375『非幹太三原則。( 要らぬ発想を )持たず、( 思いついたからってヒョイヒョイ )作らず、( 平穏に生きたい人の所へ )持ち込まず。』
「よし。
ザレ、ビタ、どんどん洗脳を解くぞ」
「分かりましたわ」
「了解なのです」
騎士団詰所から、颯太や源太ちゃんに傭兵団と【人狼】が次々と、騎士達を連れ出してくる。
騎士たちは、眠る者、朦朧とした者といった感じ。
希に、多少フラつくだけの騎士もいる。
「ひょ、ひょにょれぇ~・・!
ひひょうみょにょぉ~・・!」
「不特定多数に眠り薬を使うから、効きすぎとか意識して・・ちょっと少な目にしすぎちゃったのかな」
或いは、皆が突入する為に眠り薬を風で除去したのが早すぎた?
「仮に全く効いていない騎士が居たとしても・・あのメンバーに不意打ち出来る者など居ませんわ」
「そりゃそうか」
「騎士団詰所は忍者屋敷では無いのです。
不意打ち不可能なのです」
リャター夫人を通じて、騎士団の凡その強さを知るザレ。
以前作ったアスレチックツリーハウスが皆に大好評だったビタは、興味津々な忍者屋敷を例えに出す。
確かにあんま、防御力は無さそうだ。
「おっ、お~けのひぇきろもめ~・・!」
「王家の敵?
【空の口】の敵じゃなくて?」
「ぉ、お~け・・に、じぇったいにょ、ち、ちゅうしぇいをぉ~~!」
「王家に忠誠?」
『・・やはり【空の口】の洗脳魔法が、王族に上書きされている』
眉間に皺を寄せる『三者を超えし者』。
「【空の口】と王族について・・は、今は後回しにしよう。
それより・・『対、【空の口】装置』である俺達【三巫女】は、王族の洗脳でも解けるのかを試さなきゃな」
「そ・・そうですわね!」
「どんな悪しき魔力パスでも、蔦で絞め殺してやるのです!」
「ああ」
弱点属性を突けなくなったけど・・洗脳解除の為、色々やってきた今までの努力が無駄になりはしない。
魔力操作その物には、問題無い。
攻撃手段は有る。
「はっ・・はっ、はにゃしぇぇ~・・!?」
「「「洗脳解除っ!」」」
・・・・。
・・うーん、何て言うのか。
今までは固いロープをゴリゴリ切っていたのを、今回はグニャグニャ伸びるゴムを切ってるイメージかなあ?
刃を当てても、何処までもゴムが伸びてゆくだけ・・みたいな感じ。
「気色悪い感触なのですぅぅ・・」
「【空の口】の渇いた敵意と、王族の粘着質な悪意の違いと言いますか・・」
「うん、同感。
でもヤらなきゃな。
ビタは絞め上げて、パスを固める事に。
俺は吸収して、パスを劣化させる事に。
ザレはパスを噛み千切る事に、集中してくれ」
「「はい( なのです )!」」
面倒臭い洗脳パスでは有ったけど・・強度そのものは、【空の口】の方が圧倒的に強い。
骨さえ掴めば───
「「「行けええっっっ!!!」」」
───ブチッブチッブチッッ!
「よしっ!
切れたぞ!」
なら次の騎士だ。
突入部隊は、どんどん詰所の騎士を救出している。
俺達もどんどん救わねば。
◆◆◆
半数ぐらい、騎士達の洗脳を解いた頃。
( 『三者を超えし者』は傍観。
俺ほどの魔力は無いから温存したい・・という理由、らしい。)
「・・んー?
なーんかさっきからパシパシと、コッチに干渉あるなあ?」
「干渉・・ですの?」
「ああ。
なんつーか、ココを取り囲む防壁魔法を外そう外そうとしてるっつーか」
「敵・・ですかね?」
「たぶん・・。
ソコまで強かぁ無いけど」
俺が・・家族を、仲間を、恩人を、守る為に張った防壁魔法なのだ。
生半可なチカラでは作ってない。
「『攻撃』しよう・・では無く、『外そう』としている───か。
『三者を超えし者』さん。
今我々はヴォイド攻撃を受けているのでは?」
『可能性は高い』
父さんの質問に、『三者を超えし者』が答える。
・・ヴォイドか。
確かに・・防壁魔法を張った端から、消されている感触だよな。
───消された端から、張り直しているので、問題無いけど。
「大した事無かったから、ついコッチを優先したけど・・一番最初の干渉は、カウントダウンの『ゼロ』の瞬間だったんだよ」
「なるほど・・つまり騎士団は囮に使われたんだな」
「どういう事ですの、御義父様?」
「王族、もしくは、王族のヴォイドを借り受けている者は───
皆が騎士団詰所に突入する瞬間・・つまり皆の意識が一極集中する瞬間を狙ったんだよ、ザレちゃん」
「だけど幹太の防壁が堅すぎたって訳ね」
「ソレでは今、王族( か、そのチカラを使う者 )の妨害を受けているという訳ですわね?」
「おそらく、だけどね」
俺達を、追い囲んで一網打尽にしたかったっつう事ね。
「王族が、騎士団詰所に時限爆弾とか地雷とか仕掛けてたらヤバかったなあ」
『そんな技術は当然無いし、同じ働きをする魔法も無い』
「んー・・。
作ってみるか・・」
『貴女が言うと、シャレに成らない』
「シャレじゃ無いし」
ゾッとした顔をする『三者を超えし者』。
「【巫女】様。
一応、我々も出来ますが」
『貴方達が言うとシャレに成らない』
「シャレでは有りませんが。
【巫女】様の炎魔法燃料用に、城を破壊出来る程度には用意していますが」
『・・・・』
まあ、固まっている『三者を超えし者』は放っておいて。
・・ヴォイドなら。
「広域時空震探査魔法!」
『魔力』と『異世界物質』が触れた時に起きる電波障害。
この電波障害を・・嘗ては、携帯や無線機の電波を使って調べていた。
けど・・【人土村】をヴォイド使いが襲ってきてからは、俺だけでも調べられるよう練習したのだ。
「居た・・北北西に800mぐらい!」
「ど、どうするの?
また颯太と源太ちゃんを人間魚雷に使うの?」
俺が好き好んでやった、みたいに言わんでくれる?




