382『vs【レッサーハウンド】軍団①』
<───そうやってェ♪
前【人狼の巫女】を殺したので御座いますよぉー♪>
「・・・・」
【人狼の巫女】、ザレが敬愛する女魔法使いが・・防壁に『開けさせた』穴。
ソコから出てくるのは【レッサーハウンド】の群と・・やたら軽薄そうな声。
<あららー?
【巫女】の敵を見つけても、全く悲しむ様子すら───ヴォイド!>
「皆さん!」
<・・っと、また失敗ですか>
ある程度【レッサーハウンド】を退治した所で・・突然『王位継承権を失った道化』を名乗る者の声が、防壁の穴の向こう側から聞こえきたのだ。
<土埃に魔力を載せて・・そんな泥臭い方法で、ヴォイドを見抜かれるとはねえ♪>
「御姉様の大小自動追尾魔法・・小半力にすら、遠く及びませんが・・」
<やれやれ。
ザラクス殿に里外への興味を植え付け、民ごと誘き寄せた者の報告ですと【人狼】は魔法を使えないハズなのですがね?>
『道化』が言う事には、ザレの敬愛する女魔法使いが奮った数々の御業により・・王族は、大きく追い詰められているらしい。
完全洗脳者を失い。
数多の魔物を失い。
街破級を失い。
・・手駒を、全て失い。
慌てて『城』を錠にして『魂の世界』へと逃げてみれば・・錠たる『城』を破壊され───仕方無く、最後の切り札をきっているのだと言う。
「姿も見せず、卑怯な手段で【巫女】に手をかけ、邪悪な方法で産みだした犬の後ろから不意打ちしか出来ない者に・・用など有りませんわ!」
<文句ならこの馬鹿げた防壁と、未だ燃え続ける爆炎を作った者に言って下さーい♪
どうせ、まだ『爆炎の元』は埋まっているのでしょう?>
「何を偉そうに!」
<【空の口】のように、数匹の『源・街破級』を産みだすより・・山のような『村破級・道破級』を産みだす方が有用でしょう?>
ソレが・・青い世界にて眠る『三者の魔女』を癒し、守っていた前【巫女】を殺し。
『三者の魔女』の魂を奪い。
王族の血を引く女に、その魂を封じ込め、疑似的に受肉・転生させて新たな生物を生み出す魔法の苗床とし。
産みだされた魔物・・【レッサーハウンド】の群であるという。
「下種極まりますわ・・!」
【人狼】が反応した先には、『覇者』が産みだしていると思わしき【レッサーハウンド】が現れた。
ならば【人花】が反応した先には、『聖者』が産みだしていると思わしき【アルラウネ】が居るのだろう。
───と、なれば・・。
【人土村】を襲った、【元・人狼の長】との事は・・ソレなりに心の決着を着けた自分達と違い、愛する姉を殺されたビタ達は───
いや、彼女達とて『三者』の子孫たる『三種族』。
ディッポファミリー傭兵団もついている。
死ぬ事など無いだろう。
ザレは、年下の友達で仲間の笑顔を思いうかべる。
<上手い事・・ソチラの総大将の足止めも出来ていますしねー♪
・・さっさと死んで下さーい♪>
───【レッサーハウンド】は御姉様とソウタ様のトラウマ。
ケリは御姉様たち自身が着けねば成らぬ事でしょうが・・その為にワタクシ自身に出来る事もあるはず───
そう・・願いをこめて、ザレは。
ザレと、ザレ率いる【人狼】の民と、ザレの義理の母たるリャター率いる白百合騎士団は。
「ワタクシ達を舐めないで下さいませっ!!」
次々と現れる、【人狼】から別たれし・・人類の敵性種族、【レッサーハウンド】を仕止めてまわる。
<流石、今代の英雄たち♪
中々ゆさぶりには乗ってくれませんねえ・・>
「当然ですわ」
<せっかく予言に従い、『英雄の産まれし場所』に【レッサーハウンド】をけしかけたのも、無駄になりましたし・・>
「───は?」
『道化』の、何気なく呟いた一言に・・反応したザレ達と、その細やかな反応を見逃さなかった『道化』。
<おや?
御存知ない?
本当に?
仲間なのに?>
「・・くっ」
嬉しそうに笑う『道化』。
虚を突かれたザレ。
悔しさが込み上げてくる・・が。
「あらあらぁ~。
ザレ、しっかりしなさいなぁ~?」
「ザレ様、犬を皆片付ければ・・アレが如き雑魚など、好きなだけ話を聞けます」
「学園長・・タロさん・・」
人類最強の女性騎士、リャターと。
三種族の戦闘特化種族長、タロが。
優しくザレの背中を押してくれる。
・・なら、負けはしない。
「───申し訳有りませんわ!
敵は【レッサーハウンド】。
その奥からの、援護射撃に注意して下さいませ!」
「了解よぉ~♡」
「ザレ様の下に!」
<やれやれ・・ヴォイ───>
「「「スナイパーライフル隊、発射!」」」
「「「ワイヤーアンカー、一斉投擲!」」」
<・・っとと!?
今、その武器コッチまで届きましたよ!?
ソッチの・・金属で出来たロープ?
も、馬鹿げてますし・・【人狼】と騎士団を名乗るわりには、傭兵じみた戦法を使ったり、未知の技術を使ったり───>
「ザレっ!
サポートは任せなさい!」
「みんな・・有難う!」
今でこそ、白百合騎士団を名乗り所属している女学園生徒達。
が・・後の所属希望先は、『イケメン集団』であったり、『心優しい魔物の里』であったり『異世界のイケメンの職場』であったり。
ザレの姉妹達は、貪欲に様々な武器・戦法を学び実践してゆく。
<たかがソレっぽっちの人数で、鬱陶しいですねぇ・・>
只でさえ防壁が邪魔で、唯一の穴からしか潜入できず・・しかもその穴の前に立つ事すら困難なのだ。
・・いずれ魔力ぎれ弾ぎれは起こすだろう、その前に体力がきれるかもしれない。
コチラの手駒は山程いるのだ。
待てば、勝つ。
・・だが、ココで手間取るのは。
手柄を立てられないのは。
いざという時に役立たないと、思われるのは・・後の、世界征服をした後で、自分の評価が落ちる。
ソレだけは避けたい『道化』は、なんとか防壁の中に入らず・・声だけで敵の集中を乱し、撃破したい。
その為には、喋り続けるしかなかった。
<実は・・【空の口】は、この一年ほど寝言を言うように成りまして・・ソレがまあ、ピタリと当たるんですなあ♪>
「ザレ」
「ええ、学園長」
<例えば、【人狼】の里の位置♪>
「・・・・」
ピクリと反応する【人狼】達だが、無視をする。
<【ニーズホッグ】の卵の位置>
「・・・・」
源太や、ペリオラ傭兵団に話を聞いていたリャターは微かに反応するが無視をする。
<最近では『ハエ』が混ざる、と♪
英雄という害虫が、この世界へ入り込む位置ですな♪>
「・・・・」
皆、僅かばかり反応するが無視をする。
・・然れど、時間の問題であった。




