても・・恐慌したり、敵対したりはない。
「希に居る貴族は、見知った顔だ」
「そうか・・」
そんなこんなで、ガロス宅。
「ガロス様!」
「おお・・御前・・」
【空の口】の洗脳は免れ・・主、ガロスのため王区へと潜入し───そのまま行方不明となった人が、居た。
「ず・・随分変わった乗り物で御座いますね・・。
御客様でしょうか?」
「御前・・?」
「最近、この家も何故か静かで・・ですが、しっかりとおもてなしをさせて頂きます」
・・ガロスの生き残った部下は───【人土村】か【ジート村】にいる。
少なくとも、【ジート村】の事を知らないという事は・・この人も王族の洗脳を受けているようだ。




