389『vs【オウゾク】⑤』
「体内に、自分の物とは別の魔力回復用の・・扉!?
何ともデタラメだな・・」
「───ということは・・自己再生魔法も何時までも、ということであろう?」
『三者を超えし者』さんの記憶と、父さんの考察に、みんながそれぞれの感想を抱いてる。
傭兵団は、目の前の脅威に反応してるね。
「王族が・・【銀星王国】の主が・・真っ先に、そんな犯罪行為に加担していたとはな。
───国の貴族として恥ずかしい」
「国に・・今まで誓っていた忠誠は、何だったんだ・・!」
貴族のガロスさんや騎士の人達は・・『王族たち』だか【オウゾク】だかに、失望してる。
・・んぅー。
「僕・・幹太姉ちゃんに付いてくだけだから───裏切られるって、よく分かんないなあ」
「「「・・・・」」」
騎士団のみんなは・・僕に、怒った顔や悲しんだ顔を向けてくるよ。
・・でもガロスさんは。
「アキハラソウタよ・・言ってくれるな。
───縋りたくなるではないか」
ガロスさんが、何とも言えない顔になってる。
ガロスさんの言葉に・・騎士の人達は「 えっ!? 」っていう顔をしてるね。
「・・ふん、人間とは不便だね。
生けとし生ける総ては【巫女】に従えていれば、ソレで良いっつうのに」
山柄さん達、【人土】のみんなは深く頷いてる。
・・うーん。
僕と幹太姉ちゃんは、【人土】になる前から仲良かったから、ちょっと違う気もするけど・・。
「言ってくれるな、ヤマエ殿。
人間とは・・例え魔法使いで在っても、嘘をつく。
───魔力パスで繋がる世界か」
「ガロス殿!
ウチの幹太は、魔力パスが繋がっているから人々を信じる訳ではない!!
山柄さん達も!
幹太の魅力は【人土】で在ることと関係ありません!」
「まあ、ガロス殿もさっさと家族を持てい・・っちゅう事じゃな。
・・幹太に拘らず」
わわっ!
何か、みんなで言い争いが始まっちゃった!?
「颯太・・アンタねえ。
言い出しっぺが何、慌ててんのよ。
幹太ラブな連中に、ンな事言ったら───そりゃ、こーゆー事になるでしょうが」
「ん・・んぅー・・?」
「流石、我が妻だ」
「が、ガロス様っ!?」
「誰が誰の妻だって!?」
「ウチの子を貰うっちゅうんなら、ソレに相応しいチカラを見せて貰おうかのォ・・」
「幹太さんが偉大な【巫女】である事に、違いはないんだ!」
「・・一応、彼女の傭兵という立場も忘れないでくれ」
『今は英雄』
<エクス・プレッ───>
「「「 うるさいっっ!!! 」」」
よ、良く分かんないけど、みんなでケンカしてる訳じゃないみたい。
◆◆◆
「【オウゾク】が『禁断の薬』を使ってるんだとして───『聖者』の言うタイムリミット・・四半日はとっくに過ぎてるわよね?」
『二千年前と違うレシピなのか、【オウゾク】と化した事でタイムリミットが変化したのか・・さりとて、無限では無いはず』
もう結構【オウゾク】と戦ってるのに、魔力が減らない状態が続いているよ。
「・・『王族たち』は何時、この薬を飲んだんだろうか」
「オジさん?」
「『街破級』や、地球侵攻用の魔物が全滅した時か?
この青い世界を作る時か?
『城』を破壊され、逃げられないと悟った時か?
この防壁魔法を破壊した時か?」
『・・希釈した物はチョコチョコ、飲んだかもしれない。
だけど、タイムリミットが無限とは考えなかった筈だし・・今日だと思う』
「・・・・」
父さんが考えている。
・・カッコいいなあ♡
「・・源太ちゃんさん!
『ヴォイド攻撃』は感じましたか!?」
「うん?
