394『エネルギーには成ります。』
<ソレ以上は知らぬ、分からぬぅ!>
「本心───
の、ようですな・・国母様」
『みたい。
・・後は殺す以外、ガロスの好きにすると良い』
「分かりました」
王は、【空の口】が預言のチカラを持つと語ったけど・・・・その正体・目的・対象・その他がほぼ分からなかった。
ただ、自分達に利用出来そうな預言は・・【空の口】の目的である『魔女集め』を無視し、自分達の利になるよう活用していたらしい。
やや疲れた、というか・・ゲンナリした感じでコッチに来るので、タコ焼きを取り皿に移し、冷たい水と共に渡す。
『夢の中で、誰かと会話・・か』
「そもそも王族って、どうやって【空の口】の声を聞いてんだ?
肉体が無いんだろ?」
『魔力パスらしい。
極まれに短文で、言葉が届くそう』
「俺達の感情つき魔力パスみたいなモンか」
タコ焼きをホフホフしながら食う『三者を超えし者』。
・・あのタコ焼きもいずれ【スライム】に成るのかなあ。
「夢の中で、誰かと会話っつう事は・・預言は、【空の口】の能力じゃなく、その誰かのチカラか?」
『おそらく。
【空の口】にそんな能力は無かった』
「なら誰だ?
まず魔女なんだろうけど」
『少なくとも、自分の知る魔女に預言者は居なかった』
ホフホフしながら彩佳も意見。
「【空の口】サイドの魔女達が、色々調査して・・その調査結果報告が預言並みだとか?」
『う~ん・・?
確かに街破級の感覚を捉えやすい魔女は、何人か居た・・』
ガロスと源太ちゃんが其々、【ファフニール】と【ニーズホッグ】の事を王に聞いている。
けど、似たり寄ったりな内容みたいだな。
【空の口】は『街破級』の中の魔女を集めたい。
王族は、その過程の利益が欲しいみたいな感じ。
「利益じゃと?」
<コレから続々『街破級』が破壊される、と。
【空の口】は魔女が欲しい。
我らは、ソコから産まれる経済と・・『街破級』の魔力を欲した>
魔力を持つ魔物を食うと、その魔力を吸収出来る。
『村破級』の魔物ですら、莫大な魔力を吸収出来るんだ。
『街破級』の魔力は、大層魅力的だろう。
<【ニーズホッグ】は・・卵を預言にて探しだし、【連合】の盗賊を隠れ蓑に育てた>
「・・・・」
<【ニーズホッグ】の魔力は、【銀星王国】へと繋がる地底湖にパスを繋いでいたので【連合】で死のうと【銀星王国】へ魔力が流れる仕組みで・・>
「・・・・っ」
源太ちゃんが無言で、『王の箱』から離れてゆく。
・・トンでもない怒気の塊だ。
必死に、殺してしまわないように、耐えているんだろう。
息を静かに吐ききったタイミングで・・俺と颯太と父さんが、源太ちゃんを抱きしめる。
<【ファフニール】は・・アスェベタ家の人間と、モスマンの目を盗み、少しずつ復活しやすいよう魔力を送っていた>
「・・・・」
<『街破級』の体内に魔女が眠る事を知る他国は、魔女を・・知らぬ国は街破級の魔力や素材を欲した>
【ファフニール】を倒した時、パレード云々の話が在ったけど・・国民向けというより、外国の王に対する牽制やらナンヤラだそうだ。
「デロスは・・そんな下らない事の為に───」
ガロスもかなり堪えているみたいだな。
正直・・颯太が、皆が傷つけられた事はムカつくが───皆生きている以上・・俺より辛いだろう。
・・・・と、いった所で、ガロスと目が合う。
「アキハラカンタよ」
「・・えっ?」
「御前は、御前の怒り・・其のままでよい。
別に【オウゾク】を殺したとて、文句は言わなかった」
「・・でも」
「一団の主として、些か軽率とも言えるが・・御前のチカラの源は『ソレ』た。
変に遠慮すべきではない」
「───・・」
何時の間にか、源太ちゃんを抱きしめていた筈が・・逆に俺が抱きしめられていた。
源太ちゃんは涙に濡れつつ・・力強く頷く。
「・・・・分かった」
敵を倒すのが俺の役目。
なら、敵を倒すだけだ。
ガロスにもタコ焼きを渡す。
美味しくな~れ。
「じゃあ・・コレが取敢ず最後かな」
ある程度全員に食事が行き渡ったので、一旦料理をやめ・・俺も『箱』へと近づく。
「【空の口】からチカラを奪った・・ってのは、どういう意味だ?」
<・・『街破級』の肉を食べた者のウチ、何人かは世界が青く見えだした>
「・・・・」
<その内の、先先代の王の血を引く王族の末席の女が・・突然「 魔女が体内に入りこんだ 」と言いだした。
───ソレは、妊娠中だった>
「・・っ!
まさか・・!?」
彩佳が咄嗟に、大声をあげる。
他の皆は・・まあ、あまりピンとは来ないよな。
<産まれてきたのは・・魔女だった>
『・・転生?』
コッチの人に、輪廻転生という・・基本的には仏教の考えは無いし。
王と・・ファンタジー的なアレが咄嗟に分かる、数人だけが理解しているようだ。
<都合良く、その母体が死んだので我等で魔女を管理できた。
その魔女の魔法と知識で、【空の口】の魂の世界に、極僅かな『扉』を空ける事に成功したのだ!>
・・何だコイツ。
自分の親戚が死んだとか、嬉々として語り・・「凄いだろう、だから褒めろ」と言わんばかりの口調だ。
───キショクわりい・・。
微かな吐き気を堪える俺の代わりに、彩佳が『三者を超えし者』に聞く。
「そんな事をしたら【空の口】の復活が早まるんじゃ・・?」
『ソレは無い。
【空の口】の寝所がどうなろうと、【空の口】本人の魂が復活に相応しい状態まで癒されなければ復活できない』
<復活が早まる処か、寧ろ逆だ!
【空の口】の意識が薄い時を狙って少しずつ魔力を削っていった!>
その削った魔力を吸収したのか。
<ガロスよ・・我等を、全人類の敵【空の口】に組する者と呼んだな!?
違うぞ!
我等こそ、今代の英雄なり!>
削った魔力を得て、少しずつパワーアップして・・『洗脳魔法』だの『青い世界を作る魔法』だのを作っていった訳ね。
ショッパイなあ。




