379『vs【アルラウネ】軍団①』
≪テきコロす、テキこロス、てキコろス・・≫
「へっ・・『村破級【アルラウネ】』の群れかよ・・!
威勢よく、啖呵を切ったは良いが───いち『対、村破級傭兵団』如きの仕事じゃあ無ェな」
ディッポファミリー傭兵団団長、ディッポは・・目の前の『人間女性の形をした魔物』の群れを見て・・軽く絶望する。
そういえば、過去には群れの【アルラウネ】に襲われて滅亡した街も有るとか。
嫌なことを思いだしちまったゼ、と・・軽く嘆いていると───
「安心するのです、ディッポさん!
例え群れで在ろうと、植物の操作権は絶対奪わせないのですよ!」
ふんすっ、と・・鼻息を荒くする5歳児の幼女が、隣で宣言する。
「・・はン。
さっきまで、自我を無くしてた小娘が偉そうに」
「そ・・ソレは、ちょっと『敵』がいっぱいで、ビックリしただけなのですよっ!?」
幼女・・【人花の巫女】ビタが顔を紅くし、ワタワタと狼狽える。
歳相応の、可愛らしい反応だ。
「今は、ゆっくり冷静に【アルラウネ】共をブチ殺したいのです!」
言っている台詞は・・歳相応とは言い難い、物騒極まりない物だが。
「そうね、ビタ。
私達【人花】の使命は【アルラウネ】共の皆殺し。
【アルラウネ】を創りし【空の口】の封印だもの」
「ピヒタ、もう大丈夫であるか?」
「ええ・・アナナゴさん、ウーニさん。
御迷惑をかけました。
・・貴方方を襲う植物は、私が全て防いでみせます・・♡」
「う、うむ」
「た・・頼むよ」
「ワタシも手伝おっか? ピヒタ?
一人で、二人の男を守るのは大変っしょ?」
「な、なな、ナニを言っているのっ!?
馬鹿言ってないで、持ち場に付きなさい!」
「あははっ、ハ~イ♡」
【人花の巫女】と【人花の長】が、冷静さを取り戻した事により、【人花】の民達もまた・・冷静さを取り戻していた。
【人土】や【人狼】と違い、【巫女】や長とは家族のように付き合う【人花】として・・茶化しあうぐらいに。
「( あの、『色気より食い気』だったピヒタを射止めた男・・って事で、御二人は【人花】の女達で話題なんですよ♡ )」
「( ファッ!? )」
「( もし、もうちょい女が欲しくなったら呼んで下さいねぇ♡ )」
「あっ、あなた達ぃ!?」
「・・・・・・」
ディッポは、
「 伸びた鼻の下、怪我してません?
良い傷薬が有りますよ? 」
「 と、唐辛子にしか見えないのであるが?( 絶望 )」
などと言う団員達を見て、自分ばかり絶望しているのが馬鹿らしくなってくる。
「・・はあ。
御姉チャンの知り合いはみんな、緊張感ってヤツが無くなっちまうなァ」
「ディッポさんも、その一人なのです」
「・・はっ、違えねェや」
【人土村】盟主。
今代の英雄。
単独による街破級討伐者。
『城』を破壊せし者。
異世界から来訪せし乙女。
・・この場に居る全ての者たちの中心に居る者。
アキハラカンタ。
彼女を守るため・・ディッポファミリー傭兵団と【人花】達は、人間女性の形をした植物───『村破級【アルラウネ】』の群れに相構える。
◆◆◆
「弓隊、構えぇぇ!」
ヒトゥデ、シャッコ、アナナゴ・・ディッポファミリー傭兵団の弓矢部隊が弓矢を構える。
「ビタ嬢チャン。
【人花】と【アルラウネ】は、植物を操れる範囲は違うんだよな?」
「当然なのです!
あんな【人花】の紛い物とは比べ物にならないぐらい、私達は遠くまで植物を操れるのです!」
「なら、ココが【アルラウネ】の操作圏内に入るまで植物を操らンでくれ」
「?」
「ココに【人花】が居ると気づかず・・ノコノコやってきた阿保ズラを───見てェだろ?」
「・・ッ!!!( ブンブン! )」
ディッポの案に、「我、天啓を得たり!」 と言った顔にて高速で首を縦に振るビタ。
【アルラウネ】の植物操作圏内で、【アルラウネ】の操作権を奪うと・・ココに【人花】が居ると気づかれてしまうだろう。
そう考えてディッポは、ビタを通して【人花】に待機命令を出す。
そして、ディッポファミリー傭兵団の弓矢部隊射程に入った瞬間───
「今だア、射てェェェ!」
───一斉に矢が放たれる。
ドコからともなく現れた蔦に、雁字搦めとなった【アルラウネ】達へと。
【アルラウネ】はパニックに成りつつ、その蔦を操作しようとするも・・より上位の操作権により、手も足も出ない。
偉大なる大魔女が産みだせし自分たち・・その唯一の天敵を本能で理解した彼女らは、慌て後続の仲間達に危険を伝えようとする。
が、ソレより早く・・矢に討たれる。
僅かに残りし時で・・自分たちを討った者を見れば、ソイツ等は天敵でも何でもない唯の人間。
何故───と、答えに辿りつく前に【アルラウネ】達は・・唯の人間が放つ弓矢で息絶えてゆく。
・・彼女達は知らない。
唯の人間だと思っていた彼等は・・【人花】より尚恐ろしい女魔法使いの手料理により、常人とは比べ物にならない程の身体強化魔法の使い手になっていた事を。
「よーし。
ジキア、行けるかァっ!?」
「了解ッス!
カンタさんが使う魔法の、原型武器・・食らうッス!!」
ディッポファミリー傭兵団が使うバスの上部・・多くの異世界人は『変な鉄棒に、ジキアがしがみついている』と勘違いするだろう。
実際・・【アルラウネ】の中でも目の良い一体は、自分を狙う『弓矢でもなんでもないソレ』を、鼻で笑っていた。
・・次の瞬間、頭部ごと鼻を失うまでは。
「た・・ " 対物ライフル " っつったか・・。
日本人ども、なんちゅう武器をコッチの世界に持ち込みやがったンだよ・・」
数km先まで一条の【アルラウネ】の穴が出来た。
ジキアも、女魔法使いの手料理により、特殊な身体強化魔法を使うとはいえ───所詮、この前まで半人前の13歳だったのだ。
ソレがたったの一撃で幾体もの『村破級』を撃破する。
『対、村破級』傭兵団団長、ディッポは・・クチ端をヒクつかせるしか無かった。




