386『vs【オウゾク】②』
「みんな・・大丈夫?
───そう、無理はしないでね」
彩佳姉ちゃんが、周りを飛ぶクワガタに向かって語りかけてる。
アレは・・リーダークワガタを通して、クワガタ全体に指示を出してる時だね。
「みんな。
クワガタが酷く怯えていて・・防壁の様子を見る事が出来ないの」
「あ、彩佳ちゃん・・そのクワガタは」
「『街破級【アジ・タハーカ】』にも立ち向かってくれた、歴戦の勇士達よ」
「つまり、幹太の防壁の向こうに居る奴は───」
<ヴォ
ォ
イ
ィ
ド ォ>
「「「 ・・っ!? 」」」
───ギャンッ!
人間の物とは思えないような声が辺りに響いた・・かと思ったら、幹太姉ちゃんの防壁の方角から何か───何百枚ものガラスを一瞬で割ったみたいな音がした。
音の後・・クワガタ達が一斉に彩佳姉ちゃんの元へ飛んでくる。
「───・・そう。
幹太の、防壁が・・突破されたのね。
分かったわ」
クワガタ達が、フラフラしてる。
あの感じ・・見た事あるなぁ。
国境の村で『三者を超えし者』さんを初めて見た時・・魔力吸収を受けたクワガタ達がこんな感じで弱ったんだ。
・・心と魔力、その両方にダメージを受けた時の飛び方だね。
「・・って訳で、幹太の防壁が突破されたわ」
「い、今までのヴォイド使いでは突破出来なかった、幹太の防壁を突破したという事は・・」
<え・・エえクスす・プレれッシャーぁああ・・!>
「・・皆の者っ、下がれぇ!」
また、人間の物とは思えない声───と、ほぼ同時に源太ちゃんが叫ぶ。
上を見上げれば・・トンでもない量の土が降ってきた!?
源太ちゃんは、叫ぶと同時に父さんと彩佳姉ちゃんを抱き抱え。
僕は、幹太姉ちゃんが僕たちの遠距離攻撃用に幾つか作ってくれいた3mぐらいの土ブロックの一つを蹴っ飛ばす。
騎士団の人達は戦争の経験からか、人の命令で咄嗟に動く事に慣れてるみたい。
傭兵団は勿論、【人土】のみんなもペリオラさんから『対、街破級』の戦い方が仕込まれているから動けるようだ。
全員ギリギリだけど、何とか逃げられたよ。
「幹太さん・・は、無事だね!
み、みんなはっ!?
怪我は無いかいっ!?」
「は、はい。
車も数台、軽微のダメージを負いましたが・・移動・戦闘に問題は有りません」
「颯太様の岩蹴りで、土砂に大穴が空かなければ・・ヤバかったですけどね」
「騎士団っ!?」
「被害、ナシ!」
「傭兵団も・・かすり傷か」
確かにみんな助かったけど・・降り注いだ土砂のせいで、一瞬で地形が変わっちゃたよ。
───こんな事、村破級が幾ら居ようと出来っこ無い。
「ま・・街破級の魔物を造ったのかしら」
「しかし、どうやって・・」
『魔物ではない』
「ぎょわあああぁぁ!?
・・って、またアンタ!?」
彩佳姉ちゃんが、また変な悲鳴をあげてる。
降り注いできた大量の土が・・急に盛り上がったから。
『驚かせて済まない。
だが巨人を造るのに、ちょうど良かった』
『三者を超えし者』さんが土砂を利用して造った巨人に・・初めて見る人は、彩佳姉ちゃんほどじゃないけどビックリしてるよ。
・・あれっ?
「幹太姉ちゃんと戦った時より、巨人が大っきいね?」
『【人土村】に居た時、ヤマエウラたちから面白い【スライム】を沢山もらった。
自分もソレなりにパワーアップしている。
スーパードイツ人!』
何かよく分かんないことを言ってる『三者を超えし者』さん。
( ディッポ団長が幹太姉ちゃんによく言ってる、御姉チャン語みたいなアレかな? )
『・・それより。
この土砂に残る、残存魔力は魔物のソレじゃない』
「では・・」
『おそらく、王族の物』
「王族の・・。
もしかして、【アルラウネ】【レッサーハウンド】の群に次ぐ───王族が群で攻めてきた?」
『たぶん。
数十人分の、人間の魔力を感じる』
ガロスさんが『三者を超えし者』の言葉で、前に出てきたよ。
「こ、国母様!
如何な王族数十人とはいえ・・これは、もはや街破級レベルの魔法!
やや無理が有るのでは・・!?」
『だが、ソレ以外の魔力を感じない』
「───二人とも!」
言い争うガロスさんと『三者を超えし者』さんを、山柄さんが止める。
道の向こう・・この土砂を飛ばしてきたっぽい奴の姿が見えてきたから。
「な・・なんじゃあ、ありゃあ?」
「げ、源太ちゃんさん?」
「颯太、何か見えるの?」
僕や源太ちゃんみたいな、 " ちいと " の視力を持ってない人達が、僕達を見てくる。
「う、うん・・。
人が・・人がいっぱい居るよ」
「『三者を超えし者』が言う、数十人の王族ね?」
「す・・数十人って言うか・・」
───ずっ・・ずずっ・・
「一人が数十人って言うか・・数十人が一人って言うか・・」
───・・ォ・・・ア・・ァ・・・
「一人から、手とか足とか・・あ、頭とか・・いっぱい引っ付いてるんだ!」
「はあっ!?」
なんて言ったらいいんだろ?
前に幹太姉ちゃんが、色んな漫画やゲームのモンスターをジキアさんやザレさんに見せて、「こんな魔物は居るか?」って聞いてた事があったけど・・その中の、『ケンタウロス』? が近いのかなあ?
アレは、人間の下半身が馬だったけど───
向こうからやってくる『王族』? は・・人間のオシリあたりから別の人間が胴体から生えてたり・・手の代わりに、人間が胴体から生えてたり・・。
とにかく、ムチャクチャな見た目だ。
───・・ォ・・・ア・・ァ・・・
「あー・・アタシも見えたわ・・。
メガ○ンのレギオンを実写化したらあんな感じかしら」
『・・あの肉体の中に、一人一人の魂は感じる。
───『アレ』は『王族』の一人なのではなく、『アレ一つで王族』だ』
「『王族』って言う名前の生物って訳ね・・」
───・・ォ・・・ア・・ァ・・・!
え、エクス・プレッシャーああ・・!
『来る!』




