374『磔、火炙りの刑。』
騎士団詰所。
無人の敷地内で・・唯一、人の気配がする場所。
───殺気渦巻く、場所。
「リャター夫人。
あの建物を、全騎士団が使用しているんですか?」
「いいえ~。
騎士団は一団が4~50人で構成され、212団存在するのよぉ~」
凡そ一万人。
あの建物は4団が使用し、同じ施設が金持ち区全体に50存在しているそうだ。
「・・って事は、彼処は白百合騎士団と、他3団の騎士団が居る場所ですか」
「ええ」
まあそりゃそうか。
何となく『軍』として、首都全ての騎士団が集められている、と、思い込んでいたけど・・治安維持の『警察』として見れは───
細かく少人数で別けるべきだよな。
「リャター夫人、彼我戦力差は・・」
「我が白百合騎士団は強いわよぉ~・・って、言いたいけど。
・・こちらの方が、圧倒的に上ねぇ」
「なるほど」
騎士団は、戦時は兵隊。
平時は治安維持。
どちらも、『対、人間』だ。
此方は主戦力はディッポ団長たち、傭兵団だけど( 三種族に、戦争経験は無い為。)地力が違う。
「今回、敵は非殺。
出来るだけ怪我もさせずに制圧したいと思います」
俺の作戦に、【人狼】がブスッとする。
騎士団が憎いから───
・・ではなく、この手の作戦は【人狼】が一番苦手たから。
苦手というか・・無血制圧能力において【人土】の魔力吸収、【人花】の植物操作が有用すぎるんだけど。
「まず俺が、風の空間内爆発魔法を使います」
「防壁魔法で敷地を囲んで、内部空間に風魔法を撃つのね」
彩佳の説明に頷く。
「風その物は『そよ風』・・中の人間が気づくか否かってレベルだけど、中の『人間』と『眠り薬』を外に漏らさないようにします」
眠り薬、という俺の言葉にビタの顔が「 パァッ 」と、明るくなる。
・・良い子だなあ。
「眠り薬になる植物は沢山あるのです!
一瞬眠るものから、一生眠るものまでっ!!」
「さ、30分ぐらいのが良いかな」
「有るのです!」
という訳で、防壁魔法を展開。
まず騎士団詰所を取り囲むように、四方天井を作る。
床は、抜け道は無いけど地下室はあるとの事。
【人土村】以外・・女学園に作ったのを除いて、この国のトイレは全て汲み取り式。
上手い事、防壁魔法を床に這わせる。
「あとは防壁魔法の管を作って・・」
手で輪っかを作る。
見えない防壁魔法の管の入口。
「はい、こん中に眠り薬を入れて」
「はいなのです」
「私も入れたいです」
「私も!」
「俺も!」
【人花】達が、我も我もと寄ってきた。
あんま眠り薬を入れたらヤバそうなので一人辺りは極小量。
「ある日・・自分家で寛いでたら、知らねェ間に脱出不可能な牢屋に取り囲まれちまう───」
「戦時中・・拠点で身も心も疲れきった所を見えない牢屋に取り囲まれてしまったら───」
「街破級との戦いの最中・・孤立した所を一対一の状況にさせられたら───」
何か・・各傭兵団の団長・副団長たちが、『誰の想像したシチュエーションが一番嫌か合戦』みたいなん始めた。
そ・・ソコまで残酷な事しないよ?
『自分( の分身 )は、熱ごと爆炎の中に閉じ込められた。
どんなに足掻いても、逃げられなかった。
足掻いても、足掻いても、足掻いても、足掻いても、足掻いても、足掻いても、足掻いても、足掻いても逃げられなかった』
「「「・・・・」」」
ひ、人を残虐処刑人みたいに言うな。
◆◆◆
「そろそろ30分ぐらいかな。
合図と共に空間内爆発魔法を解くので、潜入特化の人達で突入して下さい」
「あらあら。
私は行くわよぉ~!」
白百合騎士団を助けたがっているリャター夫人。
「まあ・・ウチは誘拐にゃあ一言あるからなア」
DVを受ける女性たちを救ってきた事を、皮肉気に言うディッポ団長。
「各村々を警備巡回していたら、こういう技術が必要な時もある」
各地を移動し、各地の魔物や盗賊を退治していたイーストさん達。
「さっと魔物の巣に入り、さっと卵だけ採ってきたりもするからな」
魔物の生息地を住処にしていた【人狼】達も、名乗りをあげる。
「人質救出みたいな技術は無いがの。
一人二人を、ちゃっと行ってちゃっと担ぐぐらいは出来よう」
「僕もー!」
単純な足の早さなら、この集団No.1・2の颯太と源太ちゃん。
参加しないのはペリオラ傭兵団と【人土】と【人花】。
ペリオラ傭兵団は『対、街破級』。
どうしたって魔物殲滅技術特化になる。
【人土】は魔力吸収、日本技術以外はペリオラ傭兵団に習った。
こういった技術は無い。
【人花】も植物で出来ない事は得意では無い。
「( OK )」
突入組が、傭兵団詰所すべての扉や窓に付く。
「では・・カウントダウンします。
5・・4・・3・・2・・1・・ゼ、ロ!!」
一斉に駆け抜ける皆。
一瞬、俺はゼロの宣言と共に・・何やら違和感が有ったけど───作戦を止める訳にはいかない。
周囲の防壁魔法を広げ固める。