そういや感じんのう・・幹太の異世界物質迎撃魔法が効いとる───っちゅう訳じゃ無さそうじゃし」
「僕もだよ」
ココへ来る前、幹太姉ちゃんから受けた各種防御魔法はまだ掛かっている。
・・けど、ソレ等は発動してないんだよね。
「・・もしかして『禁断の薬』と『ヴォイド』は、相性が悪い?
幹太の防壁魔法を破った『アレ』で打ち止めとか?」
『言うなれば、真逆の存在。
ソレは有りうる』
「なら・・危険だが、ヴォイドを乱発させれば───」
「オジさん・・ソレって!?
颯太と源太ちゃんは、自分達の防壁魔法じゃ防げなくなるから・・凄く危険なんですよ!?」
父さんは、僕たち家族が危険な目に合うのを凄く嫌う。
ソレは僕達だって、おんなじだけど・・父さんは " チート " じゃないから、全部おんなじって訳じゃない。
「───うん、ツラいよ。
だけど・・源太ちゃんと颯太の怒りと同じ物を、私は【オウゾク】に抱いている」
「仁一郎君・・」
・・でも。
" チート " 同士の魔力パスじゃなくても、伝わってくる父さんの感情。
───恐いぐらい、心強い。
「また・・【空の口】と『王族』と『薬』の繋がりを状況証拠的に考えれば───幹太のトラウマ・・【レッサーハウンド】も、『王族』が絡んでいる可能性が出てきた」
「ソレは・・まあ、0%では無いでしょうけど」
「1%でもありゃあ十分じゃて・・。
ほーか、ほーか・・。
ほぉーーなんかああ・・」
幹太姉ちゃんが今、苦しんでいる原因・・敵・・!
「私は、コイツを殺す事に・・躊躇いは無い」
【オウゾク】を取り囲む、傭兵団員と騎士団員のメンバー交代時・・【人土】のみんなの援護射撃の時。
・・父さんが、変わったボウガンの矢を取り出す。
「───本当は、『対【空の口】戦』用の『とっておき』だったんだけど・・」
「オジさん、ソレは?」
「以前、幹太とザレちゃんとビタちゃんに了解を得て、抜いた血で作った鏃つきの矢だよ」
「え"っ !?」
「幹太を戦わせたくなかった時期に、私が変わりり成れないか───と、思って作った物だけど・・幹太の敵は幹太に任す」
彩佳姉ちゃんが、物凄い小声で「( オジさん・・流石にソレはサイコだわ・・ )」って言ってたけど、どんな意味だろう?
「私は私が出来る事をやる。
ソレ以外の心配事は、家族の為にならない。
───生まれて初めて、明確な殺意を抱いてやっと分かったよ」
父さんが・・【人土】達の射撃に合わせて【オウゾク】の防壁の隙へと回り───撃つ。
完璧には刺さらなかったけど・・この矢は、鏃さえ刺されば問題ないからね。
<・・ォ・・・オオ・・!??>
「暴れるんじゃないわい、親不孝モンの馬鹿共がこの一撃をっ!!」
「父さんの一撃!
僕達、家族の一撃だあっ!」
鏃を、【オウゾク】の体内のより奥深くに叩きこんでやる!
「・・はあ、また秋原家劇場に巻き込まれた気もするけど・・鏃の部分の魔力が、グチャクチャに掻き乱れてってるわね」
『ハ○スもビックリだ。
・・だけど、【オウゾク】が己の体内でヴォイドを使い始めた』
「颯太! 源太ちゃんさん!
魔法使いの皆も!
ヴォイド攻撃に気を付けて!」
父さんの言う通り、【オウゾク】がヴォイド攻撃を始めて・・幹太姉ちゃんの異世界物質迎撃魔法が反応し始めたよ!
「【オウゾク】の体内魔力量に変化アリ!
現在値の変化・・更に、『扉』と思われる魔法の変化も確認!」
レーダーでなんか見てる【人土】の人が叫ぶ。
・・父さんの作戦が成功したんだね!
よぉーしっ!




